第26話 コントロールド バイ……
「ん、思うところは色々あるんだけれどね、やるしかないでしょ」
委員長は俺にそう言って、そして綾瀬に尋ねる。
「美久、私か佐貫があの場所にたどり着けば、綾瀬も私達の存在を媒介に移動できるよね」
綾瀬は頷く。
「大丈夫。でも私1人だと式神1人にも対抗困難」
「なら綾瀬は出来るだけ下がっていて。そして佐貫、準備はいい」
実はあまり良くはないがまあしょうが無いだろう。
サムズアップで返してやる。
「それじゃ、行くよ!」
俺達は同時に飛び出した。
そして式神の群れも動き始める。
「離れないでお互いに相手をカバー、いいね」
「了解」
式神の動きは遅い。
委員長相手に比べればかなり楽だ。
◇◇◇
式神は決して強くなかった。
でも人数が多すぎる。
既に俺だけで5体は倒したのに一向に前に進んでいない。
なおかつ倒した分以上に後ろから補充されてくるのが見える。
これじゃ埒が明かない。
「委員長、火か何かの術式で一気に倒せないか」
「無理。多分この空間、対策されている」
「その通りなの」
いやな答合わせが来た。
「私の知っている限りの学園内の戦力を考えて、余裕を持って対抗できるように色々と構築したの。ごめんね、だから諦めて」
つまり既知の術や力では対抗不能。
そして松戸の言っている事は正しい気がしてきた。
少なくとも松戸は本気でそう構築しているのだろう。
それを破るには……
幸い式神は積極的な攻撃はしてこない。
あくまで俺達を進めない事にのみ注力している感じだ。
これは松戸の戦いたくないという気持ちだろう。
でも、それでも、負ける訳にはいかない。
ならば……待てよ。
「委員長、委員長の術を俺にかける事は可能か」
委員長は式神を捌きつつも答えてくれる。
「佐貫にだったらかけられるよ。でも何を」
「今の俺の実力だと委員長に勝てないけれど、俺自身の身体にはそれなりの潜在力があると思うんだ。だから一か八かだけれど頼む。委員長の意志で俺を使ってくれ」
ちょっと間が空く。
きっと式神を捌きながらの会話だからだけれども。
「本気?それをやると、私の意志で佐貫の記憶も何もかも全部見ちゃう事が出来るよ。それでもいいの」
そう言われると微妙に迷う。
迷いついでに左から来た式神に抑えられそうになり、慌てて左腕で捌きつつ後退して逃げる。
うん、もうあまり余裕がない。
それに……
今まで訓練したりお茶飲んで話したりして委員長の事はある程度わかっている。
うるさいしお節介だし暴力系だけれど、信頼はしていい奴だ。
「かまわない。頼む」
「わかった」
あまり余裕は無さそうな委員長の声が聞こえた寸後。
不意に世界が遅くなった。
式神の動きも今まで以上に遅くなる。
そして委員長の動きまで。
俺の視線が式神の群れに僅かな隙間を見つける。
身体をねじ込み両肘で両側の式神を突いて隙間を空け、一気に通り抜ける。
次の式神が俺を認め対処に動く前にもう俺はその横を通り抜けている。
この時点でやっと俺は何が起きているかに気づいた。
世界が遅くなったんじゃない。
委員長が普段の俺以上の速度で俺の身体を操作しているのだ。
10人以上の式神をそうやって通り抜ける。
更に加速して次の集団の脇の壁を走り抜ける。
そこまで行けばもう障害は少ない。
追加の式神を召ぼうと腕を振り上げかけた松戸はもう目前。
次の瞬間には彼女の背後までたどり着き、軽く手刀を入れる。
松戸が倒れるのをとっさに手を出して支える。
視界の端で式神が姿を消していくのが見えた……
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