第22話 世界の終わりへ会いに行こう!

「ん、ここ数日いたような様子は無いね」

 さらに委員長はそんな事まで言う。

「んー、実家に帰ったって事は無いと思うんだけどな。だったら学校に届け出をしているだろうし、それに病欠届も出ていないようだし」


「そんな事わかるのか」

 そんなの能力を使ったってわかる事じゃないだろう。

「その手の許可がある休みは寮当番が寮務室でメモっているんだ。昼にちらっと見た限り、松戸さんの情報は無かったな」


「行ってみる」

「待って」

 委員長が綾瀬を引き留める。


「ん、ちょっと今、猛烈に嫌な予感がするの。ここは3人で行った方がいい。

綾瀬、悪いけど一緒に移動お願いできる。無理なら急いで応援呼んでくるけれど出来れば急ぎたい」


「大丈夫。常人なら厳しいけれど秀美や佐貫君なら」

「なら急いでお願い。何か急がなければならない気がしてならないの。気のせいならいいんだけどね」

 綾瀬が頷く。

 その瞬間、あたりの景色が揺れた。


 ◇◇◇


 浮遊感覚と光の渦のシャッフルを受けた後、景色が揺らぎつつも固定されていく。

 白い天井白い壁白い床の部屋だ。


 足が硬い床につく。

 だが何故かうまく着地できず体が跳ね上がった。

 見ると委員長もバランスを崩している。


「ん、ここは」

「あの場所の一歩手前。ここから外へ出ると松戸さんと会った場所」

 綾瀬は普通に立っている。

 バランスを崩してもいない。

 その背後に小さな苗木のようなものが見えた。


「綾瀬、こっちの体勢を気にしないで次へ飛んで。何とか立て直す」

 委員長の口調がいつもと違う。

 急いでいる、もしくは焦っている?

 俺の斜めの視界で綾瀬が頷いた。


 再び景色が変わる。

 赤い岩中心の砂漠だ。

 他の色は空の黒しかない。


 俺はなんとか両手両足で勢いを殺して着地に成功する。

 そのまま前を見ると巨大な赤い恒星が赤々とこちらを照らしていた。

 ただ感じる熱量はそこまで厳しくもない。

 あと空気は大分薄いし、重力もかなり小さい感じだ。


「久しぶり。今度は3人で来たのね」

 委員長でも綾瀬でもない声がした。

 俺は声の方に視線を向ける。

 小さないわゆるドローンと呼ばれる小型の機体が宙に浮いていた。


「ここは危険。あなたも滅びてしまう。そう言った筈よ」

 声、いや正確には声じゃないな。

 でも取り敢えず声のようなものはその機械が発信源らしい。


「松戸さん、この前はありがとう。おかげで無事戻れた」

 という事はあのドローンが松戸だって事か。


『松戸さんはあのドローンに意識を飛ばしているの。ここは普通の人間が耐えられる環境じゃないから』

 委員長の声だけれど声でない何かで説明が入った。

 どうも俺あての説明らしい。

『ここは美久に任せよう。私達はいざという時まで手を出さない、それでいいね』

 俺は軽く頷く。

 そのせいでちょっとバランスを崩しそうになったが、何とか立て直した。

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