第14話 兄妹喧嘩と俺の特訓(血反吐系)決定
「どうして」
「怖いからだよ」
柿岡先輩はさらっと言う。
「慧眼通は強力な能力だからね。慧眼通で未来を見ると、見たとおりの内容で未来がほぼ確定してしまう。見えたのが好ましい未来だったらいい。でもそうでなければまずいだろう。だから慧眼通は使わない」
「弱気だね」
「僕は運命にはいつも謙虚だよ。前に失敗したからね」
あ、委員長が勢いよく立ち上がった。
そしてその勢いで柿岡先輩に右ストレートを放った。
柿岡先輩は委員長の拳を軽く右手をスイングさせて受け止める。
委員長は拳を柿岡先輩に預けたまま口を開く。
「ん、何か今のお兄、変。肝心な事を言っていない」
俺から見ると委員長も十分変だ。
というか何かがおかしい気がする。
委員長のリアクションが妙に過敏過ぎる気がするのだ。
確かに口より先に手が出ると言っていたけれど。
「肝心な事って何かな」
「暴走車を止める方法」
柿岡先輩は肩をすくめる。
妙に動作がわざとらしいのは俺の気のせいか。
「一介の人間に暴走する車を止めろとは僕には言えないな。大怪我をするのが落ちだ。運が悪ければ死ぬかもしれない」
「1人では無理でも何人か、それも人間以上の何人かで戦えば」
「今度は無謀な挑戦はして欲しくないな」
あ、何となくわかる。
委員長が沸点を突破した。
やはり今の会話には少なくとも俺がわからない何かがあるらしい。
委員長が拳を引く。
ただしまだ右手は握ったままだ。
「いいわ。なら私はここで因果とか運命とかにもう一度宣戦布告してあげる」
「前よりは勝率は少しは上かもな。何せまだ決定していない未来だから。
それでどうする気かな」
柿岡先輩の台詞はあくまで平然とした感じだ。
逆にそれが委員長との対比で怖い感じに聞こえる。
「ん、申し訳ないけど佐貫君と綾瀬さんに全面協力してもらう。特に佐貫君には悪いけど血反吐位生温いと思える程度までガンガンに鍛えてもらう。残念ながら今は私の方が強いから抵抗させない」
「それはちょっと佐貫君には厳しくないか」
俺もまったくの同意見だ。
勝手に決めるな!
でも委員長を見るとそんな事を言える雰囲気では無い。
間違いなく委員長、本気だ。
「これは私が私のために私の意思で決めた私の決断。佐貫君には私の意思で協力を無理強いする。たかが3か月程度特訓したくらいで死ぬ程佐貫君は弱くないし追い抜かされる程私も弱くない」
柿岡先輩は初めて少し表情を変えた。
ほんの少しだがこれは驚きかな。
「事象発生時期の一部、読んだな」
「ん、これでも
あ、今の台詞に神立先輩が微妙に複雑な表情を浮かべたのが何となく見えた。
それにしても、おーい、俺の意思は無視ですか。
そう言いたいけれどとりあえず俺は黙っている。
多分何か事情があるんだろう。
俺が知らない事情が。
委員長は自分が座っていた椅子をテーブル側に戻す。
「じゃあ今日は帰る。神立先輩、御馳走様でした」
「それはいいんだけど、いいの、これで」
神立先輩はちょっと心配気な感じだ。
「ん、この状態のお兄は折れない。私も折れる気はない」
柿岡先輩はというと、微妙に苦笑して見ている。
俺と目が合うと、先輩は軽く頭を下げた。
こんな妹分だけどよろしくな。
そう言っているような気がするのは多分俺の気のせいではないだろう。
きっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます