第13話 警報出まくり運命予報

「さて、佐貫君の場合だが……」

 柿岡先輩はそう言って言い淀む。


「彼の場合は慧眼通は使わないで話そう」

「ん、何でお兄?」

「後で説明するよ」


 あ、何かいやな予感。

 確か最初も『問題の少ない綾瀬』と言ったんだよな。

 という事は俺の場合は色々問題があるという事か。


「さて、佐貫君の能力系統そのものは簡単、吸血鬼と龍神の混合型だ。ただこの組み合わせ、相当に相性が悪い。位相的に逆だからね。

 だからなかなか特殊能力を発揮できない。相当な訓練か何かのきっかけが必要だね。僕の慧眼通でもこれ以上の強制解放は無理だな。その代わりもし完全に解放できればそれこそその能力は万能に近い筈だな」


 なるほど、単に紙に書いてある能力を試してみる位では使用できないという事か。


「ただ、肉体的には強靱だね。今のままでも常人の2倍以上の筋力がある、戦車砲が直撃しても1時間もあれば完全蘇生出来るだろう。ついでに寿命も400年は余裕」

 つまり22口径の拳銃など屁でも無い、って事か。

 蘇生能力以外はほぼ試したしそんな感じかな。

 本当に死んだらまずいし痛いので蘇生能力だけは確認していないけれど。


 柿岡先輩は何故か軽くふっと息をついて、軽く頷く。

 何だろう。

 慧眼通の発動のような気配は無いけれど。


「さて、ここからが本題。

 もしも運命に天気予報があるとすれば、佐貫君の場合は警報だらけの状態なんだ」


 え、何だって。

 それってどういう意味だ?

 不幸がひたすら押し寄せるという事か?


「例えるなら、そうだなあ……

 佐貫君は交差点で他の人とともに信号が変わるのを待っている。そこへ佐貫君を狙った暴走車が何台か接近してきている。そんな状態だ」


 おいおいそれって危ないじゃないか。


「まあ佐貫君自身はあまり心配しなくてもいいんだ。君はその気になればその身体能力で車を避ける事が出来る。車が来る前に交差点から逃げたりする事も出来る」

 でも、それって……


「逃げた場合他に交差点に居た信号待ちの人は」

「それは佐貫君には関係ない。事故が起きたとしても暴走車の運転手の責任。違うかな」

 委員長の質問に先輩はあっさりとそう答える。

 それは確かにそうなのだろう。

 けれども……


「今は交差点に佐貫君が到着して、暴走車の運転手達がそれを見つけた状態だな。だから佐貫君が判断するのはそれ以降の行動になる。接近してから逃げ出すか、今すぐ逃げ出すか」


「交差点の他の人は」

「それは佐貫君の責任じゃない」

 委員長の質問はさっきと同様に返される。

 更に委員長から手刀が放たれたようだが、柿岡先輩はごく自然にそれを捌いた。


「そういう事だ。まあここにいる5人位の能力があれば、暴走車を避けたり逃げたりするのは可能だろう。でも交差点にいる他の人間全部をそこまで鍛えるのは不可能だ。それに事故はあくまで暴走車の運転手の責任だしね」


「その事故を防ぐ事は出来ないの。例えばお兄の慧眼通で何とかするとか」

 今度は委員長、台詞とともに左足で柿岡先輩を攻撃した模様。


「慧眼通は使わないよ。ついでに言うと僕自身も関わる気はない」

 柿岡先輩は平然とそう言い放つ。

 委員長が体勢を崩したところを見ると、今の委員長の攻撃も失敗したのだろう。

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