第12話 必殺・委員長チョップ!

「そう言えばここは特殊な学校ですけれど、お二人はどんな存在なんですか」

 よし、聞いたぞ。


 でも聞いて良かったかな。

 しかし特に場に緊張感等は生じていない。

 先輩2人が少しだけ驚いたような顔をしただけだ。


「何だ、何も話していないのか、秀美は」

「今日転入してそのまま連れてきたから。紹介冊子を見れば書いてある事だし」


 どれどれ。

 僕は鞄から冊子を取り出す。

「ここって『TRICKSTERS』でいいんですよね」

「そうだよ」

 との事なので部活紹介の『TRICKSTERS』のページを開く。

 アルファベットなので登場順が早い。

 3ページ目だ。


『TRICKSTERS、主に狐と狸、狢等の妖力を使える動物系妖怪の研究会です。妖力・魔術及び格闘術の訓練を毎週1回ずつ行っています……』


 うん。

 何か凄く納得がいった。

 見た目でも納得がいった。

 つまり神立先輩は狐で、柿岡先輩と委員長は狸だ。

 柿岡先輩はもう見た目からして狸だし、委員長も確かに狸顔だしな。

 そう思った瞬間だ。


 痛えっ!

 左首筋に鈍痛を感じた。


「ん、何か失礼な事考えたでしょ、今」

 委員長の右手がチョップの形になっている。

 あれが今、俺を襲った訳か。

 委員長、カンが良すぎるぞ。


「秀美、少しは言葉より手が先に出るのを直したらどうだ」

「大丈夫、佐貫君は殺しても死なない体質だし」


 おいおい、確信犯かよ。

 何も紹介していないのに既にその辺は承知済みか。

 流石妖怪学校の委員長。

 見た目以上の強者だ。

 神立先輩がそれを見て笑っている。


「そういう訳で、私は狐の妖怪、柿岡君と秀美ちゃんは狸の妖怪って訳。この学校でも結構狐や狸系は多いわよ。あわせて大体2割かな」


「学校には他に天使系とか堕天使系、吸血鬼とか狼男、虎男なんてのもいるな。妖精や精霊系統もいるし、人間の魔術師や超能力者もいる。もちろんその混血もいるし、まあ色々だな」


「ただ遺伝子的には皆人類ではあるのよね。調べた限りでは遺伝子的には人類と違いは無いらしいわよ、交配も可能だし」


 交配可能って言葉に思わず俺はどきりとする。

 特に美人の先輩に言われると微妙に生々しすぎる。

 まあ実年齢は多分俺の方が上なんだけれどさ。

 なお他の人は特に反応していない模様だ。

 なので俺も一応反応した様子は見せない。


「うーん、5人で割るとチーズケーキも少ないな。朱里、おかわりない?」

「お兄、食べ過ぎ!」

 よく見ると委員長、今の台詞とほぼ同時に例の委員長チョップを柿岡先輩にも繰り出している。

 そして柿岡先輩は委員長のチョップを肘で何気なく捌いているのだ。

 なるほど、あれが見本という訳だな。

 今後の参考にしよう。


「残念だけれど今日のデザートはこれまでね」

「そうか……」


 その台詞の後にも攻防戦が繰り広げられているのを俺は確認。

 今回も柿岡先輩が委員長のチョップを捌くのに成功している。

 兄貴分だけあって委員長より一枚上かそれ以上らしい。

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