第8話 俺、強制連行される

 そういう訳で午前3時5分。

 授業が終わった俺と綾瀬は委員長に連行され廊下を歩いていた。


 ここは掃除当番は誰が専業がいるらしい。

 なので6限の授業終了がそのまま放課後。

 個人的にはさっさと帰りたい。

 帰って惰眠を貪りたい。


 実は逃げようとしたのだ。

 3人で廊下に出た瞬間、委員長の隙をついて一気に廊下ダッシュ!

 しかし瞬時に追いつかれて腕を掴まれた。

 どうも委員長、瞬発力も走力も腕力も男で吸血鬼ハイブリッドな俺より上だ。

 それも圧倒的に。


「いや掴まないでくれ痛いから」

 無茶苦茶腕が締め付けられて痛い。

「ん、もう逃げない?」

 委員長はあくまで笑顔。

 そんなに力を込めているように見えない。


「逃げないから」

「ん、わかった」

 それでやっと手を離してもらえる。

 俺の右腕に思いっきり赤く手形がついていた。

 うん、委員長には逆らわないようにしよう。

 恐れている訳では無い。

 俺のような合理主義者は無駄な事をしないのだ。


「それにしてもこの学校、随分広いんだな。1学年1クラスしかないのに」

「ん、廃校になった昔の中学校を流用しているからね」

「それにしてはきちんとしているな」

「ん、本来の時空間と少しだけ位相が違うからね。本来の世界のこの校舎はまさに廃校、って感じだよ」

 そんな感じに委員長から説明を受けながら3人で歩いて行く。

 なお話しているのは俺と委員長で綾瀬は無言だ。

 でも何故かちゃんとついてくる。


 この辺の教室は部活や研究会が使っているらしい。

 各教室には色々な看板が貼ってある。

 一瞬『お散歩クラブ・ご自由にお入り下さい』という表示を見たような気がした。

 勿論無視し、見なかった事にする。

 まだあの世界には行きたくない。


 そして俺達は一番奥の教室の後ろの扉の前まで来る。

 一つ手前の入口には『TRICKSTERS』と書かれた看板があったがこっちには何も無い。

 でも構造上は同じ教室の筈だ。


「ここは?」

「ん、お兄達の部室。入るよ」

 そう言って委員長はノックもせず扉を横に開く。

 見えた内部は……えっ?


 外だった。

 赤い花が所々で咲き誇る草原。

 満月はもうすぐ地平線に落ちる場所でそれでもあたりをほの明るく照らしている。

 よく見ると右手少し先に小高い森があり小さな集落がある。

 赤い鳥居も見えている。


 俺は反対側の廊下の窓を見る。

 うん、ここは学校の3階だ。

 なら、何だ?


「ほら、さっさと入るよ」

 委員長の豪腕に掴まれた。

 委員長の腕そのものは俺より白くてほっそりしている。

 でも腕力はゴリラ。

 そのまま引きずられるように中?外?へと引きずり込まれる。

 綾瀬もおとなしく後をついてきた。

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