第7話 委員長は押しが強い
「俺はいいよ。どうせ大した能力は無いし」
取り敢えず肉体能力が若干強化されたのと、あとは死なない位だ。
普通に人間に混じっても目立たないし、襲撃を受けてもまず死なないし。
親父のよこした紙に書かれていた能力はどれも使えないのを確認済みだ。
何せ入学まで1月近くあったから大抵の事は試している。
そしてほぼ全てが失敗している。
使えるのは筋力とか視力とか、常時発動している能力だけだ。
「ん、そうかな。今の時点で使えないだけで、魔法の才能は感じるんだけれどな」
委員長はそう言って俺の方を見る。
「それってカンじゃなくてわかるのか?」
委員長は頷く。
「ある程度はね。お兄に色々教わっているし」
「お兄って?」
「ん、私の兄貴分だよ。いずれわかると思う、ここではそこそこ有名人だから」
なるほどな。
委員長も何かしらの人外で、そして兄貴分に色々教えて貰っていると。
ならこのチャンスに色々聞いてみよう。
「じゃあ俺はどう見える。魔法系か肉体系か」
彼女は真丸メガネの中のまんまる目玉でじーっと俺の方を見る。
そして首を傾げた。
「うーん、よくわからない。多分典型タイプじゃなくて混ざってるんだと思う。先輩の中ではお散歩クラブの高浜先輩が一番近い気がするれどね」
混ざっているとは委員長、鋭いな。
確かにハイブリッドだから混じっている。
「それにしてもよく知ってるな、先輩の事まで」
その事実をごまかすのも兼ねて委員長に思った事を言う。
「小学校からいるからね。持ち上がりの先輩は大体知っているよ。でも似ているのは能力の雰囲気って事で性格とかは別ね。高浜先輩って正直訳がわからない人だし」
どれどれ。
俺は小冊子の目次を見てお散歩クラブ紹介のページを開く。
『お散歩クラブ、部員募集中。新人歓迎ハイキングは6月第1日曜日、場所はルルイエ海底宮殿の予定……』
ん!
何か見てはいけない単語を見たような……
「ね、訳わからないでしょ」
俺は頷く。
部活や研究会は色々あるがここは取り敢えずパスだ。
そんなSAN値爆発するようなところ頼まれても行きたくない。
「そう言えば綾瀬はどうなんだ?」
「私はいい」
即座に拒否された。
でも委員長はめげない。
「ん、綾瀬さんのようなタイプこそ本当は訓練が必要なんだけれどな。精霊系の能力って割と簡単に阻害できるから。その時身を守る方法を他に身につけておいた方がいいと思うけどな」
委員長はまた少し考える。
いやきっと考えているだけではない。
何か別種の気配がちらついている。
もしかしたらこれが魔法とか超能力か?
今の俺には使えないしわからないけれど。
「ん、よし」
委員長はそう言って小さく頷く。
何かひらめいたか決めたかのようだ。
「綾瀬さんも佐貫君も放課後、特に用事は無いよね」
うーん、まっすぐ帰って惰眠を貪りたいんだけれどな。
「無いよね!」
委員長、笑顔で俺に強要。
こいつ、思った以上におせっかいで押しが強いタイプと見た。
見かけも性格もまさに委員長だな。
元ニートの俺では勝てない。
なので俺は仕方なく頷いた。
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