第6話 つまり周りは妖怪変化

「どの系統、って系統って何だ?」

 まず委員長の言葉で意味不明な部分を聞いてみる。


「ん、能力の系統だよ。部活に入るにも相性とかあるでしょ。例えば筋力強化に特化しているのに魔法専門の部活や研究会に入ったりしたら悲惨だしね」


 筋力強化?魔法専門?

 何だそりゃと思いつつ、俺は配られた小冊子を開く。

 1ページ目にはずらりと部活や研究会の名称が並んでいる。

 そしてその名前を見ると……


「何だこりゃ」

 攻撃魔法とか肉体言語だとか召喚術だとか、ファンタジー系に侵されたような単語が並んでいる。

 部活と言うからにはてっきりサッカーとか野球とかをイメージしたのだが。


「あれ、ひょっとして何も知らないの?」

 委員長だけでなく綾瀬までもが不思議そうな顔をして俺を見る。


「知らないって何が」

「この学校のこと。ひょっとして普通の人間……じゃないよね。それ位は私でも見ればわかるけれど」

「普通の人間、って一体?」


 何か良くわからない。

 話がかみ合わない。

 委員長はちょっと考える素振りをして、それから口をひらく。


「佐貫君はこの学校、どんな学校だと思っている」

「どんな学校って……全寮制で、夜間全日制で……」

 言いながら考える。

「あとパンフには、対象生徒の特性うんぬんと書いてあったな」


 委員長は頷いた。

「どうやら本当にこの学校がどんな学校か知らなかったみたいね」

 そして綾瀬も小さく頷く。

 綾瀬はどうも知っているらしい。


「じゃあ何なんだ、この学校は」

「簡単に言うね」


 そこで委員長は一度言葉を止める。

「驚かないでね。まあ今驚いても手遅れだけれど」

「何だよもったいぶって」


「じゃあ言うよ」

 そう言って委員長は、ゆっくりとだがはっきりとした口調で続ける。

「ここは妖怪や亜人種のための学校。宗教や迷信やらで迫害されたこれらの人々を保護して育成するための学校よ」


 え、妖怪?亜人種?

 何それラノベ脳?美味しいの?

 いや待て本当なら廻りは全部妖怪なり人外なり、魑魅魍魎の類いだって事。


 何か俺が聞き間違えたのだろうか。

 そこまで考えてふとある事実に気づく。

 俺もハイブリッドな吸血鬼だった。


 なるほど、こういう学校なら俺の能力も目立たないだろう。

 それに二度目の学生生活でも問題は無いだろう。

 うんうん。理解した。


「何となく納得したみたいだから続けるね。要はここは妖怪等の学校で、迫害等から身を守るためにも何らかの護身術は必要な訳。それを学ぶ手助けをするのが課外活動。つまりこれよ」

 委員長は俺が広げている冊子を指で指す。

「魔法が使える人は魔法系を、魔法が使えないか肉体強化系の人は物理攻撃系の課外活動を選ぶのが普通ね。まあ特殊系もあるけど。

 という訳で能力の系統を聞いてみたんだけれどね。佐貫君や綾瀬さんはどんな系統かな」

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