第2話 アルシュ・メギドス・メルカバー

 こんにちは、僕、アルシュ・メギドス・メルカバー 三歳。

 ママはファリティア・メルカバー。

 パパのお妾さんです!


 クソだりーーーーーーーー


 おう、何か異世界に転生した中山 ミスルこと、アルシュだ。

 もう、別の人生だからアルシュって事で。


 でだ…この世界は、ぶっちゃけ、地球じゃあない。

 所謂、異世界ってヤツだ。

 そこにオレは、産まれ直した。


 父親は、オレの母親がいるヴィクタリア帝国の皇帝様で、母親以外に女がいるらしい。

 まあ、そんな、女大好き、皇帝様は、何時も女の家を回っているらしく、週に一度、オレと母親がいるメルカバー家に泊まりに来る。

 

 まあ…ペースを考えて7人くらいかな…?


 とにかく、皇帝様の息子、しかも長男だぜ。たった一人の男の子らしく、可愛がってはくれる。

 しかも、皇帝の父親と同じ黒髪で、顔立ちもソックリらしい。

 余計に、父親としては可愛いようだ。

 だから…何でも買ってくれる。


 まずは、この世界がなんかのか、現状を知る為に、知識を欲して本をねだった。

 最初は紙芝居から、図鑑と、子供が欲しがる定番だ。

 そして、それを見てびっくりする。

 このヴィクタリア帝国は、九億の人口を誇る巨大帝国らしい。

 文字は、英語系のスペルで、しゃっべいる言葉が日本語の文法なので、楽勝だった。


 この世界、ワールストリアには…魔法というトンでも技術があり、その魔法によって様々に変化する特殊鉱物、ロゼッタストーン『賢者の石』により、魔法的な工業も発達している。

 普通に自動車や、映像を見せる画面なんかもある。


 さぞ、それによって誕生する兵器も凄いと思ったら…魔法を使った特別な鎧、ゴーレムを使っての中世時代の騎士のような兵器しかない。

 なんでもゴーレムの機能が凄すぎる故に、それ以上の兵器は無いらしい。


 ヴィクタリア帝国以外にも、多くの帝国や王国がある。

 大小合わせて30くらいらしい。


 面積的には地球と同じ陸地だが…その大陸形状は…パンゲア時代の一つの超大陸を形成している。


 主に国境の堺として、山脈や大河とかが堺として機能している。


 法的には、普通に犯罪法とかあるが、そういう人道的なことは、この世界で信仰されているヨシュア教、教会が基本的には、担っているらしい。


 んん…なんか、ロープレのゲームみたいだな。


 三歳のオレには、まだ、本しかくれいないが、大きくなって8歳を越えると、巨大な魔法的なコンピュータネットワークにアクセス出来る、プレートを貰えるらしい。

 

 因みに、黙って母親のプレートを使おうとしたが、ノーアクセスと表示されてしまった。


 どうやら、魔法的な力で使えないようにロックがしてあるらしい。



 アルシュは、本を読んでいると、後ろから父親のアルファスが「アルシュ…」と、呼び掛ける。


「なぁに?」


 子供らしい声で答えるアルシュ。


「本ばかり読んでいると疲れちゃうから、これでパパと遊ぼう」


 笑顔の父親のアルファス、黒髪で立派な髭がある皇帝らしい父親の、威厳の無い笑顔。

 

 これ…大丈夫か?


 息子なりに、心配になるアルシュ。外見は、子供、中身は37年独身の男のアドバンテージが詰まっているアルシュには、父親の溺愛っぷりが不安に思える。

 でもここは…


「うん。遊びたい」


 アルシュは無邪気に答えて、父親と一緒に組み立てのレゴのような玩具で遊ぶ。


 それを母親のファリティアが嬉しそうに見つめていた。


 ファリティアは何時もアルシュに不安を感じてた。

 アルシュは、知識を欲してもの凄く本を読み込む。偶に答えるに困る質問をする。普通なら、子供は「なんで? なんで?」とせがむが、アルシュは「分かった」と終わり、自分で答えを探そうとする。まるで、大人びた我が子に一抹の不安を覚えている。


「アナタ…」


 ファリティアが、息子と遊んでいる父親の隣に来て三人で一緒に過ごす。


 父親のアルファスは、息子と遊べて嬉しい。

 他の6人の妻達には、娘しか生まれなかった。その殆どが麗しい母親似ばかり、別にそれはそれで良い。だが、やはり、自分と似た息子は格別に可愛い。例え、正妻でも側室の子でなくとも…。


 アルシュは、父親の籍に入れない私生児だ。

 本当は、ファリティアと結ばれる筈だった。だが…帝国内の後継者争いによって、多くの皇帝候補達は殺し合って死んでしまい。残っていた自分が皇帝になった。


 アルファスは自覚していた。自分は置物の皇帝だと、ほぼ全ての帝国内の政治、経済、法律は、6人の正妻や側室達の手によって運営されていた。



 ◇◆◆◆◆◇◆◇


 ヴィクタリア帝国の皇帝城では、正室を中心とした6人の妻達が、様々な人材を使い帝国を運営していた。

 

 正室ヴィクティアが書類を見ながら、秘書女の耳打ちを聞いて


「そう、あの人は…ファリティアの所にいるのね」


 秘書の女が耳打ちしながら


「どのように致しましょう?」


 要するに邪魔なら始末するという事だ。

 

 ヴィクティアは鋭い視線で秘書に


「お前は愚か者か? もう…妾達は一族で殺し合う愚行をしない」


 秘書が食い下がる。


「しかし…それでは、ヴィクティア様のお嬢様が…」


 ヴィクティアは秘書に


「よい、妾の娘には次期皇帝の明かしたるドラゴニックフォース『龍紋』が出ているのですから」


 秘書は「は…」と引き下がった。

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