ぼく最強の皇帝になります!

赤地 鎌

第1話 彼の転生

 皆城山にて、その日は婚活登山という訳の分からない行事に中山 ミスルは巻き込まれていた。


「はあ…なんだこれ?」


 昨今の婚活ブームに乗って訳の分からない婚活に巻き込まれ、参加費は

 男が二万、女はタダだった。


 これでも、男女の出会いを求めて人が集まった。


 まあ、女はタダだから…集まるだろうけど…。


 男が張り切って、いい所を見せようと空回り、女はそれを分かっていておだてて、後でお高い料理を奢って貰う算段の真っ最中だった。


 なんで、こんな場所に37歳のおじさんであるオレが混ざらんといかんのか…。


 おじさんの頃なんて、婚活なんて出来なかったんだよ。

 工業の専門を出たら、不況の真っ只中、仕事を選べる訳でも無く、出た工業専門とは別の食品会社に勤めて、訳の分からない上司のパワハラに、メンタル病んで、辞めて。


 後は…お決まりの死んだような人生、仕事は転々として、気付いたら家の農家しかなくて、まあ…農家は、今まで経験したクソ仕事より、やりがいはある。


 まあ、そんな感じて気付いたら37歳独身、世の中の吹き溜まりの一人になったよ。


 登山すると女は荷物が重くて嫌がる。

 それを持とうと、男共が来て、おれもそんなバカな取り合いに参加するしかなくて。


「中山さんっていい人ですよね」


 きたーーーー お決まりの、無難な返事。


 要するにアナタは、対象外ですから!


 ハッキリと言えよクソ女って思いつつ


「あ、うん。ありがとう。○○ちゃん、優しいね」

って建前笑顔フェイスだけが、上手くなったぜ。


 男女別れた時、不意にオレは女達に見えない場所で、女の会話を聞く。


「ちょろい連中ばっかり」

「どうする? どこのお店にいく?」

「あたし、ステーキが食べたい」

「じゃあ、スマホで検索してするね」


 もう、男を出汁にしか考えない作戦が消えて。


 ケッと唾を吐いて、森の外れに行く。


「ああ…女なんて…」


 人生一度も彼女無しの37年は…重すぎた。


 性的経験は風俗のみ、風俗で童貞を捨てて。

 風俗しか女を知らない。

 別にそういう商売をしている人が悪いではない。

 寧ろ、お金を払ってプロフェッショナルなお仕事をして、癒やしてくれるので、素晴らしい事だと、個人的には思う。

 女を知らないオレでも、優しく相手をしてくれる。


 まあ、そんな事はいいとして、もう男が37にでもなれば、人生を捨てた方が上手く行く。

 一般的収入とか、結婚とか、正社員とか、真っ当な生活とか、そんなの全て失われたのだ。


 そう、悲嘆しながら歩いていると、ミスルは僅かな斜面を滑って落ちる。


「痛ぇ…なんだよ…」


 ついた底には、石段の祭壇があった。


「ああ?」とオレは見回すと、草のないそこが最近、露出した場所だと分かる。


 その真ん中に、水晶を核とした真っ白な円形の場があった。


「なんだこれ?」

 オレは近づき、中心の水晶を触ると…その円場が脈動する光を広げた。


 ゴオオオオオオオ


 ミスルの上の空から咆吼が響き、空から黄金の光が下りる。

 それは龍のような形だった。

 ミスルは腕を組んで身を守るも、直撃、ミスルは爆発して消えた。

 

 その音に気付いて、人々が来ると…ミスルが消えて人型に血が付いた円場と、ミスルのスマホだけが残された。


 享年 37歳 ミスルは死んだ。




 ミスルが意識を取り戻す。

 

 ココは?とミスルは周囲を見渡す。

 どこだ?と頭を動かすと何かのバスケットの中だ。

 おーーいと言ったつもりが、赤ん坊のような泣き声になる。


「あらあら…」


 ミスルを抱える銀髪の美人の女。

 ミスルは困惑する。そして、その女と一緒に映った鏡には…赤ん坊の姿があった。


 なにー―――――――――


 ミスルは、新たに産まれ直していた。

 誕生した場所は、異世界ヴィクタリア帝国。

 母親は銀髪のヴィクタリア皇帝の妾…ファリティア・メルカバー


 魔法の武器を作って商売をするメルカバーの一族の一人だった。


 ミスルは妾腹のアルシュ・メギドス・メルカバーとして新生し

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