第十九話:『四天王最弱(男)のアホ毛』

「ふう、後はニスが乾けば完成だ」

『随分と立派な目安箱が出来ましたね』

「はい、完成したら自動的にこの新しい目安箱にお題が届くようになるはずです」

『冷静に考えてその仕組みの謎がわかりませんね』

「でも速く完成させないとゴ○ィバの箱にも限界がありますからね」

『既に百以上のお題が詰め込まれているせいで悲鳴を上げていますからね』

「少し話は変わるんですが、女神様は休日などはどう過ごしているんですか」

『セクハラですね』

「現代風なやりとり、別に答えられないような内容なら聞きませんけど」

『基本人間の娯楽をだらだらと満喫していますよ、特に完結した作品を見たり読んだりが主流です』

「完結するまでは手を出さないんですか」

『楽しみのまま打ち切られたりすると悲しいですからね』

「俺はそう言う時、脳内保管で俺の好みの展開で完結させていますね」

『貴方に関わった作品が可哀想ですね』

「酷い言われよう」

『実際貴方が干渉した世界の大半がかき乱されていますからね』

「たまには良い話にしているつもりなんですがね」

『たまにじゃなくて常に良い話にするように心がけてはどうでしょうか』

「それはお題次第ですかね」

『それは言えてますが、そもそもお題に頼ると言うことが可笑しい気もします』

「後はその場の気分ですかね」

『気分で勇者や魔王を亡き者にする無生物系主人公なんてウケませんよ』

「生物無生物の違いなんて些細なことですよ」

『大分違うと思いますけどね、さてそろそろ頃合ですね』

「ちなみにその頃合ってどうやって見極めているんですか」

『私が貴方を追放したくなった時でしょうか』

「えらく独裁的だった」

『冗談です、貴方程度の感覚では分からないでしょうが前世界の因果律が弱まった兆候を感じ取っているのです』

「ああ、この変なゲージですか」

『何故見える』

「伊達にシステム音になっていませんよ」

※第六話より

『そう言うものですか、そう言うことにしておきましょうか』

「それでは目安箱をっと、ガガガガガサゴソっと忍冬さんより『四天王最弱(男)のアホ毛』」

『随分とテンプレですね、まあそのアホ毛なら該当件数は少なさそうですが』

「何で女じゃないんだろうか、ダメ可愛い女の子とか好きなのに」

『貴方にとって男の方が良かったと言える例があるのでしょうか』

「うーん、ちょっと本格的に考えて見ます」

『本格的に考えないと湧いてこない程度にはないと』

「ダメだ、大抵のことは女の子の方が良いに決まっている」

『貴方にとってはそうなのでしょうね』

「あ、お父さんが女の子だと少し嫌かな」

『少しで済むんですね、ではオプションを決めましょうか』

「アホ毛の本数は1、硬度はダイアモンドくらいかな」

『そんな硬度を持たせたら貴方が暴れるのが眼に見えるので却下』

「アイスラッガーとか好きなのに」

※ウルト○セブンより

『アホ毛を投げるネタなんて古いですよ』

「アホ毛ネタは昨今色々あるからなぁ、意思を持ったアホ毛も珍しくないですし」

『確かにアホ毛に異世界転生するだけだと該当が多々見られますね』

「奇をてらったアホ毛スタイル、中々に難題ですね」

『他にも難題がある筈なのですがね』



『ふむ、これがダメ可愛い系女子。私の様な完璧な女神では無理な属性ですね』

「ただいま戻りました」

『おかえりなさいこのアホ』

「毛が抜けている、今回もダメでしたよ」

『でしょうね』

「おや、このテレビに映っている子女神様に似ていますね」

『そんなことはないと思いますが、それよりも報告をお願いします』

「ええとまず俺が転生したのは魔王の配下である暗黒四天王、その最弱の男、『右利きのラライライム』のアホ毛として転生しました」

『もう少しまともな二つ名は無かったのですか』

「最弱過ぎたので、特徴とかも特に無かったんですよね」

『どれ程最弱なのでしょうか』

「世界最弱の魔物ゴブリンに負けます」

『よくそれで魔王の四天王を名乗れましたね』

「そこはコネで」

『コネですか、まあ無い設定ではないですが』

「ちなみに他の四天王はですね、弱い順から言うと『親孝行のミーミルッタ』」

『良い人そうですね』

「次に『吐血するヒガガッショイ』」

『短命そうですね』

「最後に『最強のアホ毛』、俺です」

『四天王最弱のアホ毛が四天王最強とな』

「ジャブとしては弱いですが切り込んでみました」

『斬り付ける行動はジャブではないですからね』

「いやほら、折角なら四天王になりたいじゃないですか」

『気持ちは分かります』

「四天王らしい台詞とかも言いたいですからね」

『定番なのは○○がやられたようだな、奴は四天王の中でも最弱、人間如きにやられるとは魔族のツラ汚しよとかですかね』

「そのネタってギャグマンガなんですよね、まあやりましたけど」

※ギャグマンガ日和より

『やったんですか』

「まずはヒガガッショイが『ラライライムがやられていたようだな』と言います」

『発覚がちょっと遅れていそうですね』

「発見がやられていてから三日後でしたからね」

『ちょっとところではなかった』

「あと吐血しながら言いました」

『病魔にやられていませんかね、その人』

「なおラライライムは勇者を待ち構えている最中にゲリラ豪雨に遭ってやられました」

『ゲリラ豪雨って強そうですけど天候ですからね』

「それで次にミーミルッタが『奴は四天王の中でも最弱、今度お見舞いに行きましょう』」

『やっぱり良い人ですね』

「千羽鶴折って持って行きましたからね」

『どうして魔王の四天王なんかやっているのでしょう』

「最後に俺が『天候如きにやられるとは魔族のツラ汚しよ』」

『ゲリラ豪雨が天候だと理解はしていたようですね』

「まあ俺も一緒にいましたが、ラライライムがやられたことで結構しんなりしてましたよ」

『アホ毛ですからね、濡れたらしんなりするでしょう。むしろ貴方どうやって会話に加わったのですか』

「そこはほら、着脱可能ですから」

『ツッコミを入れたいですが、結構デフォルトですからね』

「ただ長時間離れていると死んでしまいます」

『バッテリータイプですか、稀にありますね』

「ラライライムが」

『本体が死にますか』

「俺が守ってやらないと直ぐに死にますからね」

『最弱設定ですからね、でも四天王最弱であって全世界で最弱でなくても良かったでしょうに』

「いや、実際の力は四天王に相応しい力だったんですが俺に養分を吸い取られていまして」

『アホ毛じゃなくて寄生虫なのでは』

「いえ、純度99%のアホ毛です」

『1%は』

「枝毛です」

『男性って毛先のケアを疎かにしがちですからね』

「元々はコネで普通に四天王をやっていたラライライムに俺が生えて、そこから弱体化したんですよね」

『コネを普通とは言いません、そしていよいよ寄生虫じみていますね。しかしそうなると元々もう一人いたのでは』

「蒸発しました」

『一体何処に』

「いえ、物理的に」

『一体何故に』

「四天王最強の座を奪おうとする者は多く、日々狙われていましたからね」

『その話だと貴方が蒸発させたってことですよね』

「強かったですよ、『鮮度良しのベニシャッケ』」

『その人毎回良いポジションに転生できていますよね、誰かさんのせいで台無しですが』

「そんな四天王の一人が風邪で寝込んでいるうちに魔王城に勇者がやってきます」

『やっぱり風邪でやられたんですね』

「残った四天王で迎え撃ちたかったのですが俺はヘアブロー中で動けませんでした」

『ゲリラ豪雨でしんなりしていましたからね』

「ヒガガッショイは吐血したまま動かなくなっていましたし」

『四天王ごっこしている場合じゃなかったですね、結局ミーミルッタが一人で戦ったのですか』

「いえ、ミーミルッタはヒガガッショイの介抱をしていたのでラライライムに出て貰いました」

『風邪でやられた人になんてことを』

「常識的に考えて吐血して動かなくなった方が危篤ですからね」

『否定はしませんがヘアブロー中の人に常識を言われたくないですね』

「しかしラライライムは四天王最弱、勇者の足止めをしようにも8時間が限度でした」

『十分過ぎる気がしますがね、よくそこまで持ちましたね。どう戦ったのやら』

「直ぐに倒れて勇者に介抱されていました」

『8時間も介抱してくれるとは、勇者も良い人ですね』

「次にヒガガッショイの介抱を中断したミーミルッタが出ます」

『貴方はどうしたんですか』

「ヘアブローの途中でして」

『8時間も経過してるんですがね』

「『親孝行のミーミルッタ』の名は伊達ではありません、勇者は苦戦を強いられます」

『その二つ名で苦戦する要素が見られない』

「ミーミルッタが倒れれば年老いたミーミルッタの両親はとても苦労することになりますからね」

『精神的苦戦でしたか、両者とも良い人ですね』

「進行形で介護していましたからね」

『魔王城に両親がいるんですか』

「決定打は勇者がホームヘルパーの手配をしたことですね」

『凄く真っ当な攻略法』

「ミーミルッタの奮闘は勇者を12時間足止めすることに成功します」

『勇者頑張りましたね』

「続いて介抱されていたヒガガッショイが出ます」

『貴方はどうしたんですか』

「ヘアブローの途中でして」

『累計20時間も経過しているんですがね』

「『吐血するヒガガッショイ』の名は伊達ではありません、勇者は苦戦を強いられます」

『その二つ名で苦戦する要素が見られない』

「部屋に入ると吐血して倒れていたヒガガッショイの介抱は大変でしたからね」

『介抱を中断されてから12時間も放置されていましたからね』

「心肺蘇生からでしたから中々スリリングでしたね」

『その奥でヘアブローしている四天王最強がいるとは誰も思わないでしょうね』

「決定打は勇者が救急車を手配したことですね」

『凄く真っ当な攻略法』

『ヒガガッシィの奮闘は勇者を18時間足止めすることに成功します』

『勇者付きっきりで頑張りましたね』

「そしてついに勇者と俺が対峙します」

『ようやくヘアブローが終りましたか』

「いえ、まだ乾いていませんでした」

『累計38時間も経過しているんですがね』

「なのでラライライムに再度出てもらいます」

『悪魔ですか』

「健闘できると思ったラライライムでしたが流石は勇者、即座に救急車を手配してラライライムを突破します」

『人の世話続きでしたからね、手馴れて当然でしょう』

「ラライライムの奮闘は勇者を6時間足止めすることに成功します」

『即座に救急車を手配したのに6時間も』

「勇者はついでに仮眠を取りましたので」

『38時間も人の世話をしていれば眠くもなりますか』

「そうしてようやく勇者は俺の元に到着します、俺も丁度ヘアブローが終了します」

『累計44時間ヘアブローに費やしやがりましたね』

「ついに俺と勇者の激闘が始まります」

『アホ毛と勇者の激闘ですか』

「ちなみに勝負が決着したのは4秒後」

『えらい短いですね、それを激闘とは言いません』

「四天王最強の四天王最弱の男のアホ毛ですからね」

『これを人に説明すると二度三度言うことになるでしょうね』

「アホ毛に敗北した勇者は魔王を倒す道を閉ざされます」

『一日以上人のために奮闘した後にアホ毛に秒殺されれば閉ざしたくもなるでしょうね』

「なので勇者は話し合いの席で魔王との和解を結ぶことにしました」

『凄く真っ当な攻略法』

「こうして四天王の役目は果たしつつも世界は平和になってしまいました」

『やや不服そうですね』

「魔王を倒し世界をのっとる計画だったので」

『アホ毛に世界征服されたらクレームまっしぐらですね』

「ちなみに最後の時なのですが」

『勇者を秒殺するアホ毛が倒されるビジョンが見えませんが』

「彼女に自分のアホ毛を指摘されたラライライムが櫛で梳かしてアホ毛を矯正してしまったのです」

『凄く真っ当な攻略法、そして唐突に湧いた彼女』

「ミーミルッタですよ」

『職場恋愛でしたか、幸せになるといいですね』

「四天王最弱の男にアホ毛がなくなった以上俺は存在できません、なので四天王最強の座を魔王が飼っていたウーパールーパーに譲って世界を後にしました」

『譲られたウーパールーパーもビックリでしょうね』

「えっ、俺かよって言っていましたね」

『魔王の飼っているウーパールーパーに異世界転生した異世界転生者でしたか』

「人気ですからねウーパールーパー」

『異世界転生先としては需要は少ないと思いますがね』

「そんなわけでお土産はこちら、俺の愛用していたヘアブローセットです」

『44時間も掛かるような道具は要りませんね』



『試しに使ってみたら意外と高性能、思ったとおりの髪形に出来ますね』

「ついつい弄りたくなりますよね」

『それで44時間も、ナルシストですか貴方は』

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