第十六話:『一人一つの固有武器を居能で具現化する超人現代ファンタジー世界にいる、とある学校の優等生の武器、鐘』

「いやーお正月ですね」

『そうですね、女神空間を見事に正月感満載にしてくれましたね』

「こうやって駅伝を見るだけなのも悪くないですが何かお正月らしい遊びをしましょう」

『二人で出来る遊びですか、何がありますかね』

「凧揚げで」

『室内ですることじゃありませんね』

「ここ室内判定なんですね。では福笑いでも」

『こたつの上で出来る分には悪くありませんね』

「ではこちらに用意したるは女神様の福笑い」

『ほう、ではやってみてください、各種ずれた分だけ貴方の顔のパーツの位置をずらしてあげましょう』

「おっと、中々スリリング、でもやってみましょう。……はい、できました」

『一ミリのずれも無いとは』

「愛の力ですね」

『では成功の褒美として異世界転生のお時間です』

「完全にスルー、そして褒美とは。いや今までが褒美だったと思えば中々悪くないのでは」

『前向きな所は評価します』

「では目安箱をがーさごーそ、っと。流水さんより『一人一つの固有武器を居能で具現化する超人現代ファンタジー世界にいる、とある学校の優等生の武器、鐘』」

『ふむ、わりとまともですね。インテリジェンスウェポン、意思ある武器ですね』

「これは楽勝ムードですね」

『貴方のことですから何かしらやらかすとは思いますが、しかしまとも過ぎると順番待ちが発生しそうな気もしますね』

「大丈夫ですよ、きっと空いてますよ。カタカタっと、ほら空いてます」

『女神の端末を勝手に弄らないでください。しかし驚きましたね、需要が減っているのでしょうか』

「取り合えずオプションをささっと決めていきましょう」

『いつになくやる気ですね』

「連続してバトルが少なかったのでたまには体を動かそうと思いまして」

『これ貴方の新しい人生ですからね、ちょっとしたハイキングじゃありませんよ』

「正月太りも解消したいですからね、女神様も一緒に行きませんか」

『それは私が太ったとでも言いたいのでしょうか』

「曲解に至るプロセスが速すぎて手も早い、人を磔にしなくても良いのに」

『貴方は何かしら含みを持たせる時がありますから』

「いやいや、普通にちょっと観光でもどうですかと進めただけですよ」

『そんな国内旅行みたいなノリで異世界に誘わないでください』



『体重は……これなら誤差ですね』

「ただいま戻りました、少し増えてますね」

『滅びなさい』

「おっと手荒い洗礼」

『当然の磔刑です。そもそも私の基本体重を何故知っているのでしょうか』

「土をやっていた時期がありますからね、接している地面越しに相手の体重くらい量れますよ」

※第四話参照

『そんな時期から私の体重を計測していたことに驚きです』

「ちなみに今回はどれくらいの期間でしたでしょうか」

『数年ですね、学校系ファンタジーだったので妥当といえば妥当でしょうが』

「数年でこの増加なら誤差ですね」

『そろそろ私の体重の話題を終えないと貴方の人生を終えさせますが』

「眼が本気だ、それでは報告しましょうか」

『一人一つの固有武器を異能で具現化する超人現代ファンタジー世界にいる、とある学校の優等生の武器、鐘でしたか』

「いえ、一人一つの固有武器を居・能・で具現化する超人現代ファンタジー世界にいる、とある学校の優等生の武器、鐘です」

『お題に誤字が、それで順番待ちが無かったのですね』

「山口県宇部市居能町が舞台のお話です」

『なんてニッチな』

「あ、これ宇部ダイヤって言うお土産のお菓子です。今お茶も入れますね」

『至極まともなお土産がきましたね』

「舞台は確かに日本だったのですが結局は平行世界、ファンタジーありの世界だったので懐かしの帰国とはいかなかったんですよね」

『貴方の地元でなくて良かったです』

「ちなみに住んでいた住所を調べたら売り地でした、中々寂しいものです」

『むしろ貴方がもう一人いなくて良かったと思いましょう』

「本題に戻りましょう。この居能では戦闘能力による序列が全て、その最たる場所がとある学校です」

『正式名称は覚えていないのですか』

「とあるが正式名称です徒或とある学校です」

『平仮名で無いだけ良しとしましょう』

「普段使わない組み合わせなので、設定通り一人一つの固有武器を具現化できます。個人差は多少ありますが中学生から具現化が可能ですね」

『それで貴方は優等生の武器ですか』

「はい、プレッセラと言う女子生徒の武器でした」

※今作者の手元にあるのはエスプレッソコーヒー

『舞台は日本では』

「帰国子女です」

『優等生らしい、いや冷静に考えて帰国子女は日本人ですよ』

「確かハーフです、日本人と中国人の」

『西洋風な名前ですよね、フランス語っぽいですし』

「ああ、母親が元フランス人で中国籍を持ったスパイなんですよ』

『ややこしい』

「そして父親が元忍者の日本人です」

『その設定後から生きてきますかね』

「あまり」

『ではさっさと始めてください』

「プレッセラは一般的な委員長系サイコヒロインでしたね」

『サイコが付いている時点で一般的ではありません』

「武道黒帯、数ヶ国語をマスターする文武両道。容姿端麗で社交的で男女共に人気がある子でした」

『まさに定番な優等生ですね』

「そして趣味が生肉の詰まったぬいぐるみ作成」

『サイコパスですね』

「重量感ありましたね」

『要らない情報ですね』

「そんなプレッセラと俺との出会いは彼女が中学に上がる少し前、初めて彼女が固有武器を具現化させることに成功した時です」

『少しは劇的だったのでしょうか』

「はい、BGMに怒りの日を流しておきました」

※有名なクラシックの曲です。

『劇的過ぎる』

「ちなみにモーツァルトの方です」

『ヴェルディの方は急展開なイメージですからね』

※有名どころはモーツァルト、ヴェルディ、両方とも良い曲です。

「プレッセラは全長約4.5メートル程である俺の登場に多少驚きつつも俺を手に取ります」

※大梵鐘で画像検索を行うとわかりやすいです。

『怒りの日をBGMに現れる大梵鐘、よく多少驚く程度で済みましたね』

「ちなみに重さは38トン近いですからね」

『中学生前の少女が持てる重さじゃないですよね』

「そこはほら、オプションで本人が感じる重さを軽減できるようにしてありますので」

『日本では少年少女が体より大きい武器を持つファンタジーが好まれますが流石に大きすぎるのでは、そもそもどうやって持つのでしょうか』

「上側に4メートルの棒をつけているのでハンドベルの様な形で持てますよ」

『全長8メートル超えましたね、身長150センチほどの少女が掲げれば10メートル級ですね』

「俺を手にしたプレッセラは体育館の床をぶち抜いて地面に埋まりました」

『本人が感じる重さは軽減できていたのに実際の重量は誤魔化せませんでしたか』

「好きな男の子の前で体重が重いような演出を見せてしまったプレッセラはショックを受け俺を高校生になるまで封印します」

『その男の子からすれば少女が怒りの日をBGMに全長8.5メートルの鐘を装備した光景の方がショックでしょうけど』

「流石に可哀想だったのでその時の少年の記憶は消しておきました」

『また便利なオプションを持ち込んでいきましたね』

「いえ、物理的に」

『38トンの鐘に物理的に記憶を消された少年の命が心配です』

「主人公補正を持っていたので大丈夫でしたよ」

『なるほど、そう言えばヒロインでしたねその優等生』

「ちなみにその後の写真がこちら」

『病院で頭に包帯を巻いて眼の光を失っている少年の姿が、とても大丈夫そうには見えませんね』

「ただプレッセラが覚えていたというのと、何故かその少年がプレッセラを恐怖の眼で見ていたので中学時代は殆ど接点が無かったです」

『それ記憶消せていないのでは、よしんば消えていても恐怖が植えつけられていますよね』

「そんなわけで時代は一気に飛んでプレッセラが高校生になった時に進みます、舞台は山口県宇部市居能町にあるとある学校」

『別に今後山口県要素関わらないでしょうから無理に入れなくて結構です』

「この物語の中心は主人公である喉黒のどぐろと言う少年が繰り広げる異能力バトルです」

『無駄に特産品が割り込んできましたね』

※のどぐろはお魚です。

「ちなみに固有武器は変幻自在のマルチウェポンです」

『主人公らしいですね』

「あと何故か魚の形を模していました」

『それが覚えのある異世界転生者なのか、それとも主人公の名前の由来からなのか悩ましいところですね』

「武器の名前は『万象紅鮭』」

『前者ですね』

「ちなみに俺の武器としての名前は『なんか殴る奴』です」

『せめて鐘の文字を入れたらどうですか』

「設定し忘れてしまいまして」

『そう言えば貴方がまともに名前を付けられた所を見たことがありませんね』

「喉黒少年は中学時代戦うことを恐れていた少年でしたが高校生になってそのトラウマを克服、鮮烈な高校生デビューを果たします」

『そのトラウマを植えつけたのは紛れも無く貴方でしょうね』

「プレッセラはそんな喉黒少年の中学時代を影で見守り、避けられるという日々」

『誰かさんのせいで』

「しかし高校生になって活躍する喉黒を影で見守り、喜んでいました」

『それはなによりですね』

「まあ片思いをこじらせて家に喉黒少年の人形が無数に並んでいましたが」

『ホラーですね、しかもそれ生肉入りですよね』

「そして少しだけ端折って、ついにプレッセラが俺の封印を解く日が来ます」

『ちなみに端折られた日々に何か変わったイベントはあったのでしょうか』

「特には、プレッセラが喉黒少年に告白しようとしましたが本能的恐怖から逃げられた程度ですね」

『大惨事が端折られていましたね』

「学校を支配していた生徒会との戦いに苦戦し危険に晒された喉黒少年を助けるべくプレッセラは自らの武器を具現化したのです」

『主人公のピンチで覚醒するヒロイン、逆な気もしますがこれはこれでありなのでしょうか』

「なおその時の敵は無数の出刃包丁を具現化し、相手を捌くといった感じの奴です」

『確かに魚系のキャラには辛い相手ですね』

「流れる怒りの日」

『まだ流してましたか』

「その巨大な鐘である俺を前に、生徒会の下っ端は怯みます」

『まあ出刃包丁サイズで満足していた人からすれば規格外でしょうね』

「そして蘇る喉黒少年のトラウマ」

『折角克服したのに』

「全身の古傷が痛み出していた模様」

『記憶を消した際に何をしたんですかね』

「しかし流石はバトル系学園もののボスポジ生徒会のメンバー、奥義である無数の出刃包丁を周囲に纏う自動迎撃システムを発動してみせます」

『オチが読めました』

「プレッセラの一振りで無数の出刃包丁ごと吹き飛ばされる生徒会メンバー」

『でしょうね』

「鮮明に蘇る喉黒少年のトラウマ」

『中学生に上がる前の少年に何をしてくれたんですか』

「こうしてプレッセラは学校を支配する生徒会と戦う喉黒少年の一派に加わります」

『よく主人公が認めましたね』

「多少のラブロマンスとバイオレンスがあって、どうにか」

『バイオレンスがあったらいけないと思いますが』

「一番効果的だったのは彼女の家に喉黒少年がお呼ばれされたときですね」

『無数の自分の形をした生肉入りの人形を見せられて彼は死を覚悟したのでしょうね』

「ただまあ俺がやらかしたことを知ったプレッセラはあまり俺を良く思っていなかったようで、週3回くらいしか具現化してくれませんでした」

『週3で使用してくれるなら割と許されているような気もしますね』

「そしてそこから物語は急展開、プレッセラは生徒会のメンバーを次々と粉砕していきます」

『大抵の武器相手ならば小細工なしで押しつぶせそうですね』

「そしてとうとう生徒会長である黒柏くろかしわとの戦いが始まりました」

『山口の特産っと……鶏肉ですか』

「奴の固有武器は背中に生える翼、まるで空を羽ばたく天使のようでした」

『名前の元ネタが鶏なせいで飛べそうにない気がしますが』

「でも強かったですよ、翼から放たれる羽は鉄板も貫通しますし、固有能力の影響かプレッセラの全力の一振りを全身に受けても平然と立っていましたから」

『それは強い、重さだけで打倒できない敵が出てきて多少ほっとしています』

「喉黒少年の小細工も殆ど封殺されて二人はピンチに陥ります」

『主人公らしい武器なのですから小細工扱いは控えてあげてください』

「そして動けなくなった喉黒少年に放たれた羽が迫ります、まさにまな板の上の鯉」

『のどぐろですけどね、武器は紅鮭ですし』

「ですがそこで身を挺して庇うプレッセラ、羽はプレッセラの胸を貫きます」

『おや、これはヒロインが死亡してからの主人公覚醒ルートでしょうか』

「崩れ落ちるプレッセラ、しかしそれは身代わりの術だったのです」

『唐突に蘇った忍者の血筋設定』

「生徒会長も生肉の詰まった等身大の身代わり人形を見て驚きを隠せません」

『身代わりの術に驚いたのか、生肉の詰まった等身大の人形に驚いたのか、はたまた両方か』

「そしてプレッセラは分身の術を使い、無数の等身大人形を周囲に大量に配置して一度喉黒少年と物陰に隠れます」

『生肉の詰まった等身大人形に囲まれた生徒会長も災難ですね』

「窮地は脱したものの、有効打がない現状。ここに来てプレッセラが始めて俺を頼りました」

『好きだった少年との中学生時代を台無しにした貴方に頼るほどですか』

「頼られたからには応えないわけにはいきません、俺は初めて自分の能力を説明します」

『なんか殴る奴ではなかったのですね』

「なんとなくで用意した力だったのですが、少しばかりイマイチだったので使用を自粛していたのです」

『えらく悲しい設定ですね』

「それは認識阻害の力です、ある物を別の物に認識させる力ですね」

『強力と言えば強力ですが、少しパンチが弱いですね』

「せいぜい綿と生肉を誤認識させる程度でして」

『ぬいぐるみを作成する少女趣味をサイコパス化させたのは貴方のせいでしたか』

「具現化しなくても多少漏れていたようですね」

『進行形でヒロインが致命的な被害にあっていますね』

「そしてプレッセラは閃きます、今黒柏が破壊し飛び散らかしている人形の綿を生肉に誤認識させることができれば動揺を誘えるのではないかと」

『生肉なんですよね、最初から』

「そして制止する喉黒少年を振りほどき、黒柏に俺の力を使います」

『制止した理由は意味が無いからでしょうけどね』

「すると、黒柏は自分の翼の羽が全て鳥の胸肉に変わって見えるように」

『せめて手羽先が良かったでしょうに』

「取り乱す黒柏」

『鳥だけにですか』

「えっ」

『早く続きを言いなさい』

「なんと黒柏は鶏肉アレルギーだったのです」

『なんと言う好都合』

「慌てた黒柏は具現化していた翼を解除しています。そこを見逃さなかった喉黒少年が奥義、煉獄剛炎雷鳴冥界蹴を放ちます」

『確実に主人公の武器も異世界転生者ですね。確か原子分解される技だったような、流石にやりすぎでは』

※第二話参照、なんか出てきた必殺技、喰らった相手は原子レベルで分解されるらしい。

「主人公補正程度しか持たない喉黒少年のような一般的な人間では完璧には扱えない技でして、ただの強力な一撃程度ですよ」

『紅鮭やヤドカリが完璧に扱っていた気がするんですがね』

「こうして喉黒少年は生徒会長黒柏を倒し学園の平和を勝ち取りました」

『ひと段落しましたね』

「そしていよいよ別れの時がやってきます、戦いが終ったと言う理由からプレッセラは俺を完全に封印することにしたのです」

『それ以外に致命的な理由があると思うのですがね』

「ついでに喉黒少年もついでに武器を封印します、やはり具現化する武器は争いやろくな結果しか生み出さないと言うのが彼の導き出した答えでした」

『身を持って証明しましたからね、そしてついでに封印されてしまいましたか紅鮭は』

「その後普通の優等生に戻ったプレッセラは喉黒少年と良い感じになったそうです」

『大抵は貴方のせいでしたからね』

「やっぱり最初にインパクトを持たせすぎるとダメですね、持ち主と疎遠になるわ逆恨みされるわで大変でしたよ」

『正当な恨みなんですがね』

「そうそう、先ほどのお菓子とは別に山口県の特産品を色々お土産に持って帰ってきましたよ」

『今までのお土産からするとまともすぎてインパクトに欠けますが素直に貰っておきましょう』

「あと俺の憑依していた鐘もついでに」

『除夜の鐘として使うには少し遅かったですね』

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