水中の曖昧世界【2】
次の日も、昨日と似たような一日が始まる。
ホームルーム。
先生の伝達事項は特になくてお開きになる。
立ち上がって友達の所にいく子、ロッカーに教科書や辞書を置きに行く子、予習を写させてもらっている子、机に伏せている子。
いつもと同じ。
みんな、もう知っているだろうか。
私が透明人間になったこと。
知らないのなら私はまだ完全な透明人間ではないのかもしれない。
でも、陽子たちは目立つし、きっとみんなに知れている。
私はどうあがいても透明人間には変わりないか。
二時間目の体育は、保健室に行ってサボることにした。
水泳の授業はもう終わったから、きっと「自由時間」。
教室が体育館に丸ごと移動して、一時間の休憩をもらったようになるだけだ。
好き勝手に体育館でスポーツをして良いことになっている。
私は、ひとりぽつんとするだけだろう。
広くて大きい体育館で、机と言う隠れ家もなく、ぽつんと佇むか、壁際に座ってみんなの笑顔を眺めるか。
苦痛すぎる。
保健室に行くと、ドアに「職員室にいます」という札がかかっていた。
ためしにドアを引くとピクリともしなかった。
なんだか何もかもめんどくさくなって、保健室の前の廊下に座り込む。
おしりに廊下の木の冷たい感触。
目を瞑る。
セミの声、遠い喧噪、車の石をはじく音。
ぎゅっと生徒が詰められた校舎。
私もその一員のはずなのに、ひとりなんだなと思う。
「つらいなあ。」
ひとり呟いて、つらいのかと思う。
膝を抱えて、ひたいを膝につける。
そのまま目を瞑って、少し眠ってしまおう。
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