足の指のマニキュア【2】


「暇。放課後、遊び行こうよ。」


 いつもこう言いだすのは陽子で、決まって「暇」と最初に言う。


 その暇という言い方はいつもどこかに投げつけるような言い方で、言葉は潰れてへちゃげてぐちゃぐちゃになっている。


 私は、他の二人がどうこたえるかをまず窺う。


「あー、フツーにいいけど。」


 千紘が、自分の爪を見ながら答える。

 校則違反の薄いピンク色のマニキュアの爪。

 そんな塗ってるか塗ってないか分からないような色なら塗るなよ。


「私は、どうしよっかな。期末テスト前だし。数学がやばい。」


 実花のやばいは、いつもそんなにやばくない。


「じゃあさ、ファミレスかどっかでみんなで勉強しない?家帰ってもやんないし。絶対。」


 陽子が言うとそれはもう、ほぼ決定事項だ。



 私は、みんなで勉強というものが、全く効率的でなくて、最後にはおしゃべりに興じてしまうということを知っている。


 本音としては、私は一人でまっすぐ家に帰って勉強をしたかった。




 なのに私はいつもそのことを言い出せない。嫌だと思うのに「みんなで勉強」という名目のファミレスでのおしゃべりに参加するのだ。





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