第25話

Fairy lover 25




「美空…のって」



背中を向けてしゃがんだ彼



「優?」


「いいから、のれって」


「うん」



彼の背中に身をあずけた



「しっかり掴まっとけ」



彼の首に腕を回してギュッと掴まると

クルクルと回り出した



「きゃぁーっ、何よ、目が回る」



「プリンシパルのくせに、これぐらい

平気だろ」




優は私をおぶって動き始めた


ぎこちない動きだけど私が踊ってたように精一杯、回ったり、飛んだり…




「美空…ハァハァ、どうだ、俺もなかなかだろ?」



「優…上手よ!」



「だろ?次のジゼルの相手は俺にしろよ」



「何それ(笑)」



「はぁ、だって…」



「え?まさか、優…ヤキモチやいてくれてた?」



「べっつにぃ」



クルクル~



「きゃー、落ちるよ~

すごいよ!優、私…踊ってるみたい」





俺は精一杯、踊った


決して、踊るなんてもんじゃなかったけど、俺たちは冬の夜空の下でたくさんの星のスポットライトを浴びて踊り続けた




美空の思いが背中から伝わってくる


小さな温もりが愛しくて……

望むことならば、

このまま、1つなってしまいたいと思ったんだ





「はぁっ、はぁ、さすがに…俺ももう無理」



「ありがとう。優…私…こんなに素敵に踊れたの初めてだよ」



「ハハハ、こんなバレエねぇけどな。

ほら、もう、風邪ひくから帰ろ」



美空をおろして手を握った



「嫌っ 病院は」



「ふーん、俺んとこに帰るんだけど?

病院は明日の朝帰ればいいって」



「ほんと!!…でも…」



「まだ、何かあんのかよ?わがままなお嬢さんだなぁ」



「優の部屋に帰ると…病院に余計帰りたくないって思うもん」



「じゃあ、どうすんだよ

どっか行きたいとこある?」



「うーん……

あっ、そうだ!私行ってみたいところあったんだ」



「どこ?行こ!」



「ちょっと耳貸して」



「ふっ、誰もいねぇじゃん、まっいいけど

なになに?」



耳元でこそこそと美空が言った




「あのね、ホテルに泊まってみたい…」



「クックッ、そうなの?」



「笑わないでよ」



「ごめんごめん、わかった。

美空がしたいこと全部しようって言ったもんな。まだ残ってたんだな」



「うんっ!」





美空が俺の腕に細い腕を絡めて笑ってる

さっきまであんなに辛そうに泣いてた彼女が…。




俺にも出来ることがあった


美空を笑顔にすること


たった、それだけのことだけど

今は…この笑顔を少しでも見ていたいと思った





俺は美空と出会えて、とても大切なことを教えてもらった気がする


それが、何なのか?よくわからないけど、

心の奥があっかくなる気がする

どこからか力が沸いてくる



そんなことを思いながら、隣ではしゃぐ彼女を見つめてた





「なぁーに?」


「何にもない」


「だって、何か考えてたでしょ?」



「あっ、そうだ」


「ん?」



見上げた彼女の唇を塞いだ



「キスいつしよっかな?って考えてたんだよ」


「もう~」






大切なこと


……真っ直ぐに人を愛する気持ち



余計なことはすべてふるいにかけられ、ただ1つ残る



美空からもらったものは心の中に灯るその気持ちなのかもしれない

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