第24話
Fairy lover 24
レコーディングも順調に終わり、スタジオを出ようとした時、電話が鳴った
「高坂さん、美空が、美空が…いないんです」
「いないって…」
「今日出た検査結果があまり良くなくて。
病室に置いてあった服がないし…あの子…。
何処か心当たりないですか?」
「俺、探しますから、お母さんは病室に居てください」
「お願いします」
とりあえず、部屋に戻ったけどいない
行くとしたら…
車を飛ばしてあの場所へ
夜の暗い海を眺める美空を見つけた
やっぱり…いた
「おいっ」
「へっ?優?」
「こんなさっみぃーとこで何してんだよ」
「……。」
ジャケットを美空にかけ、すぐに病室で待つ母親に電話した
「美空いました。
大丈夫です、
はい、わかりました」
「ママ何て?」
「何て?じゃねぇわっ」
冷たくなった彼女を抱きしめた
「ごめんなさい。
気がついたらここに来てた」
「はぁ、勝手にいなくなんなよ」
「だって…」
「良かった」
きつく抱きしめると彼女は心配して泣きそうになってた俺の気持ちなんて、お構い無しに明るい声で話始めた
でも、きっと、わざとそう振る舞ってたに違いないけど…。
「ねぇ、優?」
「あー?」
「ここで私踊ったよね?
あの時、改めて踊りたいって思ったんだよ」
「そうだったなぁ」
「私、踊る」
「いやっ、それは無理だろ」
胸元のシャツを握ってキラキラした目で見上げてる
「少しだけだから、ねっ?」
「…わかった。少しだけな」
俺から離れて細い腕を高く上げて踊り始めた
……けど、
1分ももたないうちに息が上がって、ふらついてしまった
「美空、だから、やめろって。
大丈夫か?」
しゃがみこんだ美空を抱えると
大粒の涙をポロポロ流して言った
「踊りたい、
私…踊りたい!
踊りたいよー、優…」
泣きじゃくる美空の体を抱きしめて背中をさすった
俺にはそんなことぐらいしか出来なかった
朝陽を浴びて舞ってた妖精に再び光を与えてやることは出来ない
自分の無力さが情けなかった
「グスッ、優も泣いてる?」
「泣いてないよ」
俺が泣く訳にはいかない
泣いちゃいけない
壊れそうな彼女の心を支える為に強くならないと…って思ったんだ
愛してる…と思えば思うほど
人は強くなれる
大切な温もりを抱きしめながら
俺は…そう…思ったんだ
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