第22話

Fairy lover 22



俺は少しでも時間が出来ると美空のところに足を運んだ



「美空ー」



夜遅くに病室を覗くとイヤホンをつけたまま、眠ってる



起こさないようにそっとイヤホンを外して布団をかけた



何聞いてんだろ?


イヤホンから流れてきたのは俺の曲



「ふっ、そりゃ、そうだよな」



1人でにやけてると……



「優、何笑ってるの?」


「べ、べつに」


「思い出し笑いする人はスケベなんだって。

当たってるよね、優、ドスケベだもんねぇ~」


「お前なぁ」


「しっ、声大きいって」


「あっ」




「ねぇ、優…あのね」



「何んだよ」



「えっと…やっぱ、いいや」



「美空ぅ?みーくちゃん、

言わないと帰ろっかなぁ」


「ダメ!言うから帰らないで!」


「わかったって、っで?」




「…優…と一緒に寝たい」



「へ?でも…ここじゃ」



「バカっ、そういうことじゃなくて一緒に寝るだけよ」






病院の狭いベッドで美空を抱きしめた


美空は嬉しそうに俺の胸に顔を押し付けて言った



「優の匂いだぁ

ずっと、こうしてほしかったの」



「早く言えよ」



「だって…」



チュッ



「ダメだよ…看護婦さん来ちゃう」



「怒られるかな?」



「フフっどうかな?

でも、怒られてもいい、離れたくない」



シャツをぎゅっと握った美空をしっかりと包み込んだ




「ねぇ、もし、もしもね、私がいなくなったら優は悲しい?」


「悲しいに決まってんじゃん。

ってか、いなくならないだろ

変なこと言うなよ」




どんどん小さくなっていく彼女がいつか、この腕の中から消えてしまうんじゃないかって怖くなった




「ごめん。いなくならないよ

ずっと優にくっついてるもん」



「それは、困るなぁ」



「えー?」



「だって、くっついてるとしたくなるじゃん」



「もう、やっぱり優はドスケベだぁ。

……そうだ、カーテン開けてみて」




俺がベッドから出てカーテンを開けに行くと彼女もゆっくりと立ち上がった



慌てて手を取り腰を支えて窓際に並んだ




「…今夜は新月なんだって。

願い事…しなきゃね」



「へぇ、そうなんだ」





窓から見える細く光る新月に

美空が早く踊れるようになりますようにと、

何度も何度も…繰り返し祈った




そして

月明かりに照らされた妖精の唇に長いキスを落とした



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る