第21話
Fairy lover 21
美空は再びイギリスへ
毎日のように電話で話した
他愛もない会話、声を聞くだけだったけど、たった、それだけのことだったけど、俺達には日々の糧となった
半年が過ぎた頃、
急に連絡が途絶えた
電話も繋がらない
どうしたんだろ?
不安に思って居たたまれなかった時
美空の母親から電話があった
「もしもし、高坂さん?
実は美空…体調が悪くて入院してるんです。
あの子は言わないでって言ったんですけど」
「大丈夫なんですか?」
「今、検査中だから、まだはっきりは…。」
「会いに行きたいんですが、すぐには」
「それは無理しないでください」
しばらくして彼女から電話があった
「優…私元気だからね!
心配しないで。
ママ、勝手に電話するんだもん」
「するんだもん、じゃねぇだろ。
美空…俺、来月パリに行くんだ。その足でLondonまで行くから」
「ほんとに!待ってる」
パリでの仕事を終え、次の日列車でイギリスに向かった
ロンドン郊外の病院へ急いだ
病室に入ると以前よりさらにちっちゃくなって、青白い顔の美空がいた
俺は何も言えずその細い体を抱きしめた
「優…来てくれてありがとう」
嬉しそうに笑った彼女を見ると涙が溢れた
「やだっ、泣かないでよ」
「うっせぇ、何ですぐに連絡しねぇんだよ」
「だって、心配するでしょ?」
「するわ、当たり前だろ」
「忙しいのに」
そう言いながら、俺の涙を彼女の長い指で拭ってそっと触れた唇
「美空…」
「ほんとは、会いたくてたまらなかった。
毎日、優のこと考えてた」
美空は日本での入院を勧められが、イギリスにいると聞かなかったらしい
帰国すると俺に迷惑がかかるからって…。
「ずっと隠しとおせるとでも思ったの?」
「……」
「帰ってこいよ。
毎日会いに行くから」
「……うっ、優…私…私ね……
踊れなくなったの」
「うん」
「だから、ヒック、だからっ」
「もう、いいから、何も言わなくていい。
俺がずっと側にいるから」
ほどなくして、美空は帰国し都内の病院に入院した
やっと、光を掴んだ妖精の掌からこぼれ落ちていく星の砂を
俺はなくさないようにしっかりと握りしめていた
いつか、また、トウシューズを履いて
ライトを浴びる日の為に
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