第17話

Fairy lover 17



美空がイギリスに発って1年が過ぎた



俺は彼女に届くようにと曲を書いた

きっと彼女なら俺の作品だと気付いてくれるはずだと思った



時々

彼女のニュースも少し耳に入ってた

俺のことも見てくれてんのかな…





そして



日本人バレリーナがプリンシパルになったということが大きく報じられた



美空…やったな



近々、帰国し公演が行われるということ。

会いたくて…たまらない気持ちになってた頃

以前、一緒に仕事したことのあった方から俺に会いたいという人がいると…


取材を終えて、待ち合わせ場所に向かった




その方を見た瞬間、すぐに誰だかわかった

美空にとてもよく似た女性




「初めまして

私…相澤美空の母です

高坂さん…お呼びたてして申し訳ありません。少しお話よろしいでしょうか?」



「はい」



「以前、美空が大変お世話になったようで、遅くなりましたが、ありがとうございました」



「いえ、」



「あの子から酷い母親だって聞いてますよね?あなたと会えなくしたのも私です」



「いやっ、それは彼女が決めたことだと思ってます」



「あの、まだ美空のこと……」



「もちろん、忘れたことはありません。

彼女のことを思って頑張ってきました」



「良かった」



ホッとしたように優しく笑ったかと思うと真っ直ぐに俺の方を見てゆっくり話始めた




「先日、ジゼルを踊ったあの子を見て思ったんです。

あっ、ジゼルってバレエの演目なんですけど…。

あなたのこと今でも本当に愛してると…感じました」



「それはどういうことですか?」



「人を愛したことのない人に本物のジゼルは踊れないと私は思ってます。

イギリスに発つ前に踊った時とは全く違ってた。

深く命をかけて愛する気持ちを表現して初めてあの作品は完成する。

……美空のジゼルは変わったんです」



「そうですか。

彼女の舞台見てみたいです」



「そう言っていただけるなんて…。

これ、良かったら」



チケットを差し出した彼女の母



「来日公演ではジゼルを踊ります。

是非見てやってください」



「いいんですか?」



「はい、もう、美空は立派なプリンシパルですもの。私の役目も終わりました。

あなたの存在があの子を一層輝かしてくれると思います。

どうぞ、よろしくお願いします」





その夜

ステージで踊る彼女を初めて観た



言葉では表現出来ないほどの空気感


何かが乗り移ったかのような凄ましさ


相手役に嫉妬するほどの愛情





美空…頑張ったんだな


涙が止まらなかった





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