第13話

Fairy lover 13



「美空、来週から家をあけることが多くなるから」


「どこ行くの?」


「レコーディングが始まるから、あまり帰って来れないと思う」


「そうなんだ…。

優の作った曲、聞きたいな」


「じゃ、今度、liveに来れば?

今、○○の曲を作ってるんだ

次のは詞も俺が書いた」


「へぇ、○○ってすごい人気だよね」


「美空、知ってるんだ」


「それぐらい知ってるよー」


「live、東京は来月の2日と3日

俺は裏にいてるから、一緒にいれないけど」


「んー、その辺りは難しい…かな」


「そっか、仕方ないよ、また今度な」


「うん、頑張ってね」


「おっ、また連絡するな」




まっすぐに進んでいく優を見てると私も頑張らなくちゃって思った





live当日

私は次の演目のリハーサルをしてた


予定より早めに終わり、帰り支度をしていると……



「美空…これ…」



チケットを渡された



「ママ!どうして?」


「行きたいんでしょ?」


「行きたい!」


「いいわよ、1日ぐらい、いってらっしゃい」


「ほんとにぃー。いいの?ありがとう」




優のことちゃんと話したことはなかったけど、何となく気付かれてるとは思ってた

間違いなく反対されると思ってたから、はっきりとは言わなかった


それが、どうして、こんなことするんだろ?

少し不安になったけど、liveに行けることの嬉しさが勝って、何も考えず、私は大急ぎで会場に向かった


優には内緒にしておこう





埋め尽くされる観客からの割れんばかりの歓声


圧倒された



liveも終盤にさしかかった時

確かこれが

優の作った曲





選んだこの道を俯くことなく進んでいこう

いつの日かあなたの道と交わる時

あなたを見失わないように


前へ前へ進んでいこう

あの頃より、更に輝いていられるように



伝えたい言葉を大切な人に伝える

単純だけど

一番大事なこと……♪





自然と頬を涙がつたってた



私の名前を呼んで抱きしめてくれる彼は

凄い人なんだ



こんなに素敵な言葉を綴るんだ


こんなに心を熱くする音を作るんだ






その夜


「優…今日、実は見に行ってたんだよ」


「やっぱり」


「え?」


「裏から観客席を見渡した時…スタンドに見えたのが美空かな?って」


「すごいねぇ、見えるんだぁ」


「まーなぁ、俺だから、見えんだよ美空が」


「何それ(笑)」


「っでどうして急に来れたの?」


「ママが行ってきなさいって」


「まじ?」


「うん、優の存在はわかってたんだろうけど…許してくれる訳ないと思ってたから、黙ってたの。…どうしたんだろ」





その訳が1週間後にわかった




私はもうすぐイギリスに発つ

夢を叶えるために。

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