第10話

Fairy lover 10



美空が部屋を出てから半月がたった

…けど、会うことは出来なかった


彼女はバレエ界では誰もが知る人であるということ。

どうやら、周りのガードも固いようだ



ひっそりとした美空の部屋をぼーっと見つめてると彼女からの電話が鳴った



「優…聞いて!」


「いきなり、どうした(笑)」


「明日、会える

優のところに行けるよー!」


「マジ?」


「うん、ママが明日から3日間いないの」


「でも、周りの人達は?」


「そこは何とかうまくやるから

っで優、明日早い?」


「んー、そんなに遅くならないと思う」


「じゃあね、私、優にお礼がしたいから、

ご飯作って待ってるね」


「美空、料理出来んの?」


「バカにしないでよ、私だって」


「わかった

楽しみにしてるな」





仕事が長引いて、思ってたより遅くなった


(美空…ほんとにいるかな)


エレベーターの中で1人でにやつく俺


ヤバイな




「ただいま~」



真っ暗なリビングのソファで座ったままうとうとする美空


(いた!)



そーっと近付こうとしたら、パチリと目を開けた


「んっ?優、おかえり」


「ただいま

ごめんな、遅くなって」


「うううん」


「腹、減ったんだけど?」


「すいた…よね」



キッチンに行くと真っ黒になったハンバーグ?らしきもの



「美空、ハンバーグ作ってくれたの?」



慌てて走ってきて、俺を押し退ける



「あっ、これ、いいよ、失敗したから」


「食べるよ」


「いいって」


「だってせっかく」


「いいって言ってるでしょ!」



涙を浮かべて口を一文字にする彼女


手首を引っ張って抱きしめると……

声を上げて泣きながら途切れ途切れに話した



「私…優の為に…何にも出来ないよ。

グスッ、優は私の…為にいっぱいしてくれるのに…ウゥ、

大好きな人に…お料理も作ってあげられない」


(にやにや)


「どうして笑うのよぉー」


「だって、美空、大好きな人って俺のこと?」


「はっ」



真っ赤になって俯く彼女



「ほんとに好き?」


「知らないっ」



涙をふいてそっぽ向く彼女



「強情だなぁ 俺は好きだけどな」


「へっ?ほんと?」


「こんな時に嘘、言えるか」


「もう1回言って!」


「無理、美空が言ったらな」


「むー」




「あっ、そうだ!俺、美空にしてもらいたいことある」


「何?してあげる」



さっきまで泣いてたくせに、急に嬉しそうに腕を掴んで顔を覗きこむ



「出来っかなぁ、難しいからなぁ」


「出来るって!私頑張るよ

ねぇ、何したらいいの?」


「キス」


「へ?」


「この間、練習したじゃん、キスしてよ、美空が」


「そ、それは」


「やっぱ無理じゃん」


「出来るよ!そんなの余裕」


「ふーん、じゃ、して」



口を少し尖らせて近付くとと困った顔する彼女



「ごめん、意地悪しすぎたな

俺がするよ」





初めは優しく重ねた唇だったけど、

今日はこの前とは違った



大好きな人…と彼女が言った言葉が俺の気持ちを後押しして、何度も繰り返すキスはどんどん深くなった




「んんっ、ゆ…う…ハァ 苦しいよ」


「ごめん、止められなかった」




包み込むように抱きしめると

彼女は俺の腰に手を回して胸に耳を当てた



「ねぇ、優もドキドキしてるよ?」


「当たり前だろ、美空が…好きだから」


「ウフフっ」


「何か余裕だけど…これから先…どうするかわかってる?」


「え?」



まん丸の目で俺を見上げた



「嫌なら、無理には…」


「無理じゃないから

私も優に……えっと、何て言ったいいかわかんないよー」



両手で顔を覆い隠す美空を抱き上げた





「何も言わなくていい

何もしなくていい

美空の全部を俺にくれたらそれでいいから」




小さく頷いた彼女を大切にベッドに沈めた


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