第9話

Fairy lover 9


次の日

昼頃、仕事の合間に少し時間が出来たので、一旦帰宅した


ドアを開けた途端



「きゃっ!」


目の前にいた美空が玄関で尻餅をついた


「大丈夫?」


手を引っ張って起こすと

ばつの悪そうな顔をする美空


「どっか行くの?」


「…帰ろうと…思って」


「俺のいない間に?」


「ごめんなさい

だって、顔見たら決心が鈍ると思って」


「ふーん」


「あっ、後から電話しようと思ってたんだよ」


「美空…

ちゃんと、見送るよ

これから、しっかりと夢に向かって進んでいくんだから…なっ?」


「うんっ、そうだね

優……ほんとにお世話になりました」


「頑張れよ」


「ありがとう、優もね」


「何かサヨナラみたいじゃん、

明日また来てもいいんだけど?」


「明日は無理だよ~(笑)」


「じゃ、またね

ここでいいから」




バタン…っと、重いドアが笑顔の美空を一瞬で遮ってしまった



俺たちは終わった訳じゃないんだ

っていうか、まだ何も始まってない






いつでも来れるようにと彼女の部屋と着替えはそのままにしておいた



美空のいない部屋は

温もりをなくし、ヒンヤリと冷たさを感じた



いなくなって初めて俺の中で彼女の存在が大きくなっていることを知った




人を好きになると

逢いたくて

愛しくて

触れたくて

心が熱くなる


その反面

焦って

戸惑って

切なくて

心が苦しくなる



恋することを美空に教えたつもりが、逆に改めて、教えられた気がした




(はぁー、今度いつ会えるかなぁ)




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