第8話

Fairy lover 8



流れていく高速道路の照明灯がこんなに綺麗だなんて、思ったことなかった



隣に愛しい人がいると見慣れた景色さえも特別に感じられる




「ただいまぁ」


「プッ、誰に言ってんだよ」


「優のお部屋に言ってるのよっ」


「部屋に?」


「何かさぁ、いいね、一緒に帰れるって」


「だな

俺仕事があるから、美空は適当に寝といて」


「はーい」




静まり返った

リビングでPCを叩いてた



夜中

寝室から布団を引き摺りながら、フラリフラリと美空が歩いてきた




「優…?まだ起きてるの?」


「どうした?」


「眠れなくて…

ねぇ、邪魔しないからここにいていい?」


「ちゃんとベッドで寝ないと」


「いいでしょー

ケチっ」


「はぁ?」


「ここでいるっ」



前に座ってよりかかってる彼の背中を押して後ろのソファに横になった



「しょーがねぇなぁ」




しばらく黙って仕事を続けてると、美空は俺の背中のシャツを少しだけ摘まんで、眠りについた



「寝てんじゃん(笑)」




「っしゃ、終わった!」


「ん?終わった?」


「あっ、ごめん、起こした?」


「うううん」



身体を起こしてちょこんとソファの上に座ってる彼女の方へ向き直した



すると、彼女は悲しそうな顔でポツリ言った




「夢…見てた」


「んー?どんな?」


「優が……いなくなっちゃう夢」


「俺はここにいるよ?」


「でも…優…ともう会えくなるのかな?

私が家に戻ったら、バレエをしてたら、会えなくなるの?」


「会えるよ!いつでも、ここに来ていいから」


「でも…来れるかなぁ」


「そんななぁ、情けない顔すんなよ」


「だって…」




「美空は夢があるの?」


「あるよ

イギリスのバレエ団でプリンシパルになること」


「プリンシパルって?」


「バレエ団の中でトップの階級にいる人のことよ」


「へぇ、すごいな。

……イギリスかぁ 遠いな」





「なぁ、美空……

……やっぱ、いいや」


「なに?言いかけて気になるー

言ってよ」


「いいって」


「言って」




「キス…してみる?」


「えー!

恋人じゃなくてもキスするの?」


「っんなびっくりすんなよ

したことないんなら、してやろうかなって思ったんだよ、あれだ、ほら、練習だよ

あー、でも、もういいや」


「優…」


「いいって」


「して」


「ん?」


「してよ」


「ほんとに?」


「うん」




ソファからおりて俺の横に座り直した美空の肩を抱き寄せて髪を撫でた


ゆっくり、顔を近づけるとギュッと目を瞑る


頬に手を添えてゆっくり唇を重ねた


柔らかくて、俺の方まで緊張してくる



何度でもしたくて、彼女が目を開く前にと焦ってまた、角度を変えて今度は強く押し付けるように重ねた



美空の力が少しずつ抜けてきて唇を離すと恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた




キスすることだけで、胸がいっぱいになるなんて……初めてだった




彼女はゆっくり顔を上げて言ったんだ





「優…は私にたくさんの初めてをくれる

……ありがとう」



にっこり笑った彼女の額に唇を押し当てた





(違うよ……

美空も俺に初めてをくれてるんだよ)





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