第3話

Fairy lover 3



自分が何をしたいのか

何を求めてるのか

何を目指しているのか

…わからなくなってた


何処でも良かった

誰でも良かった

ただ……逃げたかった



私をさらってくれた見ず知らずの彼の部屋は高級マンションの最上階


(いったいこの人何者なんだろう

ちょっと怖くなった)



「あのー、私やっぱり帰る」


「そっ?なら帰れば?

自分からさらってくれとか言っといて変なやつ」


「申し訳ありませんねっ、

ご迷惑おかけしました」



(この人、やな感じ

ふんっ)


玄関の壁をコツンと蹴ってやった

その瞬間


ガシャン


飾ってあった絵が落ちてきた


「ご、ごめんなさい」


額が割れてガラスの破片が飛び散った



「動くなっ」


立ち尽くす私に慌てて近付いてきて、一瞬で抱き上げられた


「軽っ」


「危ないよ、大丈夫?」


「俺は平気。あんた、バレリーナ?なんでしょ?」


「う、うん」


「足、怪我したら大変じゃん」


「そう…だけど…」



リビングまで無表情で進んでソファに私を下ろすとすぐに玄関の片付けに行こうとする彼



(この人は…いい人なの?)



「本当にごめんなさい。弁償します

お掃除も私が」


「ぷっ、急にしおらしくなって。さっきまでの威勢はどうした?」



(笑った。

こんな無邪気な顔で笑うんだ)


「だって、私が悪いんだし」


「いいよー

ちっちゃなお嬢さんが蹴ったぐらいで落ちたんだから元々ぐらついてたんだな。

怪我しなくて良かったよ」



玄関先でしゃがんでてきぱきと片付けをする広い背中を見てると本当にこの人にさらってもらってもいいんじゃないか、

ひょっとして、私の王子様なの?…なんて夢のようなことを考えてた



抱き上げてくれた逞しい腕の温もりを感じて、少し早くなった鼓動を必死で落ち着かせようとしていたのに……

彼は急に、思い付いたように私の前にしゃがんで鋭い目でじっと見つめる


「な、なに?」


両手を伸ばして私の頬を挟むと更に首を傾げる


(何なのよ、声が出ない)



「ほんとは…帰りたくないんじゃないの?」



澄んだ綺麗な瞳で誘導尋問のように問いかけられた私は黙って首を縦に振った



「だろうな、そんな顔してる」


「ちが…」


「じゃあ、いれば、ここに」


「へ?」


「いていいよ。

好きなだけ 」






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