第17話 後始末とカツ丼
水の壁が消えた後には残りの兵隊達が、びしょ濡れになりながら放心しながら突っ立っていたり、顔を伏せてしゃがみ込みでいたり、これからどうなるのか不安そうに周りを伺っています。
武器を持った獣人達の若者達に取り囲まれ、鎧やブーツなども外させられ、隠し持っていた少数の短刀やナイフも没収されて、濡れていない道まで移動してしゃがんでいます。
キリコさんシンジ君にぴったり引っ付いています。息を荒げブルブル震えています。輝く白さの長毛がシンジ君に纏わりつき長毛の下にある体の暖かさがシンジ君に伝わります。いくら凄腕の精霊使いと言ってもまだ16歳の狐少女です。2m近い強面の兵隊と戦ったのですから、今のキリコさんの状態は良く分かります。
「キリコさんすごいよ!俺たちよく戦ったよ。犠牲者0で100名近い敵の兵隊を捕虜にしたんだよ!」
「シンジさんのおかげなのこん。」
キリコさんがシンジ君にさらに寄ります。銀の胸当てが邪魔でしたが、キリコさんのドクドクと打つ心臓の鼓動がシンジ君の胸に感じられ、シンジ君は生涯初めての幸せという体験をしたのです。
「なんだ!いったいどうなっている!そこの小太りの人族!どうして俺の兵隊達が武装放棄しているのだ!」
隊長ようやく目を醒ましまして、僕ら2人をみてまた叫び始めました。
「隊長皆んな降伏したんだよ。あんたも捕虜なんだよ!」
隊長真っ赤になりながら仁王立ちです。まだ泣いている魔導師を役立たずと蹴り飛ばしています。
「たった1人の獣人と見たことない1人の人族に、我が遊撃中隊が全員捕虜にされるなんてありえない! そこの小娘もう一度勝負しろ!」
うるさい隊長に閉口したシンジ君、左手から小さな火玉を浮かべて火の精霊に頼みました。火玉はあっという間に隊長の鎧の間に、すっぽりと入り込みました。
「ぎゃああああっ!」
隊長今度は絶叫して地面を這いずり回り水溜まりに飛び込んだのです。
「あちあち、あち!」
隊長絶叫しながら泥まみれです。自分で鎧を脱いで患部に一生懸命泥をかけています。
お父さんやコロルさんキリ君や獣人の仲間が、シンジ君キリコさんに群がっています。お父さん怪我人ゼロで敵の兵隊100人を捕虜にするなんて、奇跡を見たようで興奮しています。残りの獣人達も歓声をあげて喜んでいます。
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遠くからサイレンの音が近ずいてきます。パトカー20台と機動隊のバス1台が、様子を見ていた何台かの車の横を通っていきます。防護服を着てポリカーボネイトの盾を持った警官約60名と警察署長がやってきました。
署長はお父さんとコロルさんと巡査の報告を聞き、凶器準備集合罪で全員現行犯逮捕しました。手錠を掛けられた捕虜の兵隊約100名はバスやパトカーにぎゅうぎゅうに連め込まれ県警の拘置所に運ばれていきました。
隊長と魔導師の2人は実地検証のため居残りです。
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実地検証を終えた隊長と魔導師は町の警察署で、署長自ら取り調べを受けました。カマンベール大陸、サッカリン王国第一騎士団、突撃大隊遊撃中隊、隊長コーンバット大尉。理解できない言い分に署長は困惑しています。コーンバット隊長も見知らぬ発展した町や、トカゲがいなくても走る車に驚愕しています。
「カマンベール大陸にあるサッカリン王国?・・・・人はどれ程の人数が生活しているのですか?」署長聞いてみます。
「人口か?驚くなよ去年度に我がサッカリン王国は、10万人を超えたのだ!いかにサッカリン王国は栄えているか分かるだろう。ところでこの国の人族は一体何人が住んでいるのだ?」
「1億2000万ぐらいかな。」
署長ぼそりといいます。最初理解できなかったコーンバット元隊長?
「冗談言うんじゃない!1億2000万人?食料はどうするんだ!サッカリン王国でも全部賄いきれずに毎年餓死者が出るのだぞ!」
「食料?・・・・・むっ・・・腹が減った。何か食わせろ二日前から食っていないのだ!食わせなければもうしゃべらんぞ!」
「なんだこれは!うまいうまい!こんなうまいもの初めてじゃ!」
コーンバット隊長、出前のカツ丼がいたく気に入ったみたいです。スプーンを使ってあっという間に平らげ、おかわりを要求します。金持っているか?署長が聞きます。
「金?あるぞあるぞ、わしの巾着持ってきてくれ。」
若い刑事が元隊長の持ち物中から巾着を持ってきました。コーンバット隊長はじゃらと金貨、銀貨、銅貨を机に広げて言います。
「これだけあれば二三杯食えるであろう?」
金貨をつまんだ若い刑事『署長これ金貨ですよ。』
「わかった金貨1枚預かっておこう。」
出前が届くまで仏頂づらのコーンバット元隊長の前にカツ丼、天丼、親子丼いくつもの丼物が並びました。
コーンバット隊長初めて食べた丼物のうまさに感激しています。お茶もやかんから直接ごくごく飲んで、今度は天丼にかぶりつきました。
「うまいうまい、これもたまらなくうまい!これはシュリンプじゃな?どうやって調理したかわからんが、全部うまいぞ!」
豪快な食べっぷりに署長以下あきれるのです。隊長を取り調べている部屋の隣の部屋にいる魔導師はカツ丼を食べながらまだ泣いています。
その一方県警に連行された100名の部下たちも、『うまい!うまい!カツ丼うまい!』初めての日本の味に感激して、おかわり!おかわり!の連呼です。
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警視庁にある公安対策本部には、内閣調査室の人員が出入りして、県警に拘留中の人族の兵隊達や町の署で調べられていた、幹部2人の調書が上がり、忙しく人々が動いています。
日本国モフモフ難民500人 ぺり @nobuta60
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