第11話 市長、警察、役場、医者、消防団
騒がしかった赤鹿村もようやく、落ち着いて来ました。獣人たちは畑の世話をする事で、元の里での悲しい出来事を少しでも忘れようとボランティアと一緒に精を出しています。
お父さんはおじいさんと一緒に、獣人たちの主食である小麦の栽培を考えています。この地の栽培に適した小麦種を農協の人に聞いています。獣人たちの食事はだいたい小麦を加工して、北インドのナンみたいに焼いて、季節の野菜と狩猟で得た鳥や獣の肉を、色々調理して食べていたそうです。
お父さんは寄付金が膨大な金額に貯まっていますので、主食のナンやパンは当分町で購入していくつもりです。狩猟民族でもある獣人たちは、奥深い山に入り込み猪や鹿などの獲物を捕ってきます。
獣人の狩人は「こんな手付かずの大自然があるなんて、天国みたいだにゃん!」と興奮しています。周りの村の農家の人は害獣が減った事に喜び、日本の法律では色々問題がある事も知っていますが黙っています。お父さんは500人の住人達の食料確保維持のため、大きな冷蔵庫を何台か揃えるつもりです。
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ある日パトカーを先頭に何台かの車と、最後に小さな消防車が連なってやってきました。町長と役場の人が3人、警察署長と部下が4人、お医者さんと看護師と獣医さんで3人、隣村の消防団から4人の人たちが、集会室でおじいちゃんとお父さんとコロルさんと話し始めました。
町長が『獣人さん達の全体を把握した訳ではないのですが、この赤鹿村を特区として町ぐるみで助けていくつもりです。』
町長は思っています。『もし獣人達が日本人の戸籍を取れれば3~400票の有権者が増える!』町長は次の選挙の事を考えるのです。
役場の人が『後々書類関係の仕事が増えるので、獣人さん達の名簿を作りたいと思います。』お父さんは『彼らは日本語を話しますが、文字はひらがなに似て漢字は象形文字に似ていますので、私どもで代筆したいと思います。』おじいちゃんがその仕事をかって出ました。
町長と役場の人の友好的な話に、お父さんとコロルさんはほっとしました。
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次に警察署長がいわゆる事情徴収を始めました。一緒についてきた防犯課長が細かく日付や、避難してきた事情、元の里での生活状況。元の里で襲撃してきた種族の特徴などを徴集しました。
課長はやはり・・・・??? 元の里に住んでいた獣人が1,000人以上、襲撃してきた種族が2,000人以上と、いくらこの山に隠れ里があったとしても、これだけの人数の人が暮らしていける、土地のスペースがある訳がないのです!
大きな矛盾に課長は困った顔になりました。署長もコロルさんやお父さんの言道に、嘘は感じられなく、避難船が日本に着いたとか、避難民を目撃したとかの報告は受けていませんでした。
むしろ獣人達が外国からの避難民と言うなら、いったいどこのどんな国なんだと教えてもらいたいと思いました。ただ課長の言う隠れ里の疑問はその洞窟のある山に、直接調査を入れなくては分からないと思うのでした。
いつの間にか座っている署長の膝には、犬族の子供が丸くなり「くーん、くーん」と寝ています。普段威厳に満ちた顔つきの署長は、もえもえの顔となりさわさわと自然に、犬族の子供の背中や手足を撫ぜていたのです。
後ろに立っていた部下の巡査達の足にも、猫族や兎族や犬族の子供達が、戯れているのです。
『はっ!』とした署長はトロトロの顔になっている部下達に、セクハラになるから触っていかんぞ!と命令して名残惜しそうに、自分の膝上で寝ている犬族の子供から手を離したのです。
2人の巡査は泣きそうな顔になるのです。
署長はもしあちらの里を襲撃した兵隊達が、こちらの方まで攻めて来たら、大事になるぞと心配しだしました。コロルさんにその兵隊の装備している武器などを、細かく聞いています。
署長は『とてもじゃないが町の警察では対処できないぞ?軍隊には軍隊をぶつけなくては。
でもお偉方が一地方の警察署長の話しなぞ信用する訳がない。何か事が起きたら町の警察署員全員で対処して、機動隊とスワットの応援で乗り切らなくては!
『この愛らしい子供達を守るのが、定年まじかの私の最後の勤めだ!』
署長は心に誓うのです。
そしてお父さんに『あやしい者とか洞窟からの侵入者が出た場合、すぐ応援に駆けつられるように連絡係りに巡査2名を昼間常勤させます。』頼もしい言葉をかけてくれました。2人の巡査の顔は今度はにっこりしています。
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次に町にある小さな病院の二代目若院長さん『獣人の方で、体の不調を訴える人はいませんか? 傷なんかも診ますので、どこか場所作ってもらい診察したいと思います。』
基本獣人さん達の体は丈夫です。元の里で兵隊に受けた刀傷も、葉っぱをつけて布で巻いただけの人も多くいます。コロルさんが皆んなに聞こえる様に、遠吠えで皆んなの注意を引くと大声をあげました。
「精霊医が来てくれた!体の具合の悪い人は、こちらに集まってくださいだわん!」
集会室の隣の部屋で診察を始めました。初めて獣人と呼ぶ獣と半人間を診るので、若院長と獣医さん緊張しています。『下手に薬は与えられないな、少しにして様子をみないと。』獣医さんと看護師に相談しながら進めていこうと話し合いました。
外傷に関してはざっくり肉が削げて、血が流れている手や足の獣人さん平気な顔をして、順番待ちをしています。
看護師は『こんなひどい傷なのに、歩けるの?』犬の獣人さん『痛いけど歩けるよだわん。』と消毒の薬は浸みてすごく痛いはずなのに包帯をしてもらい、普通に歩いて畑に向かいました。
「時々頭が痛くなるですにゃん。」
猫族の若者の頭の後ろを診た先生、後頭部に矢じりがささっているのです。先生呆れながらもペンチを使って矢じりを抜きました。ビュッと出血して先生の白衣は真っ赤です。
普通に縫って消毒して頭に包帯をぐるぐるに巻かれた猫族の獣人、集会室にいたおばあちゃんに『お腹空いたにゃん、何か食べるものないかにゃん?』と声をかけています。看護師は血液のサンプルを取り、日付けと名前と年齢をメモしています。血液検査の結果がすごく気になります。
あとでお父さん皆んな普通に歩いてたし、葉っぱやら布を手足に巻いていたのはファッションだと思っていたと反省しています。
足の骨を折っていた猫族の若者は、こればかりはここでは治療でき無いので、救急車をよんで自分の病院に運びます。大先生に電話をして骨折の手術を頼みました。大先生は獣人の解剖ができると喜んでいます。のちに病院中の看護師が夢中になった美猫男子です。
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最後に隣村の消防団のおじさん達が、たくさんの一升瓶の酒を持ち込み、コロルさんに酒を注ぎながら、『酒を飲める皆んなを呼んでちょう』と獣人達を誘います。
何日も逃げ回っていて地酒を飲めなかった、獣人の飲んべ達が続々と集会室に集まりました。このまま町長や署長も含めて大宴会となったのです!
「うまいわん!美味しい酒だにゃん!」
獣人と日本人の飲兵衛達で夜遅くまで集会室は賑わったのです。
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