第10話 TVやYoutubareが押し寄せてきます!

 ネットの世界では少しずつ赤鹿村の情報が、上がり始めています。ネットの掲示板では信じる人と丸っきり嘘だと主張する人達の論争が絶えません。


 ただ偵察隊や無事ボランティアを務めてきた人達の、画像や動画が大量に投稿され始め、目に横線を入れた本人と兎族のスタイルのいいお姉さんとの、2ショットの画像には羨望の声が上がっています。


 見てきた人やボランテイア帰りの人達は、コロルさんやお父さんの『彼らを日本人として受け入れて欲しい。』と言う主張のコメントを残しています。


 youtubeの世界からは『また日本に行く用事ができた!可愛いはいつも日本!いつも日本ばかりずるい!』とコメントが溢れています。


 掲示板では『本当に獣人達が日本人になれるのなら、こんなに嬉しいことはない。法律に詳しい人達、獣人が日本人になれるか?調べてみて!アイヌ民族みたいな悲しい思いはさせるな!赤鹿村の皆んなみたいに獣人達を守ろう!余計なものは排除する、臭いものには蓋の政府の奴らに負けるな!獣人達を保護の名の元に収容所に監禁させることのない様に!


 押しかけるのは迷惑だろうから、寄付をしよう!食料や毛布等は山になっているみたいだから、現金を寄付しよう!サイトに振り込み先載っているよ!Pixibに獣人のテーマを掲げよう!』掲示板は大盛り上がりです。


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 サイトのメールにはたくさんの取材依頼のTV局、新聞社、人類学者、免疫学会、製薬会社、動物園などからの申し込みが溢れています。どう調べたのかは分かりませんが、おじいちゃんの平家家の電話は鳴り止みません。


 お父さんはとりあえず町のケーブルテレビと、地方新聞のみを村に入れて、他のマスコミ媒体は狭い村で今立て込んでいるので全て断りました。材料はケーブルテレビと地方新聞から、買ってくれと付け加えました。お父さんはきっと無理にでも入り込んでくるだろうと心配しています。


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 翌日ケーブルTVの取材チームと新聞記者がニコニコしながらやってきました。ケーブルTVはたしか5人しか社員がいないのに、20人ほどが映像カメラ4台で現れ、地方新聞も15人ほどで皆んなカメラを下げていました。


 昨日コロルさんと対策を相談して、卑屈になることや媚びを売る事はないけど、日本で皆んなと仲良く生活出来るように、この癖のある記者達を味方にしなければと。記者に聞かれたら大昔からこの山の奥に住んでいて、争いのために一時避難して来た。と言う話を皆んなの統一した意見にしました。嘘は言ってないしね。


 一部の獣人達は例の畑で耕作を始めています。兎族はこちらの人参の方がおいしいと種を蒔いています。その様子をテレビクルー達は『兎だ!兎だ!』と思わず声を上げています。


 女性のレポーターが側を歩いていた獣人の子供に、マイクを向け『どこから来たの?』と日本語で聞きました。『あの山の奥からだにゃーん』猫族の子供に返事をされて『あの山の奥からだ・・・にっ、にゃーん』だそうです!このレポーターは猫族の綺麗な子供の猫がそのまま二足歩行して、普通に日本語で答えてくれる姿に萌えまくっています。


 女性のレポーターは初めての異種人類遭遇に、また猫族の子供の野性的で可愛いい姿に興奮しています。日本語が通じるという事でそこら中の獣人に、皆んな争って撮影やインタビューを始めました。


 「好きな食べ物は何ですか?」


 「冷やし中華にマヨネーズとからしをタップリかけて、ズルズルと吸い込むと最高においしいだわん!」


 犬族の青年が答えます、『冷やし中華?・・・・・・・』レポーターは予想に反した答えに、次の言葉が出てきません。


 あちこちでインタビューが行われています、兎族のお姉さんに話しを聞いている若い男の記者は、白い毛皮が密集しているお姉さんの顔や手に触れたくてたまりません。時々長い耳や顔を手でクネクネと手で撫でる姿に、小学校で飼っていた兎達を思い出すのです。


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 いつのまにかyoutubareの皆さんが、甲高い声で獣人達の様子を撮影して、それぞれの視点からのコメントを、やはり甲高く早口でしゃべっています。日本に住み込んで世界に配信している、日本大好きなアメリカ人や欧州の人達も来ています。


 しかし高身長で青い目や高い鼻や色のついた髪をした男の人を、一目た獣人の子供達は皆んな一斉に逃げ出したのです!獣人の大人も棒や石を持って警戒の声を上げているのです。


 アメリカ人の本人は、ニコニコしていた表情を曇らせ呆然としています。


 コロルさんが慌ててお父さんを探して「兵隊がいる!人族の兵隊がいるわんわん!」と叫びだしたのです。尋常じゃないコロルさんの態度に驚き、一緒に現場に向かいました。


 夫婦のアメリカ人のyoutubareは訳も分からず両手を上げて、周りを棒を持った獣人族の大人達に囲まれています。


 「この人達は兵隊ではない!日本人ではないが、我々に害する人達ではありません!」


 お父さんはすぐ理解しました。コロルさんと獣人族の大人の人に、何度も説明しました。ようやく解放されたアメリカ人や欧州人は、お父さんから説明を受けています。


 「元の里であなたの様な顔立ちの人達に、虐められ殺されたりしたので、獣人族の人達が怖がったのです。いずれ慣れるとは思うので、今日のところは引き上げてください。」


 アメリカ人や欧州の白人種の人は、しよんぼり引き返して行きました。


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 後の彼らは正直に獣人族と会った時の様子をUPしました。「OMG!」「日本の山奥の里でも、俺たちスティツは嫌われているのか?」「日本に行ったら、獣人の忍者に殺される!」「俺はアジア系だから大丈夫だよね。」コメントに悲壮感が漂っています。


 TVの取材陣は肝心の獣人達が、皆んな逃げてしまったので、お父さんとコロルさんに色々な質問や疑問を、二人の周りを囲って取材しだしたのです。最初の撮影でビデオの材料は、何とか間に合いそうです。





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