死なない(過激な表現があります)
それは些細な喧嘩が発端だった。冷蔵庫のプリンを勝手に食べたとか、食べないだとか、本当にそんな小さいなことから始まったことだった。
言い合いをしているうちに、過去のことまで持ち出した妻に対して、ついカッとなって手をあげてしまったのだ。
もしかしたら会社でのストレスが気づかないうちに溜まっていたのかもしれない。
妻を平手打ちした私は大きな後悔を胸に、衝撃で倒れた妻の方を見ると、妻の首が本来曲がってはいけない方向に曲がっていた。
私は頭が真っ白になった。焦って、焦って、とんでもないことをしてしまったと焦って、気づけば私は妻をゴミ袋に入れてゴミ捨て場に捨てていた。
なぜそんなことをしてしまったのかはわからない。もしかするとそれが私の本性という奴なのかもしれない。
その日の夜は眠ることもできず、寝室で震えながら過ごした。
早朝、私は決心した。ゴミ捨て場から妻の遺体を戻して、正直に警察に伝えようと。
そうして寝室を出た私の視界に、妻の姿が見えた。
リビングで椅子に座っていた彼女は、寝室から出てきた私に「あら、今日は早いのね」などと軽く話しかける。
私は訳がわからなかった。昨日、確かに彼女は死んでいた。冷たくなっていく彼女をゴミ袋に入れて運んだ感覚は今でもしっかりと残っている。
もしかしてそれらは全て夢だったのか? これは夢で良かったと安堵する場面なのか?
「夢じゃないわよ、人殺し」
とたん、妻から冷ややかな声が届いた。
夢ではないのならこれは幻覚か?
「幻覚でもないわ、私は確かにここにいるわよ」
そういって椅子に座ったまま、こちらを見てニヤリと笑う彼女に、私は恐怖した。
なんなんだ、いったいなんなんだ。気づけば私は椅子に座る妻を引きずり降ろして馬乗りになり、彼女の顔面を何度も、何度も殴っていました。
怖かった、怖かったのです。生き返った妻が私に復讐しに帰ってきたんじゃないか、次は私が妻に殺されるのではないか。
両手は私の血と妻の血で赤黒く、妻の顔面は真っ赤に膨れ上がっていました。
ピクリとも動かない妻の息を確認すると、もう息をしていないことがわかります。
ですが、このままだといつ生き返るかわかりません。
包丁で妻の体を腕、足、胴、頭に切り分けてゴミ袋に詰めました。
これでもう生き返ることは出来ないでしょう。
人の体を包丁でバラバラにするというのは思いのほか大変でした。
疲れた私は妻の入ったゴミ袋をリビングの隅に置いて、寝室で眠りました。
明日になったら警察へいって、全てを正直に話そうと思いながら。
次の日、私は警察へ自首しようと寝室を出ると、そこには椅子に座る妻がいました。
「もー、バラバラにするなんて酷いじゃない」
「繋げるの大変だったんだからね」
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