繁華街のトイレ

 栄えた繁華街、ネオン煌めく町の真ん中に場違いとも思える汚い公衆トイレがある。

 何度も市は撤去計画を立てたが、周辺住民や店主達の猛烈な反対によって計画は立ち消えになっている。

 あのトイレには何かあるのか? 不審に思った市の担当者が周辺住民に聞き取り調査を行うと、二つのことがわかった。


 一、あのトイレの奥から二番目の部屋に深夜0時に訪れると何かが起こる。

 二、この辺りが栄えたのは全て、その何かのお陰である。


 何かとはなんなのか、誰に聞いても答えをはぐらかされた担当者は、その何かとはどういったものなのかを知るために自分の目で見ることにした。

 深夜0時、担当者は奥から二つ目の部屋の便座に座り"それ"が起こるのを待った。

 深夜1時、一時間待っても特に何も起きない。間違っていたのか、それとも嘘を吐かれたのか、職員は諦めて公衆トイレから出た。


 翌朝、市の担当者が出勤することはなかった。

 公衆トイレの撤去計画はそのまま立ち消えになり、今もそのトイレは繁華街の真ん中に一つ立っている。

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