第24話 ヤバイヨヤバイヨ

 3人の元へと飛んだ。


 よしよし、3人とも一纏めになって戦っていますな。

 ブルーの指揮ですな。これは。


 馬と牛に斧でも……はっ!

 ピンクの斧を見られたら、ブルーに馬鹿笑いされてしまう!


「ピンク! バリヤーを張れ! マジカル・オルゴール――」


 あたしの存在に気づき、用心して距離を取る牛と馬の鎧ネクライマー。

 だが、その距離は短すぎるのではないかね?


「――・エア・ブラストー(略してMOAB・大規模爆風兵器ではない)」 


 炎と爆風が鎧ネクライマーを飲み込んだ。


「きゃー!」

「キューティー・マジカル・ピンクウォール!」


 マジカルキューティは妹のバリヤーがあるから平気さ!


「マーゾックに破壊された町をさらに破壊したニュ! あ、何をするニュー!」


 UMAかが詰め寄ってきたので、爆炎の森に放り込んでおいた。


 こんもりとした炎の森より飛び出す影が二つ。

 いや、影と見間違うほど焦げているのは、牛と馬の鎧ネクライマーだ。


「お姉ちゃんが来たら、一気に形勢逆転ね!」

 妹に褒められた。なんだか心はポカポカするよ!


「認めたくないけどね」

「危ないトコやった!」

 ブルーとレッド、いたのか?


「3体相手だけど、とどめ刺す?」


 新必殺技は強力だけど、効果範囲が狭い。今までのようにネクライマー1体を相手に戦ってた時はこれで良かった。

 しかし、複数を相手にする時は欠点となる。それが弱点となる。


 だから、どうすると聞いたのだ。 


「せっかくダメージを与えたんですもの、追撃を掛けるわ!」

 ブルーが本気を出してきた。


「フフフ、そう来なくては」


 戦い方によって、1体ずつの各個撃破に持って行ける。


「馬からや!」

 レッドはもう走り出している。


 こいつを囮にして、牛から片付ける事にしよう。  



「一旦引け! 体勢を立て直すぞ!」

 声は近くからではない。だのに、はっきりと聞き取れた。


 やる気満々の前傾姿勢だった馬と牛が、背を伸ばした。

 お互いの課を見合わせ、軽く頷くと、後方へジャンプ。


 ……ジャンプが低い。手傷を負っているのか、ダメージがあるのか。

 何にしろチャンスだ。


「追い打ちをかける!」


 怒濤の追撃戦が始まった。

 マーゾックは広範囲に破壊活動を勤しんでいた模様。あたし達は瓦礫の中を走る。


「ハートフル・セラピー・なんとか・エクスプロージョンを撃てるか?」


「ハートフル・セラピー・レインボー・エクスプロージョンよ! だめね。左右への揺さぶりが上手いわ」


 ブルーの判断は正しい。

 牛と馬の逃げ足は速くない。それはハートフル・セラピー・なんとか・エクスプロージョンを撃ち込まれないよう、ジグザグに走っているからだ。


「もうちょっとで追いつくし!」

 レッドがっまえに出ようとした時だった。


 左右から強い殺気を感じ取ったのは!


「飛べ!」

 その一言だけで、3人はばらけて飛んだ。


 あたし達が走っていた場所に、闇系の砲弾が撃ち込まれていた。 


「あぶねー!」


 それぞれ着地。その場にて状況確認。


 左右に高く積み上げられていた瓦礫。

 左から、鎧ネクライマーが姿を現した。

 数は4体。


 個性はあるが全部、鎧のネクライマー。


 兎の長い耳を装備した鎧は弓を持っている。こいつか? 撃ってきたのは?

 竜を模したヘルメットに鱗の鎧は、槍を手にしてる。

 蛇っぽい鎧はバランスのとれた体躯と鎧。手には諸刃の剣。さしずめ騎士だな。

 猪は馬と同じでかい剣とごっつい装甲の女の子。重戦車だな。


 全部色が違う。


 竜と蛇と猪が、瓦礫の山を駆け下りてきた。

 兎が弓を連射してくる。


「キューティ・マジカル・ブラックウォール!」

 反射的にバリヤーを張った。


 バリヤーに触れて矢が爆発。爆薬を仕込んでるのか? 危ないぞ!

 ええい! 待ち伏せとは小賢しい!


「右へ寄れ!」

 背後を瓦礫に守ってもらおう。


「あかん! 右もいよるで!」


 右にも4体。


 鼠を模した女性型の重戦士。猪と同じ装備だ。

 虎を模したヘルメットを被るのは女騎士。くっ殺せ!

 猿面を付けた鎧。イメージは騎士。

 忍者隊みたいな鳥の顔。背中に折りたたんだ翼と弓を装備。兎の女性型だな。


 これも全員色が被ってない

 ……犬がいたら12支じゃん。ワザと?


 左と同じ戦法。刃物持ちが接近戦を挑んでくる。鳥のアーチャーが弓を射掛けてくる。


「キューティー・マジカル・ピンクウォール」


 右は妹に任せた。なにせ、あたしら姉妹は、同タイプのマジカルキューティだからね!

 使う技も一緒なのさ!


 だがこの状況はまずい。ザコに毛が生えたネクライマーでも数が数だ。

 レッドとブルーは見捨てるとして、妹に危害が及びかねない。


 こんな連中、アブソリュート・ゼロ・マイナスなら一撃なんだけど、その破壊範囲を考えると使えない!


 妹たちまで巻き込んでしまう。

 他の技も、タメが必要だったり高速で動き回る敵を撃ち漏らしたりする。


 混戦とか包囲戦にとことん弱いという、弱点に気づく結果となった。

 

「一旦下がって体勢を立て直しましょう!」

 ブルーが良い事を言う。


「ここはお姉ちゃんが殿を受け持つ。後退しなさい!」


「あかん! 後ろに回られた!」


 重戦士型の鼠と猪が退路に立ってる。   

 虎と蛇の騎士型が突っ込んできた。

 竜と猿もだ!


 突破口は――、少しでもダメージを負わせた馬・牛・羊の逃げた前方!


「前だ! 前に進め!」


 レッドとブルーを真ん中にして、妹とあたしのバリヤーで守る。

 マジカルキューティは一団となって前へと走った。


 あ! まずい!

 走る方向に、大きな闇の気配がする!


 感ずくのが遅かった。

 前方より、漆黒の高エネルギー迫る。マジカルキューティに直撃。


「きゃーっ!」

 悲鳴が上がる。


 妹とあたしのバリヤーが無ければ、変身が解けていただけでは済まないダメージを食らっていただろう。


「マジカルキューティ、恐るに足らず」


 前方で腕を組んで立つ男。

 顔の真ん中を横一文字に走る傷。

 獰猛な笑みを浮かべ、天敵であるはずのマジカルキューティを獲物として見ている男。


 マーゾックだ!


 狼男を控えさせ、左右前方に鎧ネクライマーを配置。

 馬、牛、羊さんに加え、犬面の侍型が加わっていた。


「俺の名はナグール。この世界を闇に染める者だ。そしてサタノダークの兄である」


 そうですか、ご兄弟ですか。


「ブラックキューティはだれだ?」

 答えてやる必要は無い。 


 先頭に出たあたしは、妹を背後へ押しやる。レッドとブルーの間へ押し込んだ。


「囲まれてもうた!」

「情けない声を出すな、レッド!」


 囲まれた。

 羊と牛と馬は囮で、マジカルキューティをここへおびき寄せるのが役割。


 この戦術、どっかで見た事ある。


 ……釣り野伏だよね?


 こいつら、戦闘民族か!

 もとい、あの自信! 敵は勝利を確信している。






 でもさ、最も大きな危険は、勝利の瞬間にあるってさ。知ってた?



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