第4話 法則に逆らうお姉ちゃん
さて妹たちは?
部長級には丁寧にご退場願ったのだ。課長級三幹部ごとき相手に……。
何か押されてない?
もうキューティバトンを手にしてるよ! あれは戦闘シーンの後半、20分過ぎで使うアイテムなのに!
「ほーっほっほ! このマーゾン空間では、あたし達マーゾックのパワーは3倍に増幅されるのよ!」
「3倍のパワー! 思い知れっ!」
「マーゾン空間に飲み込まれる戦略。早く使っていれば良かったと後悔しております。さあ、三人で力を合わせて魔獣ネクライマーの召還です!」
素体となったのはドイツ製の丸っこい車。
ギュルギュル、ギチギチと甲虫的な音を立てながら、ゴリラとカブトムシが合体して蛸が食べてしまった様な何とも言えない外見をもった魔獣が現れた。
「キジャベチャー!」
渦を巻くマーゾン空間の入り口を背負っているせいか、キマッてる! 覚醒された元気さだ。
こいつにもマーゾン空間より暗黒のエネルギーが供給されている。ワイヤレス充電式のスマホか!?
「ギャース!」
タコ足の生えた爪(普通逆じゃん)が振り下ろされる。軌道を見切ってかわすマジカルキューティ。
だが、パワーが見切りの距離を狂わせた。
地面へ着弾した直後、衝撃波が発生。アスファルトに亀裂を入れ、衝撃波が拡散される。
それが影響し、マジカルキューティ達はバランスを崩す。
そこを逃さず、ネクライマーより連続攻撃が入る!
ピンチ!
「キャー!」
不可視の便利障壁が、かろうじて彼女たちの身を守る。
危ない! マジカルピンク! と、その他2名!
「いま、お姉ちゃんが助けに……くっ!」
だめだ!
わたしのダーク・エね……もとい、マジカル? エネルギー的な? は、回復していない。
身体が重い。情けないが、ショタノダーク? サタノダーク? の攻撃を受けて、生きてるだけマシというもの。
このシーンは今まで通り、マジカルキューティ第一期生達にがんばってもらうしか、手は無い!
「ちくしょう! わたし達の攻撃が通じへん!」
「諦めては駄目です! いまネクライマーの弱点をサーチしています。もう少し時間を!」
「少しずつでも攻撃を当てていきましょう!」
前向きな妹は――可愛く飛んだり、セクシーに身を捩って跳ねたり、ミニのフレアスカートを翻してかわしたり、――健康的に躍動する!
ダーク・エ……もとい、あたしもクライマー空間でエネルギーを補充と考えたけど、ここは通常空間。100メートル向こうからがクライマー空間。手が届かない。残念!
自然回復を期待して、妹たちの活躍を応援することにした。今までと一緒だ。
……いや、よく考えたら、それは違う。
今までは見つからないよう、遠くから見ていた。
ところが! 今はすぐ近くで観察できる! 砂かぶり席で子細にわたり観察できる!
すてき!
寝転がっているからだろうか?
ローアングルで妹たちの活躍が……ローアングルで……。
こう……マジカルキューティのコスチュームってミニスカートなんだよね
フレアタイプの。ご丁寧にペチコート付きの。
白いの? クロッチ? 太ももの筋肉が浮かび出るたびに、逆三角形底辺襠部位の縦筋と横筋が……。
立体?
むくり。
腹筋だけで上半身を起こす。
「気持ち悪い動きだニュ」
エネルギーチャージ完了。体力回復。
なぜ?
「これは神が与えし奇跡か? いやヒカリーナ様の存在を近くに感じる」
「ヒカリーナ様は近くに居ないニュ! お姉ちゃんはダークエネルギーを使う邪悪存在だニュ。さっき、お姉ちゃんの中で邪な感情を検知したニュ。痛い痛いニュ! 脳が、脳が歪むニュ! ああ、変な幻影が見えてきたニュ!」
気がつけば、聖なる力が戻っていた。
となると、問題は、マーゾック共の背後で渦を巻くクライマー空間。敵のエネルギー供給源。
でかいのよね、あれ。魔獣ネクライマーなんか、あの空間に比べると小さい小さい! 豆粒みたいな大きさ。
邪眼……聖なる心の眼差しで見たところ、あの空間は不安定だ。大きなショックを与えれば崩壊するだろう。
ネクライマーは妹たちに任せるとして、空間はあたしが引き受けよう
試したみたい大技がある。妹を守る聖なるパワー「それは邪悪な、痛い痛いニュ!」を手に入れた時より構想を練り続けていた大技だ。この力を使ったら、出来るんじゃねぇの? と、ふと思った位の単純な技。
それにはいくつかの行程と、それにかかるわずかばかりの手間と時間が必要だ。
左手を挙げる。
黒水晶の溢れる巨大なパワーを微細にコントロールして、とある空間をこじ開ける。
あたしがマイナスの海と呼んでるエネルギーの世界。おそらく、この世界とは対になっている世界だろう。
右手を挙げる。
そこから汲み出したエネルギーを加工・偏向し、照準を合わせたポイントで顕現するようコントロールする。
準備完了! マジカルキューティにそのことを告げる。
妹以外は巻き込んでもかまわないが!
「みんな! 危険な大技を使うわ! そこから離れて!」
わざわざ言ってみせた「危険な大技」というワードの意味を察し、あわてて射線上から散開し退避するマジカルキューティーズと、なぜかキューティズ達より素早く退避するマーゾック三幹部。
ゆっくりと合わせつつある両手が、黒と白の光を発し始める。
時は来たれり。
『アブソリュート・ゼロ・マイナス!』
ギャン!
金属的な発射音。
白と黒の光が捻れ、太くなりながら伸びていく。
ネクライマーごと、マーゾン空間を包んだ二色の光。
神経に障るほど質量感溢れる、ちょい高音の爆音。
地響きにより、近くのビルが3つばかり崩れた。
対象物のエリアを大きくつつむ、マーブル状の光球が形成される。
ああ、大きすぎる!
いや、ほんと、ここまで大きくするつもりは無かったのに!
マーブル状の光の中で、対象物とそれ以外の巻き込まれた物体が、すべてミラーコーティングされていた
ぶっつけにしては、計算通りの効果なんだが、妹が巻き込まれそうだ!
あたしは、範囲を減少させるのに力を消費した。それはもう、これ以上無いほど必死で!
ズォ!
爆発の時、大気が苦痛の唸り声を上げた。
対象物はすべて「内側」に向け崩壊。現象としては爆発とは正反対のシークエンス。
爆縮っていうの? この世から対象物がすべて消えた。
「え? 空間ごと破壊されたニュ?」
――アブソリュート・ゼロ・マイナス――
絶対零度以下の温度を生み出す大技。
それはダークマターの性質を持つ絶対破壊技。
うむ、想定以上の破壊力だった。
あと……、
変身するの忘れてた。
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