第5話 ; 変わったこと

 変わったこと。真っ先に思いついたのは、“死”について考えることがバカバカしくなったということだ。もう少し深く言うと、小町の体験を経て生命って、命ってあんなにも小さくてすぐに無くなってしまうのに、どうして生きていられる自分が“死ぬ”なんてことを考えなくちゃいけないのか。人生色んなことがこれから待っているのだから、楽しまなくてどうする。そう思えるようになった。

 そして家族から言われたのは、ゲームでイライラして声を出したとしても、その後に不機嫌になる回数が減った、ということだ。どういうことかと言うと、例えばゲームで勝てそうな展開だったのが突然の変化などで負けてしまった。あそこでヘマしなければ勝てたはず。そうして負けた瞬間に感情が爆発して声を出すのだが、以前だったらそのまま物に当たったり、家族に当たっていた。しかし小町のあの体験から少しずつ、本当に少しずつだが減っていっていると言う。俺自身も家族に迷惑をかけないように普段から意識するようになったが、まだまだ幼稚みたいで高校生である現在でも全てを無くすには至っていない。でもその努力は確実に実っていると姉貴は言う。

 さらに挨拶をすることが増えたとも言う。おはよう、おかえり、おやすみ。何気ない挨拶だが、「慧斗はいつも返してくれるから、お姉ちゃん嬉しい」と姉貴は言い、兄貴はそんな姉貴を横目で見ながら笑みを浮かべていた。これも俺にとっては無意識だが、家族がそう言うならそうなのだろう。

 そして、小町を撫でる時は優しく、優しく撫でること。感情に流されて強く押さえつけないこと。その意識が実ったのか、小町は度々夜に俺の布団で一緒に寝てくれる。可愛い寝顔を見ながら寝られる夜は最高だ。


 これだけかと思う人は思うかもしれないが、俺にとっては大きな一歩だ。


 俺は、生きたい。


 そしてここから俺の新しい生活が始まった。

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