第4話 : うめき声
小町はとても臆病な猫。それが第一印象だった。小さな物音にもすぐに反応して遠くへと駆け出した。誰にも寄り付かなくてどこか一匹オオカミのような姿だった。猫に狼という表現はどうかとも思ったが、当時の自分の率直な感想だ。
そして獣医さんに連れて行き、およそ生後3ヶ月の子猫であることが判明した。
そんな期間が続いてようやく人間に慣れてきた頃、俺にとっての転機が訪れる。
慣れると言っても、やっと同じ空間にいられるようになっただけだがある日、俺はいつものようにゲームをしていた。小町が家に来てから家族の雰囲気は和むことが多くなったが、相変わらず俺のゲームに対しての暴言で空気を悪くしていた。そしてまさしく誕生日が近づいていたこの日。またゲームにムカついてイライラしていた時、小町が近くを通り過ぎた。俺は撫でようとしたけど、半ば八つ当たりのように強く小町の胴体を押し付けてしまった。
そう、俺にとってはほんの少しのつもりだった。でも違ったんだ。
小町は苦しそうに「グゥ」と低いうめき声をあげた。そしてそのまま俺を見上げた。
2キロにも満たない子猫の目は「生きたい」と訴えているように見えた。
あぁ、こんな簡単に命は消えるのか。
たったひと握りで、死んでしまうのか。
たった、たったひと握りで。
まだ11年しか生きていない当時の俺だったけど、初めて「生きる」ことの尊さを知った瞬間だった。
そして、俺は12歳の誕生日を迎えた。
それから、俺の日常は変わっていった。
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