エピローグ ; 今を生きる俺
じっと息を潜めて目の前に集中する。
床に這いつくばるように体をうつ伏せにして顔だけ前に向ける。そして目の前には白くてモフモフな猫、小町が薄く目を閉じて香箱座りをしている。
たまには我慢大会でもしてみるかと思い、モフモフと撫でずにじっとにらめっこしてみるが、結果は俺の惨敗。何故かと言うと、小町はそもそも相手にしてくれなかったからである。
ま、それでも可愛いからよしとする。
そんな時、ふと小町が立ち上がって棚の上に上がった。彼女が歩くその奥には数々の写真が飾られていた。
小学校を無事に卒業して中学生になり、親友と一緒に入った卓球部で大会に出た時の写真や遠くにいる親戚と一緒に撮った写真。
俺の中では中学生時代もそこそこ波乱万丈だった気がする。といっても小学生の頃とは少し違うが、何せ中学入学後に始めて受けた試験で下から数えた方が早いという順位を取り、自分の学力に絶望した。せめて兄貴と姉貴以上の順位と成績は取りたかったが、それは叶わなかった。
その時に自分の中でスイッチが入ったらしく、それから自分なりに勉強方法を工夫したり、集中する時間などを決めて取り組むようになった。とこんな感じで書けばいいように聞こえるが、俺の中での感覚はゲームの休憩に勉強をするという感覚の方が近かった。しかし、そんな生活リズムになってから俺の成績は見違えるように上がっていき、中学3年生になった頃には、俺の成績は上位層に食い込むようになった。そして、高校受験では塾の先生や担任の先生にも厳しいのでは言われた県内有数の進学校に合格することができた。
そうして現在は高校生活を送っているわけだが、そんな俺に悩みができた。
勉強のやり方はなんとなくだが掴めた。しかし兄貴や姉貴を見ていて思うのが、社会に通用するコミュニケーション能力が俺には欠けているように感じてならなかった。
誰かに何かを分かりやすく伝える、周りを笑顔にできる会話回し。これだけではないが、兄貴と姉貴を見ていて自分には明らかに足りないと感じるようになった。
でも悩みが見つかるたびに思うのは、こうして悩めることは当たり前じゃないということ。生きてるからこそ、悩んで、苦しんで、でも解決した時に嬉しいと思える。今度も頑張ろうと思える。
あの時、もし自殺なんてしてたら。
でも、最近はそんなことも考えなくなった。
俺が生きているのは「今」で「過去」じゃない。俺には上手い言葉回しや表現はできないが、その表現が俺の中では1番しっくりくる。
小町が身をもって教えてくれた、生命の尊さ。
今を精一杯生きること。
それがきっと小町への恩返しになる。
ありがとう、小町。
俺、精一杯生きるよ。
154㎝の俺と26㎝の猫 完
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