第2話;学校脱走
ゲーム漬けの夏休みが終わった。
母さんを泣かせてからというもの、基本的な話しはするがその他はずっとゲームをしていて、姉貴と兄貴は部活動で忙しくあまり口を聞くことはなかった。口をきいたとしても俺がゲームにキレて姉貴がそれに対してひどく怒って喧嘩になったくらいだ。
少しづつ家族と距離が離れていくのが分かった。このままずっと離れていくのだろうか。
そうして学校が始まり日常を過ごしていく中で、ついに俺の中でネジが外れた。
授業参観があった日。午後からあるということでクラスメイトはそわそわしていた。
保護者が学校に来るということで担任もいつもと違った。
「なんでやってこないの?」
前日までやってこなくてもいいと言っていたものに対して、突然提出を求めてきた。もちろん、クラスメイトもやっていない。だが俺だけ呼ばれて俺にそう言った。ひどい顏でただただ俺を叱り、給食の時間、昼休みも潰された。
もう、耐えられない。
気がついたら俺は学校を飛び出していた。そう授業参観が始まる前の昼休みのこと。一心に学校を抜け出し家に帰った。普段なら昼間はみんな出払っていて鍵は閉まっていたがこの日はラッキーなことに中学生の兄貴が試験期間中で早く帰っていた。家でテレビを見ていた兄貴は血相を変えて帰って来た俺を見て驚きの表情を見せたが、それも一瞬の話し。
「お帰り」
ただそう言ってすぐに視線を戻した。その時の俺にとってそれはとても救いだった。
一方で母さんは息子のいない授業参観に参加し、PTAの保護者会にも参加して帰ってきた。この時のことは詳しくは覚えていない。それほどまでに衝撃的だったのか、思い出したくないのかはわからない。けど母さんがいったこの言葉だけは覚えている。
「慧斗は慧斗よ。他の誰でもないから」
俺って一体なんだ。
そしてそれからというもの、俺は度々学校を休むようになった。学校に行くのが怠いのが半分、担任と顔を合わせたくないのが半分。母さんと一緒にスクールカウンセリングを受けに行ったこともあった。だが、俺が変わることは何一つなかった。
生きるってなんだろう。そんなことを本気で考え始めた秋。実は俺の誕生日が迫っていた。頭を過ぎるのは夏休みに散々悩んだ自殺のこと。果たして俺は12歳になれるのだろうか。
そんなある日の夕方。庭に面した窓にふと白い影が映った。
目をよくこらして見てみる。
するとそこにいたのは、小さくて、白くて、でも薄汚れている子猫だった。
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