葡萄酒はキケンな恋の香り
秋の夜長は月を楽しむのにもってこいの季節でございます。空気が澄んでいるからか、よりくっきりクリアに美しく輝いている月でございます。
「玉ちゃん」
ヴィレッジさまーの玉子さまのお部屋の外から光る君が話しかけられます。
「はい?」
今日も花子さまとの穏やかな夕食をお済ませになり(お献立は海老のあんかけつゆそばと杏仁豆腐でございました)、玉子さまはお部屋に戻っておいでのようです。
「今年のボージョレーヌーボーが手に入ったんだ。一緒に飲もうよ」
「えっ?」
未婚の女性の部屋に男性がしかも夜に訪れるなど「非常識」なことでございます。おつき合いしている彼氏でもまずは御簾や几帳などの物越しの対面ですし、夜ともなればそれは相当お付き合いが深まっている仲ということになります。
「ボージョレーヌーボーってさ、キミみたいにフレッシュで若いワインなんだよ。一緒に飲みたくてさ」
ワインボトルとワイングラスを2脚持った光る君は平然と玉子さまのところにまでやってこようとしています。
「えっ? あっ、でもっ!」
親子といえど、父と娘というように異性同士であれば顔など合わせません。夜にふたりきり同じ部屋にいるなど「異常事態」でございます。
玉子さまはあわてて几帳の後ろへと下がります。
びんっびよぉぉぉぉん
いつもは雰囲気ピッタリのBGMを奏でる源ちゃんズですが、今日は違うようですね。わざとおかしげな音を出しているようです。
「御簾や几帳があったら一緒にお酒なんて飲めないじゃん?」
聞き苦しい楽器の音にも光る君はめげません。
「でもっ、でもっ!」
御簾を上げて部屋に入ってきた光る君は几帳もどかしてしまいます。
「カタいこと言わないの」
玉子さまのお顔を初めてみた光る君はうわ、と感嘆のため息をもらします。
豊かに波打つ黒髪に戸惑う大きな瞳が揺れて煌いて見えます。
「やっぱりね、思った以上の美人さんだ」
玉子さまのお隣に座ると、いと優雅にワインボトルを開けられます。
あの、とおずおずと声をかけようとしている玉子さまのSKJを光る君が目で制します。
とくっとくとく、とワイングラスがボルドー色に染まります。
「大丈夫だって。一緒にワイン飲むだけじゃん」
ワイングラスを玉子さまに差し出されます。
~ 夕ちゃんに 繋がりがある かぐや姫
出会えた奇跡 キミとカンパイ ~
「それ以上はしないって」
そんなことをおっしゃりながらも光る君は玉子さまのお手をとります。
「こんなに綺麗なコに゛キレイ゛って言って何が悪いの?」
お次は玉子さまのあごへと手を伸ばそうとなさっています。このままでは必殺あごクイになってしまいそうです。
ひひょぉぉぉぉん
ぷぉろろろろん
源ちゃんズなりの妨害です。なんとも耳障りな音でございますね。
「もうさ、おまえたち帰っていいよ。俺今日は泊ってくから」
ひぇぇぇぇっ!
玉子さまのSKJたちが思わず声をあげます。そしてあわただしくどこかへと駆け出します。どなたかに
ふゅぃぃぃぃぃぃい!
ぎゅろろろろろろん!
ばらんばらんばらん!
源ちゃんズも必死の抵抗です。こうなればふたりの雰囲気をぶち壊すしかありません。
「うるさすぎ。いい加減にしろよ?」
光る君は源ちゃんズのところにまで来てそうおっしゃいます。
「いい加減にするのは誰かしらね?」
夜だというのに急激に光が差し込んできます。矢のように降り注ぐ光であたりは白く輝いてまいります。庭の木も花も見えるはずの建物までもがその白光色によって形を失っております。
室内でも気づく外の異変に光る君も玉子さまも源ちゃんズも、助けを求めようとあたふたしていたSKJたちも庭に面する簀子縁まで出てきます。
「お久しぶり。ほんっとに相変わらずなのね、アナタって」
白く煌く光の中のこれまた光り輝く輿から降りてきたのは……
「ふっ! 藤ちゃんっ!!」
!!!!!!!!!!
元祖かぐや姫藤子さまでございます。
月から緊急出動でございます。
今夜のパレス六条は波乱の予感? でございますわね。おほほほほ。
♬BGM
怒りの日『レクイエム』より ヴェルディ
✨『げんこいっ!』トピックス
この日、源ちゃんズによる玉子さまファンクラブ発足
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます