月下のお裁き桜散る
「ふっ! 藤ちゃん? ほんとに藤ちゃん?」
目の前の光景が信じられない光る君でございます。
「ふじちゃん……。戻ってきてくれたんだね」
光る君の頬を涙がつたいます。
桜の花びらがどこからか舞ってまいります。ゆらゆらと。光る君の幻想でございましょうか。ちなみに今は秋、でございます。
「なに感極まってるのよ。アナタはちょっとそこに座ってて」
簀子縁から
「な……?」
戸惑う光る君。手入れの行き届いた白砂の庭を指さす藤子さま。
「弦一郎」
藤子さまは源ちゃんズをお呼びになります。
「はっ!」
弾かれたように弦一郎が藤子さまの御前にかしづきます。
「紫子さんを呼んでいらっしゃい。紫子さん付きのSKJもね」
「かしこまりました。ただちに」
忍者のように弦一郎が駆けてゆきます。
「藤ちゃん、何すんの? ふじっ」
いとも優雅に手を上げた藤子さまが光る君のお言葉を封じます。
「アナタはこれでも食べてて」
藤子さまは光る君の口にカカオ95パーセントの超ビターチョコを放り込みます。
びゅううううっと風が音を立てます。
白砂の庭の片隅にあら、竜巻?でしょうか。小さめのサイズではございます。
「弦二郎は花子さんたちヴィレッジさまーの皆さんを、弦四郎はヴィレッジういんたー、管三はヴィレッジおーたむの皆さまをお連れして。管二は桐山を呼んできて。弦三郎、膳介や甘介などパレスの従者すべてに声をかけて」
「「「「「はい、よろこんで!」」」」」
藤子さまはテキパキと源ちゃんズに命令をなさいます。源ちゃんズはあっという間に広い御殿に散っていきます。
「藤ちゃん、これ薬みたいに苦いんだけど」
藤子さまが地球を離れる折、置き土産のチョコを甘介が研究、アレンジし、いまやチョコに関して口が肥えた光る君のようですわね。藤子さまは人差し指で光る君の言葉を制します。
「管一」
最後に残っている管一に藤子さまはお声をかけられます。
「はいっ!」
待ってましたと管一は藤子さまの前で膝まづいて指示を仰ぎます。
「みんなが揃うまで何か吹いてなさい」
藤子さまは管一が手にしているサックスを指さされます。
「はいっ!」
管一のサックスソロが響きます。
これからの展開を予測するような不安げなメロディを即興でジャズアレンジしながらの演奏です。管一のキャラクターだからでしょうか、短調の曲にもかかわらずどこか明るくも聴こえる調べに合わせるかのように桜が踊ります。
煌々と輝く月からの灯りが管一を照らします。
何の演出なのでしょう。秋なのに散る桜吹雪。
お裁きと言えば桜吹雪ということなのでしょうか。
「さあ、じゃあはじめましょうか。光る君」
「な、な、なに始めんの。藤ちゃん」
「玉子さんはアナタの元カノ夕子さんのご親戚よね?」
「そうだよ」
「神隠しにあった夕子さんのかわりに親代わりとしてアナタが引き取ったのね?」
「よく知ってるね。藤ちゃん」
「夕子さんの分も幸せにしてあげようと玉子さんにふさわしいお婿さんを探しているのよね?」
「すごいね、藤ちゃん。どこかから見てたの?」
「アナタは玉子さんの父親代わり。そうね?」
「そうだね。こんな綺麗な娘ができて嬉しいんだ、って藤ちゃん?」
「父親であってアナタはお婿さん候補でもなければ恋人でもない。そうよね?」
「!!!!!」
光る君は息をのまれます。
「そうよね??」
(【超訳】ふたりでワイン飲んで手を握ってあごクイするってどうなのよ?)
天の声とも言える声が光る君に聞こえてくるようでございます。
「……うん」
「言いたいことわかる?」
(【超訳】いったいいつまでふらふら浮かれてんの?)
光る君の顔色が蒼くなっていくようですわね。
「……うん」
今回ばかりは藤子さまの超訳が光る君に伝わったようでございます。
ぞろぞろと呼び出された皆さま方があつまっていらっしゃいます。皆さまには何が始まっているのかわからないようでございます。
「桐山、お久しぶり」
「これは藤子さま。お久しゅうございます」
庭先に立たれている藤子さまに後光のように月の光がさしております。天女のような装いの藤子さま。紫子さま始めパレス六条の皆さまは簀子縁や
「皆さん、急にお呼び出ししてごめんなさいね」
「地球ドライブのついでにお邪魔したの」
「パレス六条は素晴らしい御殿ね」
天女さまが皆さまに語りかけられます。
「せっかく同じお屋敷に住んでいるのだから仲良くすればいいと思うのよ」
「たまにはこうして集合すれば、皆親しくなれていいんじゃないかしら?」
確かにこのように全員が集まることなどございませんでした。
「おっしゃるとおりでございますわね」
状況は把握できないながらも紫子さまがお答えになられます。
「何かのご縁で皆
藤子さまは続けられます。
「おっしゃるとおりでございますわ」
すぐに雰囲気に順応した花子さまがにこやかに同意なさいます。
「明るくオープンにしておけば隠し事もできないでしょうし」
ちらっと光る君に視線を向けられる藤子さまでございます。
「おっしゃるとおりでございますわねっ」
事態はわからなくとも"カクシゴト"に敏感な明子さまも何度も縦に首を振っていらっしゃいます。
「ここにいる皆さんを幸せにしてさしあげないといけないわよね。そうよね? 光る君?」
「そうだね」
「全員よ」
「そうだよね」
「そのために一緒に住んでいるんでしょ?」
「そうだよね」
うんうん、と納得の表情の光る君でございます。
「みんなあなたを慕っているのだから幸せにしてさしあげてね」
光る君は立ち上がり、右手を左胸にあてられます。
「わかったよ。藤ちゃん」
藤子さまは優しい微笑みを浮かべられます。刹那見つめ合い、少し、ほんの少しですけれど藤子さまは寂し気なご様子に見受けられます。
「わたくしも住んでみたかったわ」
そうおっしゃると、藤子さまは茶目っ気たっぷりにウインクなさいます。おじゃましたわね、これみんなでどうぞとお土産をお渡しになります。こちらはチョコレートケーキの王様、ザッハトルテでございますね。
「あら、そういえば夕くんは?」
パレス六条にお住まいの方々全員を呼び出したはずですが、夕さまがいらっしゃいません。
「お仕事に専念されていらっしゃいますわ」
花子さまがお答えになります。宮中での
「会ってみたかったわ。残念ね」
小さく舌を出して藤子さまは微笑まれます。
「またね。今度は一緒にお月見でもね」
光る君にそうお言葉をかけられます。
光輝く輿にお乗りになられる藤子さま。それと同時に今まであたりを煌煌と照らしていた白い光がさらにいっそう光を放ちます。目を閉じていても、手で顔を覆ってもその明るさを感じ取ることのできる明るさでございます。やがてその光を感じなくなり、元の夜陰の暗さが訪れます。
「まっ! 待って藤ちゃん!!」
「ふじちゃん……」
「ふじ……」
紫子さまたち
「殿」
弦一郎が光る君に話しかけます。
「よかったら今夜は僕らの詰め所にいらっしゃいますか?」
月を見上げていた光る君が振り返ると源ちゃんズが7人揃って控えております。
「朝までつきあいますよ。殿」
管三が微笑みかけます。
「こんな日は野郎だけで盛り上がりますか!」
誰のセリフかもうおわかりですね。
「みんな……」
従者である源ちゃんズは光る君のもっとも近くにいる友人でもあり兄弟でもあるのかもしれません。
終わりよければすべてよし。
本日もパレス六条やはり平安、なのでございます。
♬BGM
ワルキューレの騎行 ワーグナー
✨『げんこいっ!』トピックス
🎻源ちゃんズ詰め所にて
光る君「お前たち、いつもここで飲んでんの?」
弦二郎「たまにですよ」
弦一郎「ああ、急だからツマミが間に合わないな。チーズの盛り合わせにオリーブのオイル漬けは冷蔵庫にあったな。それからキャビアはクラッカーにのせて……、あ、バーニャカウダはすぐできるな」
管二 「それだけあれば十分じゃねぇの?」
光る君「ボージョレーが無駄にならなくてすんだよ」
管一 「野郎だけの飲み会もいいもんっすよ」
弦一郎「ピザでも焼きますか? 生地仕込んで。それとも生パスタの方がいいですか?」
光る君「お前って、ナニモノ?」
管三 「まあ……、いいんじゃない?」
🌻ヴィレッジさまーにて
花子さま「紫子さま、よかったら寄っていかれません?」
紫子さま「ま、嬉しいわ。では明子さまもよろしい?」
花子さま「もちろんよ。SKJのみんなも誘いましょうね」
紫子さま「せっかくのパレス暮らしを楽しまないとね(^_−)−☆」
明子さま「強く楽しくたくましく、ですわよね(^_−)−☆」
紫子さま「いただいたチョコのケーキ、みんなでいただきましょ」
SKJ48「「「お茶のお仕度いたしますねっ」」」
☆その三 仁義なき 戦い裁き 平安なり? fin.
Next その四 君だけに 誓うLovingYou 永遠に
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