SKJセンターは誰?

 さあ突如始まったSKJ総選挙のお話の続きでございます。

 投票日に向けて各陣営とも票読みに余念がありません。事前に誰が誰に投票しそうか予想が始まりました。

 

 まずは源ちゃんズメンバーでございます。

「弦一郎さんはうめさんで決まりよね」

 すぷりんぐ陣営のいちごが社員名簿の弦一郎にはなまるをつけます。

 弦一郎はうめと夫婦ですからこの票は確かにカタいですわね。


「弦二郎さんは?」

 いちごがももに尋ねます。弦二郎はももの彼氏です。

「ん――、でもずんださんが……」

 さまー代表のずんだが弦二郎の姉なのです。ここは票が読めませんね。


「管一くんはどうなの?」

 今度はももがいちごに聞いてきます。誰かさんによく似た恋多きチャラ男の管一ですわね。

「どうっかなぁ。きなこさんもいるし?」

 いちごは筆を口と鼻にはさんで頬杖をついています。

「じゃ、お互いうめさんに投票してもらえるように運動しましょ」

 お互いの彼氏に協力を求めることで決まったようでございますね。


「管三さんは入れてくれますよね?」

 ういんたー陣営も票を読みます。マイホームパパの管三の奥さんはういんたー陣営のほたてですからここは間違いないでしょうね。

「弦四郎くんってどうかな」

 今度はほたてが問いかけます。そうです。弦四郎といえば、ここういんたー陣営のあさりに片想い中の純情ボーイです。ですが、候補者さざえとは天敵? でもありますわね。


「管二さんはさまーよねぇ」

 すぷりんぐ陣営での票読みがまだ続いております。

 管二のふたりいる奥さんのひとりがあずきなのでさまーのずんだに投票が濃厚ということになります。ちなみにもうひとりの奥さんのぽんずは末子さまのSKJなので今回のオフィスパレスには関係がございませんわね。


「弦三郎くんってどうかな」

 弦三郎には奥さんやカノジョはいませんがパレス六条に関わる姉妹が3人おります。かりん、あずき、かえでの3人です。3人とも候補者ではありませんが、あずきがさまー陣営ですわね。


「ねぇ、チームサンセットって誰に投票すると思う?」

 すぷりんぐのももが危惧していることを口にしました。チームサンセットとは夕さまのSKJでございます。すもも、かりん、かぼすの3人です。元は葵子さまのSKJで、今は夕さまにお仕えしています。今回チームサンセットは候補者は出しませんでした。


「やっぱりずんださんに入れちゃうかしらねぇ……」

 夕さまがヴィレッジさまーにお住まいで、ふだんからチームさまーのSKJと関わりが深いでしょうから、ずんだに投票するのが自然でしょうね。

「3票も入っちゃうわよ。それに源ちゃんズの不確定メンバーだってずんださんに入れる可能性大ありだし」

 弦二郎と管一はうめでなかったらずんだのはずです。

 管二はずんだで確定でしょうし、弦三郎もずんだの可能性が高いですわね。

「ピンチ……?」


 ももがだんっと机をたたいて立ち上がりました。

「チームおーたむに応援要請よ!」

「それねっ!」

 チームおーたむも候補者は出していませんし、秋子さまは紫子さまと義理の親子関係でございます。


 チームおーたむに手紙を出そうとすぷりんぐのももといちごが手紙を持って渡殿わたどの(わたりろうか)を走ります。すると別のSKJも手紙を持って走っております。ういんたーのほたてとあさりでございます。見るとほたてたちもチームおーたむ宛ての手紙を持っているようでございます。考えることは同じようでございますね。


「そちらもおーたむにお手紙?」

「奇遇ですわね」

「こっちが先よ」

「早いもん順じゃないでしょ」

「こっちなんて紫子さまと秋子さまは仲良しよ」

「こっちだってこれから仲良くなるかもしれないし?」

 オンナ同士の言い争いというのはあまり聞いていて楽しいものではございませんね。


「皆さん、控えてください」

 突然建物の御簾内から男性の声がしてきました。家司の桐山ですわね。

「殿のいらっしゃる母屋リビングの前で何を言い争っているんですか」

 どうやら室内には光る君がいらっしゃるようですわね。

「「「「失礼いたしました」」」」

 ももにいちご、ほたてとあさりはその場にひれ伏して謝罪します。


「殿にご迷惑がかかります。場所を変えましょう」

 桐山が4人を促してその場を離れました。


 しばらくして、4人のSKJは文を持ってそれぞれのヴィレッジへ戻って行こうとしております。


「なんか気が抜けちゃったわね」

「ほんとにね」

 4人は桐山から注意を受けました。


「ムキになりすぎちゃったわ」

「ごめんなさいね」

 誰からともなく謝るとくすりと皆で笑いあいました。


「SKJの本来の仕事は心をこめてご主人さまにお仕えすることです」

「誰もが一流の意識を持ってお仕えすべきです」

「誰がトップかを争うのは正しいことでしょうか?」

 いちいちごもっともな桐山の意見でございます。


 そして桐山はパレス内で見苦しい争いをしないよう、それぞれが一流のSKJを目指すよう、各候補者に手紙を書きました。ももたちはその手紙を預かりました。


 少しヒートアップしすぎたのかもしれませんわね。SKJたちも別のチームを敵対視し、自分のリーダーをトップにしようと躍起になりすぎました。

 桐山は最初は様子を見ていましたが、少し常軌を逸してきたところでストップをかけました。


 手紙を受け取った候補者の三人も選挙をやめることに同意しました。それぞれが今回の騒ぎについて反省しました。これからはチームのリーダーとして本来の仕事をまっとうしようと心に誓ったようでございますね。


 ひとりSKJが家司の執務室を訪れようとしております。チームういんたーのさざえのようでございます。


「今回の件、パレス六条の皆さま方にご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした」

 謝罪にきたようでございますね。

「分別ない見苦しい言動を恥じております」

「これからは心を入れ替えて今まで以上にご主人さまにお仕え申し上げます」


「わかってくださればそれでいいんですよ」

 几帳の向こうにいる桐山の声ですね。

「お互い一流を目指しましょう」

 今まで頭を下げていたさざえが顔をあげます。


―― え? もしや……


 さざえが震えております。


―― ううん、気のせいよ。気のせいよ。まさかねそんなね。


―― もう一度お声を聞けばわかるわ


 ちがうわ、ちがうわ、ちがうわよ、なにやらさざえがを否定しております。


「どうかなさいましたか?」

 桐山がさざえの異変に気付いたようでございます。


「あああああっ」

 さざえのがくつがえります。


「さざえ殿?」

 窓の向こうの庭は桃の園。


「ばりとんぼいすっ!!」

 さざえが叫びます。


 ひぃぃぃぃぃっ!

 

 ぱたん。


「さざえ殿? またですか?」

 桐山が几帳を脇へとやるとそこにはさざえが白目をむいて気絶しておりました。


 くすりと桐山は笑みを浮かべさざえのまぶたを閉じてやります。

 指の背で生え際の髪も整えてやります。


「さてと」


 例によって気絶姫を送り届けませんとね。

 もちろん、゛お姫様抱っこ゛でございます。


「いつか、お話できるときが来ますかね……」


「桃のその少女おとめと……」



 本日もパレス六条まことに平安なり、でございます。



♬BGM

恋するフォーチュンクッキー AKB48


✨『げんこいっ!』トピックス

桐山は執務室の他にもパレス六条敷地内に私邸もあり。

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