さざえさんの反撃

「あら」

 お祭りの見物を終えて帰り際にさざえとあさりはまたさきほどの女房ズとでくわしました。

 お祭りでは光る君は颯爽と馬に乗って登場なさいました。それぞれ紫子さま、花子さま、明子さまの見物席の前で馬を止め、会釈をなさるお姿はとても素敵で文字通り光り輝いておいででございました。

 明子さまにお仕えしているさざえもとても嬉しく晴れがましく光る君をお見上げいたしました。他にもイケメンぞろいの貴族の方々の行列を眺めてさざえのメンタルも復帰したようです。


「あら」

 若干不機嫌なウダイジン組のようです。まあ、誰が見ても今日のパレードの主役は光る君でございました。ウダイジン側は政敵の光る君の輝くばかりのイケメンぶりがおもしろくありません。


「さきほどはどうも失礼いたしましたわ」

 気分が高揚しているさざえが女房ズに声をかけます。

「まあまあ、こちらこそ。まだに慣れたはらへんのになぁ。かんにんどすえ」

(田舎者がこんなとこに来るからよ。ふん)

 気分が沈んでいるところに政敵側の女房、しかも田舎女房を相手にすることにむかついているようでございます。


「とんでもございませんわ。新参者ゆえ日々精進でございます」

(いい勉強になりました。

 さざえが先手をうちます。後ろであさりがハラハラと見守っています。

「まあ! ご謙遜。明石アチラでは?」

(身の程知らずが。イナカもんは田舎でおとなしくしてればいいのよっ)

 プライドだけは負けていられません。


「とんでもございません。そちらさまの足元に及ばないどころか雲の上すぎてお姿すらお見上げできませんわ」

(こんな身のない会話を続けるほどヒマじゃないし、アンタ達なんか目指してもいないわよ)

 形勢逆転、さざえが優位に立ちます。

「んまっ! まあまあまあ! んぐっ」

(こ、こ、コイツ! いつの間に!!)

 女房ズの顔が蒼ざめます。


「では失礼いたします。機会がございましたらぜひまたご教授くださいませね」

(二度と会うかっ! べ――――――!!)

 見事なフィニッシュを決めてさざえとあさりがその場を離れます。


「あさり、どうだった?」

 さざえは後方の女房ズを振り返ることなくあさりに尋ねます。

「カンペキです。のみこみ早いですね。さすがです。さざえさん」

 あさりも振り返らず自分の体の前で小さくOKサインを出します。

「こんなカンジでいいの?」

 さざえがぽつりとつぶやきますと、

「……。バッチリですよ」

 とあさりが微笑みかけます。


「ほたてぇぇぇ」

 またさざえがほたてを見つけると駆け寄ってほたてにしがみつきました。

「さざえさん? 今度はどうしたの?」

 今日はなんだか忙しいわね、さざえさん、とほたて。

「怖かったのぉ。またこわかったのぉぉぉ。おぉぉぉぉん」

 隣であさりがくすくすと笑っております。



「エライとこに来ちゃったけど、こうなったら仕方ないわ。郷に入らば郷に従え。京風コッチ流で行きましょ。大丈夫よほたて、こっちにはあさりセンセイがいるから」

 さざえがぽんとあさりの肩に手を添えます。

「いえいえ、もうさざえさんの方が上級者ですよ」

 あさりはわざとらしくぴたぴたと二の腕や肩をさわり、手の甲をさざえに見せます。

「よくわからないけど、チームういんたーがんばっていきましょってことでいいの?」

 ほたてにとっては意味不明なあさりのジェスチャーですが、ほたてはほたてなりに察します。


「「いえす! ざっつらいとっ!!」」

 3人の高らかな笑い声が牛車の外にまで響きます。街往く人々が陽気な笑い声が聞こえてくる牛車を眉間にしわを寄せながら、あるいは首をひねりながら見送ります。


「しまっていこ――!」

「チームういんた――っ! ファイっ!!」

「「「おぉぉぉぉぉ」」」


 チームういんたーの士気は高揚するばかりでございます。


「ママー、おかえりなさぁい」

 お祭りに行っていなかったほたての子供たち、ぱんだ、うさぎ、こあらがヴィレッジういんたーで出迎えます。

「パパとねー、お庭で遊んでいたの」

 同じく内勤だったパパ管三と過ごしていたようですわね。

「あっ、姫子さまぁ! ご一緒に遊びましょうよ!」

 お戻りになられた姫子さまも誘います。女の子4人が庭を駆ける様子は花を散らしたように可憐でございます。


「おかえり。お祭りは楽しめた?」

 管三がほたてに声をかけます。

「ただいま。殿はとてもステキだったわ。それにチームういんたーも盛り上がったの」

 庭ではしゃぐ子供たちの声が聞こえてきます。

「そうなの?」

 パパー、ママーと庭からの声にふたりが手を振ります。

「そうなの。がんばっていきましょってことみたい」

 なんか面白いね、いいんじゃない? と温かい眼差しの管三でございますね。


 御簾内からでしょうか。まだシュプレヒコールが聞こえます。


「しまっていこ――!」

「チームういんた――っ! ファイっ!!」


 ね? とほたてが管三に瞳で語りかけます。

 ん、と管三もほたてに微笑みかけます。


 本日もパレス六条、ならびにチームういんたーまったくもって平安なり、でございます。


 ☆本日のBGM♬

 A列車で行こう


 ✨『げんこいっ!』トピックス

 お茶のお誘い(「あがっていかはったら?」)への模範解答

「ありがとうございます。とても嬉しいのですが、今日は予定があるのでこれで失礼いたします。またの機会にさせていただきますね」(……らしい)

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