ヴィレッジすぷりんぐは平安なり

 パレス六条は大きく4つの区画に分けられております。そのうちの南東の区域がヴィレッジすぷりんぐでございます。お屋敷の主は紫子さまでございます。紫子さまのお好きな季節の春の花々が咲き乱れる春の町でございます。

 桜はもちろんのこと、梅、藤、山吹、躑躅つつじなどが春の季節をリレーするかのように咲き誇り、主の美しさにまさに花を添えます。また舟遊びもできるほどの大きな池も造られ、釣り殿(東屋)がその池に張り出しております。


「前にさ、春が好きって紫ちゃん言ってたじゃん?」

 光る君が紫子さまをエスコートなさりながら寝殿リビングにお入りになられます。

「よく覚えているわね」

 胸元に手をあてながらお隣の光る君をご覧になります。それこそ花が咲くような笑顔でございます。


 片方の草履を拾ってもらったところから始まった「シンデレラストーリー」の主人公紫子さまでございます。ガラスの靴を履いてかぼちゃの馬車に乗って出かけられた宮中舞踏会お城のダンパのご様子はいまだに語り草でございます。お似合いのカップルだと周囲も認めるおふたりでございます。


「あたりまえじゃん。好きな子には好きなものをプレゼントしたいからね」

 光る君は得意げにウィンクなさいます。星が飛び出しそうな煌めくウィンクでございます。 

 屏風には紫子さまのイメージフラワーの桜が描かれ、几帳等のインテリアはさくら色などの淡いトーンで統一されております。漂う香りアロマは梅香でしょうか。


「素敵なお部屋だわ。ありがとう、光くん」

「その顔が見られてよかったよ」

 紫子さまが喜ばれるようにとすべての調度品インテリアは光る君がお選びになられました。染物の色まで指示をなさいました。


「紫子さま」

「オーダーしていたオートクチュールが届いておりますわ」

 女房がお声をかけられます。名前はももと申します。

「ご試着さないますか?」

 こちらの女房はいちご。

「そうね、じゃあ着てみるわ」

 几帳で囲まれている方へと紫子さまが移動されます。


「キミたちもヴィレッジすぷりんぐはどう?」

 光る君が女房たちに話しかけられます。

「こんなに豪華な御殿は見たことがございませんわ」

 うめという名の女房が答えます。紫子さまのお着替え中の光る君のお話相手を務めます。


 うめ、もも、いちご。紫子さまの三人官女SKJ48でございます。

 チームすぷりんぐ。またの名をチームビューティーと申します。

 女子力の高い紫子さまのためのエステやヘアメイク、ネイルなどビューティー関連のお世話が得意な三人でございます。

 小袿姿普段着にお着替えになられた紫子さまがお待ちになっていらっしゃる光る君の元へと戻られます。


「ああよく似合うね。その重ねは紅躑躅べにつつじ?」

重ねとは衣装の配色のことでございます。紅躑躅というようにそれぞれの配色には名前がついており、着用する季節や性別が決まっているものもございます。

「どうもありがとう。この季節に合わせたの」

(【超訳】アナタには恋のお相手がいらっしゃるから)


 紫子さまのお手をとり、そっとその手の甲に口づけをなさいます。

「ネイルもよく合っている。コーディネートもカンペキだ」

 首をかしげながら、紫子さまは首筋にお手を入れて長い長い髪をサラサラサラとお背中へと流されます。

「嬉しいわ。あなたに褒めてもらえて」

(【超訳】大勢の中で印象に残るのはそりゃタイヘンよ)


 そうだ、と光る君は源ちゃんズになにやら所望なさいます。リーダー弦一郎の指示のもと、メンバーがダッシュで庭へと駆け出し、光る君リクエストのモノをリレー形式で運んで参ります。

 そうそう、紫子さまの必殺スキル【超訳】毒舌は紫子さまのお心の声であって光る君始め周囲の人間には聞こえておりませんのよ。


「これを髪飾りに」

 たった今切らせた庭の躑躅の花を紫子さまの髪に飾られます。

「どうかしら?」

「綺麗だよ。春の女王さまだね」

「ホント?」

「マジ。マジ。俺は女王さまのしもべだよ」

「やだぁ。しもべだなんて」

「キミの美しさに服従するね」

「きゃあ。またそんなこと言ってぇ」

 おふたりの周りからハートマークが飛び散っております。


「いつまでたっても仲のいいご夫婦よね」

「本当にね。見ているコッチが恥ずかしいわ」

「紫子さまの嬉しそうなお顔」

「殿の鼻の下も伸び切ってるわね」

 うめ、もも、いちごの三人は着替えの片づけをしながら光る君と紫子さまのご様子を見守ります。


「でも美男美女でお似合いよねぇ」

「光り輝く殿に華やかな奥方さま」

「紫子さまもほんとうにお美しくてお優しくて」

「そりゃそうよ。ご自分の理想どおりにお育てになったのよ?」

「いまや、オトコの理想だなんてみやこでウワサされているみたいよ?」

「よく知ってるわね」

「『週刊平安』に載ってたわ」

「ああ、あることないこと書いてるゴシップ誌ね」

「あら、はホントだったじゃない」

「しっ! 聞こえるわよ」

 女性は3人寄るとかしましいというのはいにしえから変わらないようでございますね。


「はい。女王様にこれを」

 さきほど躑躅の花を切ってくるよう指図を受けた源ちゃんズでしたが、そのあとで

弦一郎が気を利かせてお庭の花で可愛らしいブーケを作ったようでございます。


 弦一郎は源ちゃんズのリーダーです。源ちゃんズメンバーの仕事の仕切り、光る君への気遣い、どれをとっても完璧な仕事のできる従者です。容姿も正統派イケメンですわね。ちなみに奥さんはここチームすぷりんぐのうめでこうめという娘がおります。


 作ったブーケをさりげなく光る君にお手渡しになり、光る君が紫子さまにプレゼントなさいます。


「ま、ステキ。可愛らしいブーケね」

 躑躅にすみれに桜草などを使ったアレンジメントのようでございますわね。

「キミのほうが可愛いよ」

 ぱぁん、と紫子さまが光る君のお袖をたたかれます。それはそれは嬉しそうでございます。

「もうっ! ほんとう?」

 マジ。マジ。やっだぁ、照れちゃうわ。本当だって。もう、嬉しいわ。


 きゃあきゃあきゃあ

 デレデレデレ


「なんか暑くない?」

「暑いというかおめでたいわね」

「これで扇いでおく?」

 書棚にある『週刊平安』のバックナンバーのようでございます。チームビューティー、春だと言うのに暑さにあたったようでございます。


 ぱたぱたぱた


 もうもうもう!

 ニタニタニタ


 仲良きことは美しきかな。


 

 本日もパレス六条平安なり、でございます。


♬BGM

四季「春」      ヴィヴァルディ


✨『パレス六条』登場人物紹介

紫子さま 毒舌超訳のぶりっ子シンデレラ

うめ 紫子さま付きSKJ ヘアメイクアーティスト

もも 紫子さま付きSKJ メイクアップアーティスト

いちご 紫子さま付きSKJ ネイリスト

弦一郎 源ちゃんズリーダー リア充仕切り屋 うめは奥さん、娘ひとり(こうめ)


✨『げんこいっ!』トピックス

春の庭には八重桜の並木道も整備されており、゛さくらのとおりぬけ゛は住人のみの特権


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