Season2 ここから本編? Check it out!

本日もパレス六条平安なり

 平和、でございます。

 顔が映り込むほど凪いでいる水鏡の池のごとく穏やかでございます。

 漂う雰囲気でふとまどろんでしまいそうな緩やかさでございます。


 雲雀ひばりのさえずりがちょっとした効果音アクセント

 ほのかに香る花々が景色を彩り

 吹き渡る風が……


 ああもう、とにかくいたって平穏なのでございます。

 時は平安、所は京、時候は花咲き誇る爛漫の春。


 『げんこいっ!』第2部となる弐の巻『本日もパレス六条平安なり』の開幕でございます。語り部のミタでございます。

 壱の巻『死ぬほどキミに恋してる』では物語に登場する人物の紹介をして参りました。ここからの『本日もパレス六条平安なり』は『死ぬほど〜』の続編、弐の巻でございます。言うなれば season2、でございますわね。


 さて壱の巻でお話した『死ぬほどキミに恋してる』の主人公を覚えておいででしょうか?

 整いすぎた美貌のお顔立ち

 熱い想いをたたえるその眼差し

 涼やかで心にひびくテナーボイス

 そして耳元で囁かれるコロシ文句「死ぬほどキミに恋してる」

 舞を舞っているのかと思わせる優雅なものごし

 神でさえ彼に恋をし

 光すら意思を持って彼のみを照らす


 そう、


 光源氏こと、我らが光る君でございます。


 え? 年中春満開のお花畑オトコですって?

 チャラ男選手権世界一?


 まあね、否定はいたしませんわよ。

 どうお感じになるかは読者さまのご自由ですしね。


 諸説ございますが、三千年に一度と言われるイケメン、彼の麗しい恋物語について語ったのが壱の巻『死ぬほどキミに恋してる』でございました。


 要は容姿端麗のハイスペックイケメンでございます。そして光る君を語る上でもっとも重要なこと、それは呼吸をするのに酸素が必要なのと同じくらい光る君が生きていくためには「恋」が必要、ということでございます。


 現代とは違う平安時代特有のある程度の自由恋愛一夫多妻制が許されていた状況下ではございますが、光る君は水を得た魚のごとくめくるめく恋物語を繰り広げられました。


 天下無敵の美貌を武器に、

 胸キュンシチュエーションを得意技に、

 コロシ文句死ぬほどキミに恋してるを駆使なさりまくって、でございます。


 オンナの敵とも言える光る君。

 オンナの憧れとも言える光る君。


 そんな君は明石からご帰還後、復職なさり、新しく御殿をお建てになりました。

 潤沢な財産を惜しげもなく投じ、趣味を極め、後世にまで語り継がれるほどの大豪邸でございます。


 御殿のお名を



 パレス六条


 と申します。


 広大な敷地内にたいせつな奥さまそれぞれにお屋敷を建てられました。

 そのお屋敷を渡殿わたどの(渡り廊下)で繋いで巨大な御殿となさいました。

 それぞれのお屋敷には主となる光る君のオクサマがいらっしゃいます。

 御殿の総領はもちろん光る君でございます。

 その光る君が文字通りオクサマがたのお屋敷をのでございます。


 ええ、時は平安。パレス六条も平安、でございます。


 それはそれは見事な御殿なのでさっそくご紹介させていただこうと思うのですが、お屋敷もございますし、そこにお住まいの方がたのお話もございますので、ゆっくりと順にご案内いたしますわね。


 なんといっても平安なのでございます。


 複数の奥さんをそれぞれの屋敷に住まわせて、まるで後宮のよう? 帝でもないのに? 日替わりであっちやらこっちやらにお泊まりになって? アンタの家はどこなんだって? ですからパレス六条全体が光る君のおうちでございます。


 誰がなんと言おうと平安なのでございます。


 ほら今日も光る君私設管弦楽団源ちゃんズがかいがいしく働いておりますわ。光る君の忠実なる従者たちで腹心でございますわね。7人編成でございます。

 本職の楽器を奏でております。

 琴や尺八の調べ。

 聴こえて参りましたでしょう?


「若、お久しゅうございます」

 光る君にご挨拶に参っている者がおりますね。

「桐山、待ってたよ、こっちに」

 光る君がご自分の近くへとお呼びになります。

「本日よりよろしくお願い申しあげます」

 身なりのきちんとした紳士でございます。ロマンスグレーのナイスガイ、といったところでございますわね。

「うん。よろしくね。ウチが広いからタイヘンかもしれないけど桐山なら大丈夫だよね?」

 光る君の口調や態度には桐山に対する全幅の信頼が感じられます。

「すべては若の御為にお仕え申しあげます。おお失礼いたしました。殿」

 桐山はより一層低く頭を下げます。

「いいよ、若で。いっそ光でもいいくらいなんだけど」

 光る君はパタ、と仰いでいたお扇子を閉じられます。桐山は目を見開きます。


「何を仰られますか。そのようにお呼びなさるのは父帝さまのみでございます」

 桐山は光る君のお父さま、桐の帝にお仕えしていたのでございます。故にお小さい頃の光る君をよく知っているのでございます。

「その父さんが亡くなった今は桐山が俺の父親がわりみたいなもんじゃん?」

 桐の帝が崩御あそばされたので、光る君が桐山を新居の家司けいし(執事)に招いたのでございます。


「滅相もございません。亡き主上うえ(帝)の代わりなどとそんな、うっ、ううぅ」

 桐山の頬を涙がつたい、嗚咽を抑えるように口元を手で覆います。

「悪かった。思い出させて悪かったよ。いいよ、好きに呼んで」

 光る君が懐紙を桐山にお渡しになります。

「ううう、ありがとうございます。若はなんとお優しく大きくおなりに。亡き主上もさぞ、うううぅぅっ」

 差し出された懐紙に顔を埋めて号泣でございます。


「ところでさ、みんなの引越し状況はどう?」

 光る君は主上、主上と泣きじゃくる桐山に別の話題を振ります。

「それでございましたら紫子さまは若とご一緒にお移りなのはよろしいとして、花子さまが夕さまとご一緒に次の吉日にお入りになられます。明子さまは今少しお日にちを開けてからとのことでございます」

 先ほどまでの号泣っぷりはどこへやら、一瞬でビジネスモードへとシフトチェンジの桐山です。

「さすがだわ、桐山」

 光る君がお扇子とお手で拍手を送られます。


 やはり平安なのでございます。


 春の小川のような源ちゃんズの雅楽の調べでございます。


 パレス六条に住まう方がたのかくも平安なるお暮らしぶり

 平安なる光る君

 その光る君にお仕えしている平安なる従者たち

 平安なる奥さまがた

 そのオクサマにお付きしている平安なる女房(女中)たち


 のどかでございます。

 穏やかでございます。

 桜が満開でございます。


 本日もパレス六条平安なり、でございます。



 ♬BGM

 春の海

 花


 ✨『パレス六条』登場人物紹介

 光る君 天下無双の恋多きオトコ、憎めない人たらし

 桐山 ロマンスグレーダンディのカンペキ執事

 源ちゃんズ 光る君私設バックバンドの愛称、光る君の忠実なる7人の従者たち


 ✨『げんこいっ!』トピックス

 パレス六条の敷地面積は東京ドーム1.3個分


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る