死ぬほどキミに恋してる         with光源氏

 さて長々と続けてまいりました壮大な登場人物紹介も今回がラストでございます。そう、真打登場でございます。


 光る君は明石から京へ向かわれる途中でございます。

 聞きなれた波音が遠ざかり、吹き渡る松風にも潮の香りが漂わなくなってきております。京に近づくにつれ、空気が次第に乾いたものへと変化してまいります。ふと鼻先をかすめるのは秋の訪れ、金木犀キンモクセイの香りでしょうか。

 そんな旅の道中でさまざまな想いが光る君のおこころをよぎります。



 明ちゃん、キミと離れるのがこんなにツライなんて。聡明なキミが好きだよ。


 月ちゃん、キミに恋したことでこうなったけど、後悔してないよ。華やかなキミが好きだよ。


 六ちゃん、ハイレベルな恋の駆け引き。オトナなキミが好きだよ。


 夕ちゃん、今キミがそばにいてくれたなら俺はこんなに彷徨わなかったかもしれない。優しいキミが好きだよ。


 花ちゃん、キミの癒しの里に今すぐ行きたいよ。あの橘の香りが漂ってくるようだよ。温かいキミが好きだよ。


 末ちゃん、あの「からころも」の歌もなければないで物足りないもんだね。純粋なキミを好きなのかな?


 葵ちゃん、キミが恋に慣れてないって気づいてあげるべきだったよ。頑ななキミが好きだよ。


 藤ちゃん、ずっとキミを見つめている。叶わない恋だから焦がれるんだ。キミのすべてが好きなんだ。


 紫ちゃん、ようやくキミの元に帰れる。逢いたくて仕方ない。キミは俺の憧れだ。俺の理想の女性だよ。



 皆さまお気づきでいらっしゃいますね。

 どなたかがナンバーワンなのではございません。どなたもがオンリーワン、なのでございます。あら、なにかのお歌のようでございますか?



 〜 目の前の キミに夢中さ 全力で

  いつでも本気 誰にも本気 〜



 そうなのでございます。

 最初の恋、藤子さまへの想いが満たされないままの光る君はどこまでも彷徨われるのでございます。

 行き着く先に待っているのは愛なのでございましょうか。夢なのでございましょうか。

 それとも……。


 さて光る君の人生の旅路はまだまだ続いてまいりますが、明石からの旅はそろそろおしまいのようでございます。紫子さまのお待ちになっていらっしゃる二条院が見えて参りました。

 光る君の跳ね馬牛車愛車の後ろには光る君私設管弦楽団源ちゃんズが続きます。本日は7人勢ぞろいフルメンバーでマーチングですわね。曲目は「凱旋行進曲」。たいそう晴れがましい音楽でございますが、あの、別に戦に勝ったとか、手柄をたてた、とかではありませんのよ。もとはといえば、ねぇ? 


 それでも宮中の、いいえ都の人気ナンバーワンアイドルのご帰還に京の町も沸き立っております。時折悲鳴にも似た黄色い歓声も聞こえて参ります。いったんはお付き合いをさけていた公達同僚の方々も『おかえりなさい! 我らが光る君!!』なぁんて横断幕を掲げて沿道に集まってきております。

「ヒカル!」チャチャチャ!!

「ヒカル!」チャチャチャ!! 

 一体何の応援でございましょう? それからなにやら光る君のお名前や『LOVE♡』なんて文字の入った蛍光色のお扇子を打ち振っていらっしゃる方々も大勢いらっしゃいますわね。


 なんというか、得なお人柄というかお幸せな方とでも申し上げればよろしいのでしょうか。


 時は秋。山装う秋が都にも下りて参ります。

 所は京。千年の都。永遠の大和の都。

 華やかで儚い夢物語。

 美しくも切ない愛の物語。


 若干呆れられること炎上する要素がないこともございませんが、これほどチャーミングで女性を魅了する男性もそうはおりませんわよ? もう長いことこの国を見てきているわたくしが申しておりますのよ。光る君に口説かれて拒む自信がおありですか? あの美貌。輝く瞳。和歌に、お花に、そしてあの心に響く愛のオコトバ。胸キュンシチュエーション、触れる指先。


 とろけるような甘さ。フワッとなくなる口どけ。シュワッと弾けるトキメキ。もう一度、もう一度だけ。心を締め付ける切なさすらも幸福に感じ、逢えない辛さはより深い愛を育む。だからこそ、ふたりでいられるときの至福の喜び。


 カカオ90パーセントのチョコをかじろうとも。

 フォンダンショコラに見向きもされなくとも。

 マカロン持ってすっこけようとも。

 わら人形で呪われようとも。

 足拭きマットをもらおうとも。

 スキャンダルで炎上しようとも。

 超訳心の声で毒舌を吐かれようとも。

 玉手箱の魔法や媚薬にひっかかろうとも。

 和歌の筆談攻めにあおうとも。


 壁にドンして、

 あごをクイして、

 あのおことばコロシ文句を囁いて。

 麗しい超絶美男イケメンの恋愛絵巻。

 

 壱の巻はやはりこのおことばコロシ文句でおしまいでございます。

 このおことばコロシ文句がなければもはやこの方ではございません。



 死ぬほど恋してる





 ♬BGM

 世界にひとつだけの花     SMAP

 凱旋行進曲  (歌劇「アイーダ」より)


✨『げんこいっ!』トピックス

女子をときめかせる胸キュンシチュエーション⑬コロシ文句死ぬほどキミに恋してる



 ☆壱の巻 死ぬほどキミに恋してる

  その一 めくるめく 恋愛絵巻 始まりますの   fin.


 Next その二 死ぬほどキミと? 座談会


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