第3話

「で……その地獄代わりの転生が、なんで転職みたいになってるんだ?」

その問いに、ソフィーヤは目を反らす。

「まさか、またクレームとか言うんじゃないよな?」

言葉に反応して、今度は目に見えて焦り始める。

「いえ、クレームとは違いまして……」

明らかに言葉を濁している。

もう一睨みすると、彼女は観念したかのようにおずおずとしゃべり始めた。

「転生先で信者を増やしてやるって契約で、転生先を斡旋した神が居まして……」

今度こそ俺は机の上に突っ伏した。

来世では就職する時に、神頼みは辞めよう。。

そう硬く心に誓った。

「いえでも、凄かったんですよ!効果は絶大でして……」

「その結果が皆真似し始めて、最終的に公にやらなきゃいけない状態になったんじゃないか?」

良い話風にまとめようとしていたのだろうが、そんな事はさせない。

俺の言葉に、今度は彼女が絶句する。

「はっ!?結城さんもしかして、現代転生した能力者エスパーなんじゃ……」

「違うわ!」

さっきまでは知的に見えたが、今ならわかる。

この女神はゆるふわのポンコツだ。

優しさだけが取柄とかそういう奴だ。

お互い、段々と丁寧にと心掛けていた言葉遣いが素に戻り始めていた。

「で、でも!私達は信者を得て、皆さんは素敵な転生ライフを得るんです!ういんういん……な関係じゃないですか!」

win-winと来た。

絶対これもやらかしたのも俺の居た世界の連中か、あるいはその同類だろう。

そうなると、転生先ではそれで金儲けしているに違いない。

「やべぇな、来世にも暗雲が漂ってきたぞ……」

政治・宗教・金。

人間の強欲は世界をも超えるらしい。

「大丈夫です!結城さんの来世は私が責任を持って明るいものにしてみせますから!」

ここぞとばかりに胸を張って言う彼女だが、俺は一層不安な気持ちになった。

「……そもそも、こんな話して良かったのか?」

ピクリと、彼女の動きが止まる。

「よくありませんでしたぁぁぁ!?」

一際大きな声に、周りにあった魂も流石に反応していた。

大きな声を出すな、と彼女を宥めながら。


俺は来世は神頼みでなく自分で切り開こうと、硬く誓った。

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転生浪人、始めました @miyabi_s

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