第5話


俺は帰ると舞にだけ今回のことについて話した。そうすると舞は喜んで協力すると言ってくれた。本当に頼もしいやつだ。

次の日の朝、俺と舞はまた図書館へと向かった。俺は数冊の本を抱えまたいつもの席へと向かった。すると驚くことにまたあの女の子が座っていた。その女の子は俺が見ていることに気がつき、話しかけてきた。

「あなた、本が好きなの?」

どうやら朝からたくさんの本を抱えている俺を見て本好きと判断したようだ。

「まあ多少な。」

ここで嫌いなどと否定的なことを言って空気が沈むのを避けるために俺はとっさに嘘をついた。

「そうなんだ。それじゃあそんなあなたに私の大好きな本を貸してあげる。」

「いいのか?」

「いいよ。同じ本好きだもの。」

俺の気遣いによって変な誤解がうまれてしまったようだ。

「秀哉!いろいろな本集めてきたよ!」

そこに本を抱えた舞が戻ってきた。

「おい!図書館で大きな声で呼ぶな!」

「ああ、ごめんごめん。ってあれ?秀哉その子と友達になったの?」

「あ、いや…」

「私たちは友達、いやもっと深い絆で結ばれているの。」

俺が否定しようとしたところを逆にすごく肯定されてしまった。

「ちょっと大袈裟なんじゃ…。」

「秀哉すごいじゃん!こんな短い時間に友達つくるなんて。わたし高野舞っていうの。舞って呼んでね。」

「舞…。わかったよ。それより秀哉…だよね?その本絶対読んでね。」

そういうと女の子は本を鞄にしまい、席をたった。

「ねぇねぇ秀哉。あの子なんていう名前?」

「あ!そういえば名前きいてなかった!」

「えっ!名前知らなかったの?もう!なにやってるのよ!今度はきいておいてよね!」

「ああ、わかってるよ。」

それにしても自分でもなぜきかなかったのかが分からなかった。自分の不甲斐なさを深く反省した。彼女は明日も来るだろうか?俺は舞と集めた本を持って図書館を後にした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る