第3話


『玉留公園』

この名前は中央に生えている巨木がまるで傘のように日差しを、雨を、さらには雪を遮るため、皆がその元に集まることでつけられた。ちなみに玉留とは傘の手元の上の部分のことだ。そんな公園の象徴ともいえる木。しかし…

「…たしかこのあたりに大きな木があったような…。」

「綾ちゃん、実はね。あの木大きくなりすぎちゃって危険だからって倒されちゃったの。最初はみんなで反対したんだけど押しきられちゃって。」

「そうだったんですね…。」

綾はそう言うとすこし沈んだように見えた。綾もこの木になにか思い入れがあったのだろう。

「小泉はこの木を見に来たかったのか?」

「はい…。しかしこのようになっていたなんて少しショックです。」

そういえば俺も昔ここで誰かと話をしたような。顔はうまく思い出せないが、会話の内容は少しだけ…。

「あっ!!」

「ちょっと秀哉!!いきなり大きな声を出さないでよ!」

「ああ、悪い。」

そうだ。ところどころ抜けてはいるが思い出した。

たしか昔好きな人がいて、そのとき俺がなにかをしてしまった。そうしたら別の子が必死になって叱ってくれた。そうこの木の元で。この記憶。何故かはわからないがとても大事なことだったはずだ。すべてを思い出さなくてはならない。そのためにも過去の、あのときの情報というピースが必要だ。

「なあ、小泉。もうすこしこのあたりを歩いて回らないか?」

「はい。構いませんよ。でもどうしてです?」

「その理由についてはうまく説明はできないんだ。でもどうしてもそうしたいんだ。」

「ふふふっ。本当に一度考え込むと止まらないんですね。わかりました、いきましょう。」

「あ、待ってよ。わたしもいく!」

こうして俺たちは公園をあとにした。


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