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「天気予報でも、今日が一番寒い日になるとかって言ってたな」
「雪が降るのは近いかもねぇ」
「そうだな、日本海側ではもう雪が降ってるって言ってたし、今年中には降るかもな」
耐熱ガラス製のカップは、丸いフォルムが優し気で、ジャスミンティーとか入れたら絶対似合うよなぁとも思う。
店で使っているのは、陶器のティーカップと海外ドラマに出てくるようなステンレスの底がついたマグだから、ちょっといいなと思ってしまう。まぁガラスのティーカップで湯割りとか飲むのも変だからいいんだけど。
「あぁ冬本番が来るねぇ。やだやだババァには辛いよ」
「ババァって。ばぁさんいくつだよ」
「十万七十九歳だよ」
「閣下か」
突っ込むとばぁさんは、カッカッカと笑う。しょうもないのに笑えてくるから困る。
「へぇそりゃすげぇな」
「ただの年寄りだよ」
「そんなことないだろ。人生の先輩だし」
「はっ」
鼻で笑われた。
「そりゃまぁね、伊達に年だけは食ってない」
「ほうほう、それは詳しく聞きたいなぁ」
にんまりとして言うと、ばぁさんはまた鼻で笑う。
「ばぁさんは昔からこの仕事してたの」
「あぁ、嫁に来た家がやってる仕事だからね」
「いくつで結婚したの」
「あー十七だったかねぇ」
さすが若い。ってことは今の旦那さんとは金婚式越えてるってことか。
「へぇ仲良しなんだ」
感心していたのにまた鼻で笑われた。なんでだよ。
「仲良しだからって長続きするわけじゃねぇだろ」
んーまぁ一理あるかもしれない、か?
「旦那さんとは見合いだったの?」
「そうだ。あの時代は顔も見ないまま結婚させられたりしたもんだからね。まぁうちの人は良くはないけど悪くもなかったから」
「それが決め手?」
「うちの人は優しい人だったからね。まぁ二番目くらいの方が上手く行くってもんだよ」
ばぁさんが「ひっひっ」と笑う。
花の十七歳、気持ちだけで結婚出来る時代ではなかっただろう。それでも、今ばぁさんが笑っていられるのなら、良かったなぁと思うわけで。
「やっぱりばぁさんが入れる茶は美味いな」
「当たり前じゃないか」
こうやって美味しい紅茶も飲めるわけで。
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