美味しい紅茶の入れ方

カゲトモ

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 寒い日が続くとホットカクテルの出る数が増える。

「ちわー」

 ガララ、と音を立ててガラスの引き戸を開ける。その窓には時代を感じる金字で“桐嶋堂茶舗”と書かれてある。茶葉を卸してもらっている茶葉専門店だ。

「いらっしゃい」

 カウンターで出迎えてくれたのはこの店の店主。厳つい顔だが、優しい人だ。

「すみません、ダージリンとアッサム、それから・・・」

 親父さんにストックの少なくなっていた茶葉を注文していると、店の奥から小柄なばぁさんが出てきた。結構な歳になっているはずなのにシャンシャンと杖もつかずに歩いてくる。

「おや、スカイじゃないか」

 視線がばっちり合うと、表情を変えないままばぁさんが言う。寝起きか?

「こんにちは」

「茶でも飲んで行くかい」

 ふぁ、と欠伸をしつつ、俺の返事を待たないままばぁさんはソファ席に足を向ける。俺の答えは聞かない、まぁ飲んで行くんだけど。

「すみません、お邪魔します」

 親父さんに頭を下げてから、ばぁさんの後を追った。

 昭和的と言うか、レトロと言うか、古臭いと言うか。黒い革張りのソファにローテーブルの応接室。イートインなんておしゃれなものはない。もともとここは商談スペースなのだから。

「ちょっと待ってな」

 振り返らないままばぁさんは奥へ行く。俺はいつも通りソファに腰かけた。

 ふかっと心地よく沈むソファは、年代物だとは思うが、上品な艶があってきっと高いんだろうなぁといつも思う。

 なんて、触り心地、座り心地のいいソファを撫でていると、ばぁさんが茶器の音を鳴らしてやって来た。

「今日はまた一段と寒いねぇ」

 透明なティーポットには透き通った琥珀色が満ちている。ばぁさんは骨の浮く細い手でそれを丁寧に二つのカップに注いでくれた。

 今日の茶菓子はザラメの付いたカステラだ。

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