第5話 マジュウとも仲良し!



 アイリスちゃん……じゃなくて魔王様に用意してもらったお部屋でふああって欠伸して起きたら朝だ。

 窓からはおひさまがサンサン輝いてて、天気は気持ちのいい晴れだった。

 こういう日はやる気がとっても出るから僕は好きなんだ。

 大きく伸びをして、気合を入れるよ。


 よーし、頑張らなくっちゃ。






 そういうわけで、魔王城での僕のお仕事。

 ポチの餌係は始まったんだけど、小屋には他にもマジュウがいるからまとめてあげといてって頼まれちゃった。

 そうだよね。一匹だけあげるのも可哀そうだし、どうせなら皆まとめてやった方が良いに決まってる。


 だから、今日からはこのマジュウ小屋にいるマジュウさん達は、全部僕がお世話する事になったんだ。

 危ないから誰もやりたがらない仕事だってギューブさんは言ってたけど、そんなはずないよ。皆大人しくて良い子ばっかりなんだもん。


「あ、おはようドラ。土から上がっちゃ駄目だよ。ゼッキョウっていうの聞いちゃったら、皆の魂が飛び出ちゃうってギューブさんが言ってたから」


「おはよう。メメちゃん。うーん、今日も恥ずかしくて物陰から出てこられない? ……そっかー。仕方ないね。ゆっくり頑張ればいいんだよ」


「あ、ポチおはよー。今日も元気そうだね。後で一緒に遊ぼうね」


 マンドラゴラのドラに、メデューサのメメ、ケルベロスのポチ。順番に挨拶して周っていくよ。

 マジュウ小屋には正式にはマジュウじゃない子もたくさんいるらしいけど、専用の飼育小屋を作る場所がそんなにないからって、ここに集められてるんだって。


「いろんなマジュウがいるんだねー。皆と仲良くなれたらいいなー」


 挨拶が終わったらご飯をあげていって、その後は掃除をしなくちゃ。


 初めての事だからやっぱり最初はなかなか慣れない。

 時間がかかっちゃうし、上手にできない。全部やる事には一日が過ぎちゃうくらいだったけど、初めての事に挑戦するのはすっごく楽しかった。


 もう動けないやってなった時も、ぜんぜん辛くなかったよ。

 美味しいご飯を食べて、お部屋でぐっすり眠れば、明日もまた頑張ろうって思えてきちゃう。


 だけどそんな風に、お仕事を頑張ってると、ある日すっごく大きな音が小屋の中まで聞こえてきたんだ。いきなりの事で、僕はとってもびっくり。


 慌てて外に出てってみると、魔王城のてっぺんにあるずんぐりした鉄の塊……鐘っていうのが、木の棒でマゾクの人に何回も叩かれるのが見えた。

 何かあったのかなって思って首を傾げてると、近くを通ったマゾクの人が理由を教えてくれたんだ。ここにいる人たちって皆良い人だなあ。


「あれは、侵入者を知らせる鐘だ。悪い事は言わねぇ。どこかに隠れてるんだ。……ん、アンタ角がねぇようだけど、いやまさかな……。ツノ無しで苦労してきたんだろうな。お勤めご苦労さん」


 そっかあ。侵入者って勝手に人のお家に入ってきちゃう人の事だよね。それじゃあ大変だ。

 危なくなったらいけないから、僕は近くのマジュウ小屋の中に入って隠れてる事にした。中ではマジュウ達が不安がってるみたいだったから、大丈夫だよって順番に声をかけてあげなくちゃ。


「みんな、大丈夫だよー。きっと魔王様やギューブさんが何とかしてくれるよ」


 できるだけ優しく言って、安心できるように笑顔で言葉を掛けながら周っていく。


 だけど、最後のポチの所まで来た時に大きな音が響いた。


 どーん、っていう大きな爆発音がして、ビクッてなってるうちに小屋の中にたくさんの足音。

 誰かが入ってきちゃったみたいだ。


「魔獣がいるぞ。……ておけ。今の内に魔族達の戦力を……」


 わ、どうしよう。

 さっきの人が言ってた侵入者かもしれない。

 まだ距離があるから、何て言ってるか分からないけど、話してる言葉を聞くとちょっと怖そうな人達に思えてくるなぁ。


 さっきまで元気づける側だったのに、僕はちょっと怖くなってきちゃった。よし、やっぱり一人でただ立っているのは怖いから、檻を開けてポチに傍に近づいてちゃおう。


「クーン」

「しっ。静かにしてなきゃ駄目だよ」


 ポチの大きな体と一緒にくっついてるととてもあったかくて、嫌な気持ちがすごく紛れた気がした。ほっとするなあ。


 そのまま安心したせいか、いつの間にか眠っちゃうんだけど、夢を見る前にポチがすっごく頼もしくなってて、リクジョウ選手みたいにぱって素早く動いてて、大きな口から炎を吐いたり、長い爪でバリバリってやったりして、怖そうな人達を追い払っちゃう様な……そんなのを見たような気がしたけど、たぶん夢だよね。


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