第5話 勇者

 三人が「ステータス」と念じると、それぞれの眼前に小窓が現れた。しかしそれを遠くから眺めている貴族たちやアルフォードはおろか、近くにいるアルセリアさえその内容を覗くことは叶わない。ステータスの持ち主以外は本人の許可なく見ることができないのがこの世界の常識であり、それは異世界人である三人にも適用される。


「三人とも、問題なくステータスを開けたようだな。それではどのようになっているのか確認させてもらってもいいか?」


アルフォードは三人がステータスを開くのを確認すると、美奈の「世界を救う力はない」という疑問に答えた責任として三人のステータスを見せてもらおうとする。

その提案に真っ先に答えたのは宗太だった。


「おう、いいぜ。で、どうすればいい?」

「では一人ずつ見せてえもらおうか。私にステータスを見せてもいい、と思ってくれれば私の前に君のステータスが現れる。やってみてくれ」


その言葉の通りにした宗太のステータスは、宗太の前だけでなくアルフォードの前にも現れ、アルフォードはそれを確認する。

 そこにはこのように書かれていた。


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ソウタ・カヤマ 17歳 男 Lv.1

称号:武の勇者、異世界人


体力:200

魔力:100

物攻:200

魔攻:100

物耐:200

魔耐:150

筋力:200

敏捷:200

器用:100


<スキル>

鑑定Lv.5、拳闘術Lv.5、柔術Lv.5

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「おお!君が武の勇者か!筋力も高いし、物理耐性もなかなか。魔力関連が少し低いが、それでもそしてこのスキル!三つともレベルが五とは、さすがは勇者だ!」

「ほうほう、このステータスとやらはいい感じらしいな。レベルだとかよく分からんし、ステータスについて教えてくれ」


宗太はアルフォードの反応からステータスが高い方であるというのは察したが、この世界の人々のステータスを知らないためにあまり喜べていなかった。


「そうだな。まずこの世界の一般人の数値は、Lv.1で本来すべて10くらいだ。この国の兵士では100ほど。つまり君は普通の兵士にも身体能力のみで十分勝てるということだな。そしてスキルについてだが、これには五つのレベルが存在する。戦闘を生業なりわいとする冒険者ならレベル三が必須だ。でないと簡単に死んでしまうからな。そしてレベルを五まで上げられるのはもはや人外とまで言われるほどの才能を持つか努力をした者だけだ」


それを聞き宗太は自分のステータスがすさまじく高いことに気づいた。身体能力の数値すらとても高いうえに、本来ならなかなか到達できないスキルレベル五に三つもの達しているのだから。そして気づいた。明らかに”武”とは関係のないスキル、「鑑定」があることに。


「なあ、なんで”鑑定”なんてスキルがあるかわかるか?王様」

「ああ、それか。この世界に来る際に金色の魔方陣をくぐっただろう?あれには召喚者にその鑑定スキルを付与する効果があるのだ。さすがにレベル五とは思わなかったが.......」


龍巳は今の説明を聞き、まるでこの世界を知るために与えられたようなスキルだなと思った。

 龍巳がステータスの確認をしながらそんなことを考えていると、アルフォードが美奈に視線を向けた。


「ではミナ殿。君のステータスも見せてはもらえないだろうか?」

「いいですよ。私は”知の勇者”という勇者みたいですね。なんだか鑑定スキルが発動したみたいで、”知の勇者”の効果が分かりました」


それを聞き、自分の手元に現れた美奈のステータスを確認していたアルフォードは目を見開いた。ちなみに美奈のステータスはこうである。


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ミナ・イシキ 17歳 女 Lv.1

称号:知の勇者、異世界人


体力:100

魔力:200

物攻:100

魔攻:200

物耐:150

魔耐:200

筋力:150

敏捷:150

器用:100


<スキル>

鑑定Lv.5、記憶保管Lv.5、思考加速Lv.5

======================


「なっ!?鑑定にステータスの詳細を見る効果なんてなかったはず......。いや、そうか!レベルが五まで上がっているから見えたのか。まさか鑑定にそんな力があったとは......。それでミナ殿、”知の勇者”の効果とはいったい?」


はじめはうろたえていたアルフォードであったが、やはり六〇才を超えているだけあり自分なりに結論を出すとすぐに頭を切り替え美奈に続きをうながした。


「どうやら”知の勇者”という称号は、魔法系のスキルを全て習得でき、それらをレベル五まで上げることのできるポテンシャルを持ち主に与えるみたいです」

「俺も確認したぜ。”武の勇者”ってのは戦闘系のスキルと身体強化系のスキルを全部覚えられるみたいだな。あとは美奈と同じだ」


それらを聞いた貴族たちは一気に騒がしくなった。それもそのはずで、普通なら一つレベル五のスキルがあればいい方なのに、それが元々三つでその上まだまだ増えるというのだ。貴族たちから「なんということだ......」「素晴らしい!」「さすがは勇者だ」などの驚愕と称賛の声が上がる。そしてこれまでそんな貴族たちを抑えていたアルフォードも唖然として美奈たちを見ていた。数秒が経過してから我にかえったアルフォードはまた貴族たちを鎮めて言葉を発した。


「そうか......、それは何よりだ。この世界に呼んでしまった手前、救ってもらえる、もらえない以前に死なないための力は持ってもらいたかったからな」


そう言って安堵の表情を浮かべるアルフォードは、次に期待を込めた眼で龍巳を見た。


「ではタツミ殿、君も......」


そして龍巳も前の二人に倣ってステータスをアルフォードにも見えるようにし、それをはじめて見た時の結果を言った。言って、しまった。


「どうぞ。それと、俺、勇者じゃないみたいです」


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タツミ・ヤサカ 17歳 男 Lv.1

称号:器用貧乏、異世界人、巻き込まれし者


体力:100

魔力:100

物耐:100

魔耐:100

筋力:100

敏捷:100

器用:300


<スキル>

鑑定Lv.5

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