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「……えっと、アンタ何でオレに声を掛けたの?見た目の印象だけど、アンタは慈善事業を謳ってる
我ながら情けない事だけど。
路肩の薄汚い少年が邪魔なら、ああも根気良く付き合う必要だってないんだし。
ちょっと自惚れっぽいけど、青年はオレと“話そうと”している様に見えた。でも理由が分からない。
「オレは身勝手な事情で人を放り投げる連中を好いちゃいねぇんだ。かと言ってお前の指摘通り、慈善事業を謳っている教会でもねぇさ。まあ、其の点については分かり易いだろうがな。ただ身勝手に捨てられたガキ達の中から見込み強だと思ったヤツや惹かれたヤツに声を掛けて、選択肢を与えている。お前にもその選択肢を与えにきた、ってトコだな」
言い終えた青年は大仰に、オレの方へ手を差し伸べる。
自然目線は其の手に向いてしまう。
さっきの言葉で少し判断が怪しくなっているけど、少なくとも外見から推定出来る青年の年齢より小さい。華奢にも見える。
そして、とても綺麗だ。
汚れなんて知らないとでも言う様な綺麗な手。
目線を落とし、自分の手を見下ろす。
お世辞にも綺麗とは言えない、汚れた手だ。ゴミを漁っているし、雨風に晒されているし、此処最近は雪も降っているから、あかぎれだって目立っている。
慈善事業を掲げた教会のお偉いさんだって、オレの手を触れるのには戸惑って。「救ってやる」「教会での保護を」とか言いつつ、オレに手を差し出しはしなかったのに。
青年は綺麗な手を躊躇無く、オレの方へと差し出した。
今迄手なんて差し伸べられた事がなかったのもある。
でも、その“初めて差し出された手”が本当に綺麗だったから。
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